ほんとうにそこは、あきらめるタイミングなのか
講習をやっていてもどかしく思うときがある。
パドリングの途中であきらめてしまっている。
できるのに、やめてしまう。もうワンパドル、入れるだけなんだけれど。
イチからはやり直せない。川下りはつづいていく
完璧を目指す人に多い、ちょっとでもボートがイメージと違う動きをすると、パドリングをやめてしまう。
「もう一度、はじめからやり直そう」
という意識かもしれない。
でも川下りは、途中で一からはじめられない。その場その場で対処しないとと、コントロールを失った状態がそのまま続いていくだけだ。できるだけ早くリカバリーできたほうが、安全だ。
実は、ボートが予想と違った動きをしたときにこそ、上達のチャンスがある。いかに修正できるか。修正していくうちに、方向修正をするパドリング技術が上達する。パドルをさすタイミングも、だんだんとよくなってくる。ダメだと思ったときにこそ、粘り強く直せるといい。
目線が近くなっていないか
コントロールを失ったときは、目線が近くなってることが多い。これは初心者でも、中級者でも一緒。目標を見失ったときに、行き先があやしくなる。
回されたりしたときに、バウを目で追ってしまう。
視界が近くても、自分の位置や状況が判断しにくい。どう動いたら目的の場所へ行けるのかが俯瞰して考えにくいから、直感的に動きにくい。
顔を上げて、たとえバウがどっちに向こうとも「わたしはこっちに行きたい」と、意志をもって見つづけることがとても重要だ。
見つづけていくうちに、修正のパドルをさすタイミングがわかるようになってくる。「曲がりそうかな・・?」がなんとなく予測できるようになってくる。
曲がる30°
パドリング技術が上がっていくと、直感的に向きを直せるようになってくる。自分の思ったタイミングでボートを曲げられるようになると、川下りに余裕が出てくる。というのも、ハンドルの効かない乗り物が怖いのと一緒で、曲がりたいのに曲がれないときが、いちばん慌てるわけなので。
どこを漕ぐとボートを曲がるのかを、知っておくといい。曲げやすいのは、ボートの近く。スイープストロークでは、ボートの近くの30°を使う意識をもちたい。
ボートの近くの30°とは、ボートに対してのブレードの位置の関係。バウを0°、スターンを180°だとする。
スイープストロークは、0~30°と、150~180°の部分が、ボートを曲げやすい。急流でボートをコントロールするには、前半の30°で向きをコントロールできるのが、理想。
中級者は、180°に近い30°をとっさに使えるようになると、川下りに余裕が出る。
どんどん曲げることと、粘り強く直すこと
そもそもリバーカヤックは、左右に曲がったボートを、行きたい方向へともどす。この動作の繰り返しだ。一度操作を失敗しても、あとからとりかえせばいい。
自ら作った「曲がらない」という謎ルールを取り払い、はみ出すくらいに大きく左右に振りながら進んでみると、いい。
曲がりを恐れず、曲がりをとりもどしていくうちに、振り幅は小さく狙い通りに動かせるようになっていく。
ボートに勢いがついてくると、方向修正もしづらくなる。これは慣性が強く働くからだ。直すには、曲げる目的をもったワンパドルを入れること。
慌てないのも大事。「早く直さなくちゃ」と慌てるので、水をつかめていなかったり、曲がる30°を漕がずに短く小さく動いてしまいやすい。ちょっと遅れたタイミングで曲がりはじめるので、ゆったり大きく動作してみるといい。
何度か向きの修正をしていくうちに、だんだんとコツがつかめてくる。目線を定めて、あきらめずに何度か曲がりを直してみよう。だんだんとチカラ加減もわかって、微調整できるようになっていく。
まっすぐに進むのではなく、曲がりを直すことを目的に
体幹で曲がる感覚がわかると、流れているところでも翻弄されにくくなる。まずは漕ぎ上りなどの曲がりやすい状況の中で、ボートの向きを直す練習を徹底的にやってみるといい。
カヌースクールを東京多摩川上流の白丸湖と御岳渓谷でやっています。
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