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【未解決事件ファイル】八王子スーパー強盗殺人事件

はじめに


未解決事件……主に刑事事件において、警察や捜査機関が捜査を行ったが、犯人が特定されずに解決に至っていない事件のことを言う。
犯人の身元・行方が判明していない、証拠が不十分で起訴ができない場合などが含まれる。

日本ではかつて殺人などの重大犯罪における公訴時効が存在し、死刑に当たる罪においては25年(2004年以前は15年)という期間が設けられていたが、2010年4月27日に改正刑事訴訟法が公布・施行されたことにより、時効が撤廃され、継続して捜査が行われている。

今回は、1995年(平成7年)に発生した「八王子スーパー強盗殺人事件」について解説していく。


八王子スーパー強盗殺人事件とは

事件の概要

発生したのは、1995年(平成7年)7月30日。時刻は21時15分頃と推定されている。東京都八王子市大和田町のスーパーマーケット「ナンペイ大和田店」で、女性従業員3名が何者かに銃撃されて殺害された
警視庁による正式な事件名は「大和田町スーパー事務所内けん銃使用殺人事件」。通称は「ナンペイ事件」、「八王子スーパーナンペイ事件」と呼ばれている。

【被害者】 Yさん(アルバイト従業員、高校生、当時17歳)
      Mさん(アルバイト従業員、高校生、当時16歳)
      Iさん(パート従業員、当時47歳)

Iさんは、銃の持ち手の部分で右顔面を殴られた後、金庫の隣に置かれた冷蔵庫脇の隙間に突き飛ばされたと思われる。女子高生2人の殺害前に額と頭頂部に銃口を押し付けられて、それぞれの箇所に1発ずつ合計2発銃撃された
YさんとMさんは、口を粘着テープでふさがれ、お互いの右手と左手を粘着テープで縛られて背中合わせにされており、至近距離から後頭部に1発ずつ銃撃された
3人は即死の状態だったという。

スーパーの事務所内には金庫が置かれていたが、犯人は銃撃後、金庫を開けようとせず、また事務所内の現金や貴金属、被害者の所持品を奪わずに逃走している。事務所内を物色した形跡もないことから、事件名に「強盗」とついているものの、金銭目的ではない可能性もある。

事件発生当時の日本では、閉店後のスーパーマーケットを標的にした、銃器による犯行が行われた強盗殺人事件は前例がなかった。
犯行に使用された拳銃は、フィリピン製のスカイヤーズビンガム38口径とされている。

事件発生から15年経過した2010年7月に公訴時効が成立する予定だったが、先述の改正刑事訴訟法が公布・施行されたことにより、時効が撤廃され、現在でも捜査が続いている。

なお、「ナンペイ」は事件後に店名を変えたが、1998年に閉店し、現在は駐車場になっている。

事務所内の様子

  • 被害者発見時、事務所の鍵は開いていた

  • IさんとYさんは制服から着替えて私服になっており、帰る直前に犯人に押し入られたと思われる。(Mさんはこの日非番だったが、シフトを確認するためにスーパーに訪れていた)

  • Iさんは事務所の奥にある金庫に頭をもたれるようにして倒れていて、足は事務所の入り口側に向いていた。

  • Iさんは頭部を2発(左額と後頭部)を撃たれており、縛られていなかった

  • YさんとMさんは事務所の中央、金庫の前で倒れていて、頭を入り口の方に向けていた。

  • YさんとMさんは、それぞれ口を粘着テープでふさがれ、頭を1発ずつ撃たれていた。片手を粘着テープで一緒に巻かれていて背中合わせにされていた。その手を巻いていたテープはよじれていた

  • 事務所内を物色した形跡はなかった。

八王子警察署が当時の「ナンペイ」とその周辺を3Dで再現した動画を公開している。


防犯・セキュリティに問題

「スーパーナンペイ大和田店」は、事件発生前から何度か空き巣に入られていたという。というのも、営業中、事務所に鍵がかけられていないことが多く、日中に限らず夜間も同様だった。
当該店舗が不用心でセキュリティが甘いと近所でも有名だった。

売上金の移送にも問題がある。現金の移送は集金袋などに入れ、建物内から事務所に移動して金庫に収めるという方法がほとんどである。

当該店舗の事務所は2階にある。その事務所内に金庫があり、売上金はそこに収められる。しかし、その現金の移送がとんでもない方法だった。

従業員がレジの引き出しごと抜き取り、スーパーの屋外にいったん出て外通路を通り、駐車場に面した外階段を昇って事務所に入る。そして、売上金を金庫に保管するという方法。

つまり、現金むき出しのまま客がいるであろう場所を通るし、隠れられそうなところがある場所を通るし、鍵が閉まっていない、浸入や潜伏されている可能性が高い事務所に行く。

スーパーの構造上、屋内から2階の事務所に直接入ることができないためであるが、現金をむき出しのまま運ぶのは危険である。

それだけでなく、夜間の勤務を女性従業員のみに任せていたことも多かった。事件当日も女性従業員しかいなかった。

犯人がこれらのことを知っていた可能性は大いにある

また、当時は多摩地域を中心に夜間のスーパーの事務所を狙った短銃強盗事件が多発していた。

当該事件と犯行手口が似ている
ということもあり、同じ犯人、もしくは犯行グループが関与しているという見方があり、強盗説がささやかれている。


事件発覚時の様子

Iさんの知人男性

「ナンペイ」の閉店後、YさんとMさんは一緒に盆踊りに行く予定だった。Iさんは知人男性と小料理屋に行く約束をしていて、閉店後にこの知人男性に迎えに来てもらうように連絡している。

「ナンペイ」の閉店時刻は21時。Iさんが閉店後の作業や着替えを終え、知人男性に連絡したのは21時15分頃だったという。

小料理屋はそれほど離れていない所にあって、連絡を貰った後、知人男性は車で5分ほどで「ナンペイ」まで行っている。そのとき、事務所は電気がついており、しばらく待っていたそうだ。

しかし、いつまでたってもIさんが出てこなかったので、知人男性は「着替えているか、あるいはもう小料理屋に行ってるかもしれない(行き違いになった)」と思い、再び小料理屋に戻り店内を確認したが、Iさんの姿がなかった。

事務所は更衣室としても使われていて、女性従業員が着替えているかもしれないと思った知人男性は、小料理屋の女将に一緒に来てもらうように頼んだ。

小料理屋の女将と「ナンペイ」へ

知人男性の車が駐車場に着くと、女将が事務所に行った。入り口の鍵は開いており、女将はそのまま事務所に入った

しかし、電気はついているものの人の気配はなく、誰もいないと判断した女将は、再び知人男性の車に戻った。

電気がつけっぱなしで、Iさんがどこにもいないことを不審に思った知人男性は女将と一緒に事務所に入った。そこで、血を流して倒れている3人を発見した

なぜ、女将が3人の遺体を視認できなかったかと言うと、女将が小柄で、事務所の入り口近くに設置されていたカウンター越しだったからである。


犯人は?

現時点で特定していない

この記事を書いている時点(2024年10月)で、事件発生から30年近く経っているが、いまだに犯人は特定されていない。しかし、事件当日に不審な人物や車が多数目撃されている

不審者・不審車両の情報

  • 店内を覗き込むように見ていた50代くらいの男

  • 何も買わずに売り場をうろついていた40代~50代の男

  • スーパーの前の道路を徐行し、通り過ぎるときに店内を覗き込むように見ていた白い乗用車を運転していた男

  • 閉店後の外通路にいて、車のライトが当たると顔を背けて足早に立ち去った20代くらいの男

事件当日は近隣で盆踊り大会が開催されていて、YさんとMさんはYさんのバイトが終わってから一緒に行く予定だった。

盆踊りは21時過ぎに終わっている。盆踊りに参加していた人がどれくらいの人数かは分からないが、もしかしたら犯人を目撃している可能性はある。

犯人像

事務所内を捜査したところ、犯人のものと思しき足跡が約10か所採取されており、この事から実行犯は1人だったと断定されている。

靴のサイズは26cmで、足跡からは細かい鉄粉と粘土、そしてコケが採取された。この鉄粉は溶接作業の際に飛散したものと思われ、実行犯が溶接作業従事者、もしくは鉄鋼所に出入りしていた可能性がある。

靴底は広島県のとあるゴムメーカーで製造されたもので、運動靴など約30種類で使用されていた。事件があった多摩地域周辺でも販売されていた物だった。

被害者の3人は至近距離から発砲され、確実に脳幹を撃ち抜かれて即死している。このことから、犯人は銃の扱いに詳しく、撃ちなれている人物と推測される

また、何のためらいもなく人間の頭部を撃ち、急所を撃ち抜いて殺害している。これは、一般人には難しいとされ、闇の社会に存在しているであろうヒットマン(殺し屋)や、殺害に手慣れた人物であると推測されている。

また、使用された銃であるフィリピン製スカイヤーズビンガムは、アメリカの有名な銃器製造会社、コルト社の銃の模倣品であり、性能が低く、非常に粗悪品で命中率が低いという。この事からも、銃の扱いや知識に長けている人物だと思われる

犯行時、犯人は手袋を着用していたと推測されている。これは、事務所内の机に手袋の繊維などが残っていたためである。

しかし、YさんとMさんの手を粘着テープで縛った時は手袋を脱いでいたようで、粘着テープから被害者やスーパー関係者のものとは異なる指紋の一部が検出された

さらに、DNAも採取されており、これも犯人のものと推測されている。

閉店間際に買い物をしたカップルの存在

「ナンペイ」の閉店時間は21時だったが、閉店間際に若い男女が買い物に訪れている。焼きそばや青果などを購入して店を後にしたのだが、この男女が当日最後の客と思われ、犯人を目撃した可能性があることから、警察はこの男女の素性を捜査している。

事務所内の灰皿に残ったタバコ

事務所内に灰皿があり、その中にタバコの吸い殻が11本見つかっている。銘柄は「マイルドセブンライト」。従業員やスーパー関係者で、そのタバコの銘柄を吸っている人物がおらず、調べたところ女性が吸ったものと判明している。このタバコを吸った女性が誰なのか捜査している。


犯人の目的

ただの強盗だったのか……

現金剝き出しのまま、売上金を移送しており、しかも営業中は事務所の鍵が開けっ放し。事件当時は銃器を使った強盗事件が多発していたということもあり、犯人、もしくは犯行グループが強盗目的で襲った可能性は高い。

しかし、金庫の鍵は開けられておらず、事務所内の現金や貴金属類も被害者の現金も持ち去られていなかった。何らかの事情で犯人は3人を殺害した後何も取らずに逃走したと推測されている。

事務所内で発砲されたのは5発。4発は3人の被害者に向けてだが、残りの1発は金庫だった

強盗目的で事務所に押し入り、計画通りに金庫を開けることが出来ず、口封じのために3人を殺害したのか。ただ、この事件は強盗という線が濃厚なのだが、怨恨説というものも浮上している。

主にIさんのことで、関係者が証言したらしい。

飲食店に男性と入店した際、その男性に厳しい口調で罵倒していたという。さらに、Iさんに貢いでいた男性が過去にいて、その男性の金回りが悪くなったことから、縁を切ったという話しもある。こういったことから、怨恨説がささやかれている。

金庫に鍵が刺さっており、開けようとしていた、もしくは開けさせられていた。金庫に弾痕がある事からも金庫に執着していたかもしれない。やはり、強盗目的で侵入したが、計画通りに行かずに何も取らずに逃走したと推測する。


現在も犯人が……

事件から約30年経過しているが、犯人は今もどこかにいるかもしれない。それは私たちの生活圏内かもしれないし、海外に逃亡している可能性もある。

長い年月逃亡生活をしていた犯罪者は、仲間に匿われていたり、情報を掴めていない人が犯罪者と分からず、一緒に生活していたというケースもある。

ある日突然、親族を殺害されてしまった遺族は怒りと悲しみに暮れ、いまだにのうのうと生活しているであろう犯人を許しはしないだろう。

当該事件について、何か情報がある方がいれば、八王子警察署へ至急連絡していただきたい。下記リンクから情報募集の特設ページに飛ぶことができるので、電話やメールで捜査の協力をしていただきたい。


《参考サイト》
https://mainichi.jp/articles/20220722/osg/00m/040/001000d
毎日新聞

https://ja.wikipedia.org/wiki/八王子スーパー強盗殺人事件
ウィキペディア

https://www.keishicho.metro.tokyo.lg.jp/jiken_jiko/ichiran/ichiran_10/hachioji.html
警視庁

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