ドラゴンメイドはドラゴンをやめるか

 《ドラゴンメイド・ラティス》の衝撃たるや。まず誰だか知らない。長らく《ドラゴンメイド・チェイム》のドラゴン態が待たれ、いよいよ、遂に! という時の新人である。晴れてチェイムのドラゴン態もお披露目されたのだが、ドラゴン態を待ち望む日々はまだ続く。

 このラティス、一見すると異常に強く、よくよく読んで誤解を解くと大した事ない気がしてくる。しかしそれは添加的散漫。しっかり強いらしい。

これまでのドラゴンメイド

 もはや言うまでもないが、さらっと。

 ドラゴンメイドは人間態とドラゴン態の変身を繰り返してアドを稼ぐ、長期戦向けのテーマだ。変身効果によって下級ドラゴンメイドの効果を毎ターン使いまわしてリソースを稼ぐのが基本戦略だ。このデッキのエンジンを担うのが《ドラゴンメイド・シュトラール》。万能な無効破壊を持ち、更に自分・相手のスタンバイフェイズが来るたびドラゴンメイドを蘇生できる。

 ではドラゴンメイドの1枚初動でどういう展開ができるかというと、《ヴァレルエンド・ドラゴン》《ヴァレルロード・S・ドラゴン》が立つ。ドラゴン族リンク2=ドラゴンリンクを出力できるが、シュトラールは立たない。基本戦略が成り立ってないのである。

これからのドラゴンメイド

 もはや言うまでもないが、さらっと。

 従来の《ドラゴンメイド・チェイム》《ドラゴンメイド・パルラ》に加えて《ドラゴンメイド・ティルル》が1枚初動になった。更に、1枚初動の出力がリンク2+《ドラゴンメイド・シュトラール》に増加した。

 《ドラゴンメイドのお召し替え》は不要になった。ひいては上級ドラゴンの採用が最小限で済むようになり、構築の自由度が大幅に上昇した。

 召喚した下級メイドへの誘発1枚で沈むのは相変わらず。

《ドラゴンメイド・ラティス》

 「フィールドと墓地から各1枚」「属性が同じ」「レベルが異なる」ドラゴンメイドを除外して特殊召喚できる新規ドラゴンメイド融合体。

 筆者はにわかデュエリストらしく《ファントム・オブ・ユベル》を想起したが、あれとは召喚条件が異なり、フィールド・墓地両方からきっかり1枚ずつ除外する必要がある。また、属性を揃える必要がある都合、ティルルはフランメ、パルラはルフトとの組み合わせに限られる。優秀な蘇生効果を引っ提げてきた《ドラゴンメイド・シュテルン》に頼り切りではいけないということだ。

 0から1を生むユベルやヴィシャスと異なり、ラティスは1から3を生む。特殊召喚時に下級ドラゴンメイドをリクルートでき、要するにリンク値が2増える。

 そして変身効果。スタンバイ毎にフィールドか除外からデッキに戻して融合。テーマ内で除外に放り込む手段はラティスだけ、ちょうど下級+上級の一揃いになっているから、要するにシュトラールが出る。

 なんと普通に蘇生できる。チェイム・パルラで触れる《ドラゴンメイドのお片付け》《ドラゴンメイドのお心づくし》で蘇生できる。お片付けなら蘇生を相手ターンにすることでリクルートのおかわりまでできる。レベル8だからパルラ・ティルルの変身効果にも対応。バケモンバケモン。

 当然シュトラールでの蘇生にも対応している。シュトラールの素材にもなれる。リンク2を出す代わりにシュトラール先出しで安全確認できる択があって損することはない。

 1枚初動でシュトラールが立つだけでも感動ものだが、リンク2と両立するのだから革命だ。召喚した下級メイドへの誘発が重いのは今まで通り。色の合う上級メイドのサーチが貫通手段になる。脆さは変わらず、出力が単純増という具合。

ライク・ザ・スネークアイ

 盤面のぱっと見の印象はおなじみ純スネークアイに近しい。そこそこの妨害を用意しつつ、エクセルポプルスがリソースを稼いで物量で押す、あの横綱相撲みたいな感じ。筆者の一番好きなアーキタイプだ。

 罪宝との繋がりがあるスネークアイと異なり、ドラゴンメイドには初動と貫通札を兼ねるカードに乏しい。エクセルを6枚積めるかわりに原罪宝のない純スネークアイという表現が一番近いだろう。黄金櫃は2/3篝火。

 スネークアイは初動こそ増やせるが規制のせいでリソース量を失ったことを考えると、初動の質が悪くともリソースは潤沢なドラゴンメイドは、スネークアイのちょうど真逆のニッチを埋めうるデッキといえる。あちらが魔改造で口を糊するように、ドラゴンメイドもギミックを満載する方向で考えるのがいいかもしれない。

 後手捲りは知らない。デドハラでしっかり沈みそう。

活路は出張にあり

 現代遊戯王では召喚権は数あるターン1の権利の一つと数えるべきだ。他にデモンスミス権やガボンガ権というものがある。

 重ね引きしたくない初動を「きっかり1枚引く」確率は6枚を超えて早くも飽和する。「少なくとも1枚引く」ために必要な枚数との差は歴然としている。これに抗うには、単に初動を増やすだけでなく、初動・兼・貫通札を増やさなくてはならない。スネークアイ、ユベル、ライゼオル等々12期の傑物たちは全身初動兼貫通札だったから強かったのだ。

 あれらと比べれば、たしかにドラゴンメイドの構造は脆い。初動と貫通札がしっかり分業していて、チェイムやパルラは初動になるだけで、貫通札にはなりえない。たとえば白き森のリゼットとシルヴィが互いに初動と貫通札を兼ねているのと見比べると、時代性を感じると言わざるを得ないだろう。

 逆に言えば、同じ権利を取り合わないテーマ外のギミックを満載すればそれなりに戦える。出しやすいドラゴンは常に新戦力になったが、お召し替えが不要になってドラゴンの軛から外れたドラゴンメイドは真に自由だ。

 例えばホルス。ジアンデットをラドリーと言い張る異常者になれる。例えばデモンスミス。リンク2から伸ばせる新定番だ。例えばベイゴマックス、例えば緊急テレポート。5シンクロで神子イヴといったり、6のルシエラ経由で8シンクロ+罪宝サーチといったり。おっと、リゼットとラティスでもアンヘルが作れるね。下級を青眼に変換してもいい。黄金櫃を共有できるギミック、超雷とか。

 テーマ外のギミックが強いのは今まで通りではない。テーマの出力向上によって相互作用による上振れが見込めるようになった。ティルルの実用化で炎属性や3軸への道が開けたのも大きい。胡乱なデッキの成立に期待がかかる。


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