半導体の「性能」を見極める指標
今やほとんどの電子機器に内蔵されている半導体。CoreシリーズやSnapdragonシリーズなど、PCやスマホ関連のCPU性能なら何となく分かるが、半導体そのものの性能を見極められる人はそこまで多くないのでは、と思う。そこで、半導体そのものの性能を見極める指標を書いておく。
結論
「ここだけ見ればわかる」はない。
半導体は、搭載される用途も違えば対応している処理も違う。なんなら処理を目的としない、いわゆる「パワー半導体」なんかもある。
今回は処理を目的としている半導体に焦点を当てるが、用途と指標を総合判断して欲しい。
値が小さくなれば能力が上がるもの
製造プロセスノード(単位:m,nm)
ラピダスとかが「2nm半導体を作るぞ!」と頑張っているこの値。プロセスノードとかプロセスルールとか言われることもある。そもそも半導体はトランジスタと呼ばれる部品を密集させたものなのだが、このトランジスタの「ゲート」と呼ばれる中心部分の大きさを表したものがこの値。(最近はそうでもないが)トランジスタが小さくなればなるほど多く詰め込めるので、これが小さければ処理が速くなるし、電気が流れる距離が短くなるので消費電力も少なくなる。ちなみに、0.1nmを下回ることは不可能。分子レベルの大きさだから。だから最近はプロセスノードを小さくという流れでは無くなってきていたりする。
ラピダスが頑張っている2nmはDNAの2重らせんの大きさとほぼ同じらしい。
消費電力と発熱量(単位:W)
電気を食わなければ使える時間が長くなるし、電源の小型化にもつながる。発熱はいわば損失数で、熱を出すということは、その分処理に回せず逃げた電気が多いことになる。冷却のために処理速度を落とすこともあるので、発熱は少ない方が能力が高いということになる。
値が大きくなれば能力が上がるもの
トランジスタ数(単位:個,石)
先ほど説明した通り、トランジスタを密集させたのが半導体である。トランジスタのスイッチングによって計算が行われるので、単純にトランジスタが多ければ多いほど一度に計算できる数が多くなるハズ。そのためトランジスタ数が多ければ能力が上がる。ただ配置だったりアーキテクチャによって大きく計算能力が変わるため、単純に数さえ多ければという問題でも無かったりする。他の指標も確認されたし。
クロック周波数(単位:Hz,GHz)
クロック速度ともいわれる。聞いたことがある人も多いのではないだろうか。一秒間に実行できるサイクル数を表す。
例えば、あるクロック時に特定の場所1に対して何かを書き込んでいる最中は、その場所は基本同じクロックのタイミングで読み出しを行えない。
クロックが頻繫に変われば読み出しと書き出しなどのタイミングが即時切り替わるので、1秒でできることが増えるわけだ。1秒間に沢山仕事をしてくれれば能力は上がる。
キャッシュメモリ(単位:B,MB,GB)
トランジスタには記憶能力がないので、とりあえず一時的に記憶したいことはメモリにメモしておく必要がある。PCなどで後付けできるあのメモリは、実はそこまで速くないのでより高速なメモリは半導体に組み込まれている。
これをキャッシュメモリというのだが、高速だから容量はそこまで多くない。次のタスクや一時的に止めているタスクを処理するときにわざわざ遅いメモリを介すると処理速度に大きく影響してしまうので、多ければ多いほど処理が速くなる。
Million Instructions Per Second(単位:MIPS)
直訳すると「1秒当たりの100万命令」。一秒で処理できる命令数のこと。当然一秒で処理できる命令が多ければ多いほど能力が上がる、というかこの指標は半導体そのものの能力を表す単位なので、割と大事。
コア数 (単位:コア,基)
コア数は増えると同時に処理できるタスクが増える。例えば、Coreシリーズなどのいわゆる「複雑な計算をこなす半導体」では、コア数は比較的少ないが、GPUなどの「単純な計算を大量にこなす半導体」では、コア数が何千という単位になる。コア数が多いと能力が落ちてしまうこともある。例えば、Ryzenシリーズの一部では、コア数に対して使用できるキャッシュの容量が少なく、一定のキャッシュ量を超えるといきなり処理速度が落ちることがある。だからCPUに関しては無駄にコア数を増やすより、1コアあたりの計算能力を高める方がよかったりすることもある。
I/Oインターフェース速度(単位:bps,Gbps)
処理するタスクを受け取る速度、処理したタスクを送信する速度のこと。ここが遅いと、処理が速いことが宝の持ち腐れとなってしまう。
当然早い方がいい。
知っとくといいかも
これらの指標は大体公開されている
基本的にこういった指標は家電に入っている半導体であったとしてもネット上で簡単に見つけることができたりする。購入予定のものや家にある機械の能力を調べるのは結構面白い。
能力が高ければいいという話でもない
家電などそこまで高度な処理を必要としないものに、2nmやら3nmやらのバカ高い半導体を入れる必要は正直ない。
用途が違うので指標にしにくい部分もある。あくまでも処理能力と用途のバランスを考えて総合的に判断して欲しい。
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