マチネの終わりに
読み終えて
恋愛小説のようで恋愛小説じゃなかった。
作品の手段は恋愛だけど、主題は人生の複雑さや過去の捉え方、過去と現在が未来を方向づけること。(個人の感覚です)
2人の物語なんだけど、2人の間の物語ではなくて2人それぞれの人生の物語でした。
過去の事実とそれに対する現在の感情。
それを変えることができるということ
過去と現実が縛りつける未来の選択肢。
それは抗うことが難しいということ。
そんなことを強く感じさせられた。
自分の話
波長や価値観が合う異性の存在(運命の人って括りにできるような人)に、人生で二度出会ったことがある。
1人はいまの彼女で、初対面の合う!って感覚に加えて、数年かけて築かれてきたもの(自己開示や相互理解を経て)が強固にしてくれて今がある。
もう1人は、大学生の頃の出会い。付き合うことはなかったけれど、初めから”合う人”で、互いの身の上話から、時事ニュース、倫理観の問題など、あらゆる角度で際限なく会話や議論ができた。「やっぱそうだよね」「そういう物事の見方もあるのか、なるほど」と価値観や考え方に多大な影響を与えてくれた。誰かに存在を語ることはないけど人生において影響度が高い人。
いまは完全に疎遠でもう会うことはないけど、会うことがあったら作中の2人のような心境なんだろうなぁと。(背景が違うから重みは全く違うけど、その一端は想像ができたってことを言いたい。)
改めて思ったこと
たぶん運命の人って思えるような相手は世の中にたくさんいて、でもそれは出会うことや偽りなく自己開示すること、相手を理解し尊重すること、その段階を経て初めて気づけることだから、なかなか見つけることが難しいんだと思う。
作中でも2人は友人として関係を再開させることを考えるけど、それだけ気の合う存在って貴重で結ばれる関係でなくとも大切にしたいと思える人なんだと思う。人生のなかで性別問わずそういう存在の人をあと2,3人見つけて長い関係性を築いていけたら幸せだろうなぁ。
((利害関係なく分かり合える人って考えたら第三者の方がいいけど、そこまで人間として深く理解し合って繋がってしまうと第三者では居られないかな…?))
((結局は作中の薪野のような自制心によって制御されるべきということになるのかな))
3ヶ月くらいかけて読みました。
この話を映画で2時間で吸収するのは辛い気がします。どうなんでしょうか。