コテンラジオ まとめ要約【28-1~4 COTEN RADIO 資本主義編】

https://www.youtube.com/watch?v=lCSXlmZpORI&list=PLIjh6KwR4APlu4vp1fQGa7Z0Kt-AOQy-D

【このシリーズのをざっくり表現すると】

株式会社COTENの、ポスト資本主義的な運営に対する熱い決意表明となった記念碑的なシリーズです。このシリーズを通して、資本主義が現在も社会OSとして、私達の暗黙的な価値観や思想として駆動していることに気付かされ、目からウロコ的に世界観が変わります。資本主義の成立過程と、その構造的な課題、そしてポスト資本主義についての諸意見を4回で学べる情報密度の高いシリーズです。

【このエピソードから学べること】

・資本主義について、「近代思想史」と「経済学」という2つの系統から手早く網羅的に学ぶことができます。
・資本主義の「6つの特徴」と、その特徴から発生する課題について理解することができます。
・資本主義が近代西ヨーロッパの社会状況(アメリカ大陸からの収奪や産業革命等)の中で、近代思想(ダーウィンの進化論、物理化学、自由主義等)と結合して形成された過程を知ることができます。
・資本主義が単なる制度やシステムではなく、「社会OS(私達の思想、価値観、政治制度、習慣)」として駆動しており、それは18世紀の近代から変わっていない、ということをメタ認知することができます。
・ポスト資本主義として、どのような思想が出てきているのかを幅広く知ることができます。
・株式会社COTENが、「法人CREW(以下URL参照)」の募集を開始するにあたり、思想的な背景として、資本主義とその課題についてどう考え、それに対してどのように行動していくのかという決意表明が語られます<https://coten.co.jp/blog/news/1238/>

【各エピソードの概略】

28-1(#283) カネを持ってりゃ偉いのか!? 人類史を変えた「資本主義」の正体
冒頭、資本主義をシリーズ化した主旨が説明されます。そして、資本主義には、6つの特徴で整理できること、それらの特徴が現代の課題にもつながっていることが説明されます。後半では、社会思想史として、18世紀ヨーロッパにおいて近代思想が形成され、資本主義につながっていく過程が説明されます。
28-2(#284)資本主義の経済学史 〜現代人が知っておくべきレジェンド学者たちの持論!
主要な経済学派として、古典派経済学、ケインズ経済学、マルクス経済学、そして、それ以外の所説(ミルトン・フリードマン、マックス・ウェーバー、シュンペーターなど)を通じて、資本主義が形成されてきた過程が説明されます。重商主義で統制的な輸出が行われるヨーロッパでアダム・スミスが自由市場の概念を提唱し、その後、市場の自動調整機能が完全ではないことに対して、どの程度、政府が介入するかが争点となっていることが紹介されます。
28-3 (#285)ポスト資本主義 ー現代人が彩る新たな社会のグラデーションー
資本主義の課題に対して、ポスト資本主義として提唱されている様々な意見が紹介されます。以下の2点は共通点として挙げられています。資本が資本を増やすという特徴は、誰の利得にもならないマネーゲームを招くとして指摘されていること。そして、環境問題に対して現在の資本主義では対応できないと指摘されていること。
28-4(#286)株式会社COTENの大実験 〜ポスト資本主義と皆でつくる新たな世界〜
資本主義についての課題意識として、「誰の役にも立たないマネーゲームのような活動が加速されてしまう」、「お金による幸福度は所得が増加するに従い低減するが、どこまでもお金という指標を追いかけ続けてしまう動機付けがされる」、「市場が評価すること以外のことにリソースを投下する場合の説明コストが高い」といった、深井さんの課題意識が表明されます。それに対して、法人COTEN CREWでは金融商品(証券)ではない形で資金を提供してもらうものだと明言します。そして、世界を前に進めるということに対して金銭的リソースを投入することの社会実験に取り組むことが表明されます。

【個人的な所感】

資本主義が近代思想と密結合した社会OS(通念、習慣、文化、価値観、制度)であること。そして、日常において私達が「当たり前のこと」として認識していることが、実は「近代」に形成され、定着した世界観であること。更に、その世界観は18世紀のヨーロッパにおける歴史的なイベントや、各種思想が複雑に結合して醸成されたものであること。これらを、客観的な視点から認知することが衝撃的です。「歴史からメタ認知の機会を得る」という意味では、現在進行形で駆動している社会OSに対して、近代という歴史が直接的に影響した因果関係である、という意味で、COTEN RADIOのシリーズの中でもインパクトのある学びになりました。「今、私が、当たり前として捉えていること」に対するメタ認知であるため、自分自身の一般通念に対して捉え直す非常に良い機会となりました。

【エピソード詳細メモ】

資本主義の6つの特徴と課題
1.(特徴)市場経済を前提としている。市場で自由に取引や競争が行われることにより創意工夫や生産性向上が起こり物質的に豊かになった。→(課題)インターネットによって市場経済が変容している。プロセスエコノミーやシェアリングエコノミーによって市場経済の前提が変わってきている。
2.(課題)市場にとって良いこと(市場から評価されること)にしかインセンティブが無い。(例. 株価が企業の金銭的な利益の見込みによって決まる)→(課題)人類の公益と金銭的な利潤の追求がコンフリクトを起こす。環境問題に対して社会的なリソースが投入されにくい。
3.(特徴)持続的成長が前提となっており、それは生産人口に依存している。→(課題)少子化の問題などが発生している。しかし、持続的成長が前提でなければ、人口が増えないことは必ずしも問題とはならない。
4.(特徴)期待値を定量化することができるが、その指標がお金しか定理量的な指標がない。→(課題)世界にとって良いことに対して定量的に評価する指標がなく、そこに動機付けがされにくい。際限なくお金を増やすことに動機付けがされてしまう。
5.(特徴)資本が資本を生む構造になっている。(お金がお金を増やす構造になっている)→(課題)社会の格差が拡大してしまう。誰の役にも立たないようなマネーゲームに社会のリソースが投入されてしまう。
6.(特徴)資本主義はシステム(制度)ではなく社会OSであり近代思想(文化、イデオロギー、習慣、民主主義)と分けることができない。。→(課題)資本主義のどこか一ヵ所だけを変えるということはできず、私達の文化や慣習、政治制度等の変化を伴うことになる。

近代思想と資本主義の発展について
近代の特徴。伝統的社会と違い、時間と空間が分離した(時間の外在化)。時計が発明され、共通の時間の中で皆が計画的に生活するということが始まった。
脱埋込。伝統的社会では、個人が社会に埋め込まれている。社会が個人を規定する。そこから個人が個人を規定する。
再帰性(reflexibility)。近代では、合理的な知見を持って、自分達を意識的に変化させるようになった。国民(近代)国家は、監視(戸籍等のデータを管理)する。軍事力を管理している。工業化がこれを可能にしている。資本主義がこれを可能にしている。
これは、社会自身にリスクをもたらしている。環境のコントロールや、人為的暴力の肥大化(核兵器など)。人格に自分で意味を持たせなければならない。
近代に西ヨーロッパで生まれた考え方や仕組みが世界中に広まり伝統的社会を押し潰してきた。
近代的な概念はヴィクトリア朝期に形成された。産業革命によって商業をしている中産階級(ビジネスパーソン)が社会の主体となり、リベラリズム(自由主義)が生まれた。これは、アメリカ大陸からの富の収奪によって生まれた。砂糖のプランテーションから時間管理が発生し、そこから工場労働管理が可能になった。また、帆船の運行により、未来の可能性を予測管理できるという感覚が培われた。そこで産業革命が発生した。そして、民主主義を拡大し、参政権を確保して政治に参画した。鉄道の登場により、あまりにも早いことによって時間が重要性を持つようになる。時間が外在化し、一つの時間に多様な世界が存在することを認知した。そして、世界中の社会文化を比較することが可能になった。それが新古主義、つまり、社会が右肩上がりになるということが普遍的であるという一般的な概念が普及した。これは、たまたま条件が一致した偶然であるが、それを普遍的なものとして認知した。伝統的社会では、社会は衰退していくというのが一般的な通念。この認知により、西欧社会が他の社会よりも進歩的な社会であるという認知が広まった。先進国と発展途上国という認知のはじまり。発展すれば先進国になれるという認知をしている。ニュートンが万有引力の法則を発見した。それまで、物が落ちるということは別々の事象と認識されていた。そして、同じような共通の普遍的な法則があるのではないかと考え、様々な物理法則が発見された。そして、そこからベンサムによる人類社会にも同様の普遍的な法則があるのではないかという考え方(社会科学)が生まれた。ベンサムは、最大多数の最大幸福を実現するため、利己的な個人を一定度規制し、それ以外を自由にすれば社会はうまく行くと考えた。この考え方が、民主主義や資本主義にも適用された。アダム・スミスが自由市場の概念を確立した。さらにキリスト教・プロテスタントの福音主義と結びつき、多く労働し、多く利潤を上げることが道徳的に良いことであるという概念が定着した。ダーウィンが生物進化論を提唱し、自由市場で競争して勝ち残ることも自然なことであると考えられるようになった。このようにベンサムの考え方を核として、本来個別であった各思想が結合することにより、資本主義を支える強固な思想的な土台となっており、これは現代でも変わっておらず、資本主義の課題に直面している。
ボランニは、多くの伝統的社会で自由市場が形成されていないことを指摘した。そして、自由市場が形成されたのは、それが形成されるための社会基盤が存在していたからだと考えた。そして、自由市場は、その基盤となっている社会自体を破壊していく性質があると指摘した。社会を自己破壊していく作用を悪魔の碾き臼と表して提唱した。自由市場では、全てのものが商品となり、全てのものに値段がつく。そして生活自体を破壊する。労働時間には価値がつくので、利潤追求という観点では24時間売ろうという考え方になる。その結果、人は死んでしまう。ワークライフバランスは、自由市場を制限しようとする試みである。家も売れる、土地も売れる、一人暮らしの方が合理的に労働時間が売れる。現在核家族化が進んでいるのは、労働市場で労働を売るためである。結果として、伝統的コミュニティが破壊され、子育てが大変になったりする。社会的なコミュニティなどの社会的な基盤が破壊され、それが行き詰まると、反発が発生して、ファシズムや統制経済に反動が起こる可能性がある。
現在でも、我々は社会に埋め込まれており、所与のものと考えている価値観に対して認識することは難しい。

経済学の発展について
古典派経済学:市場の自動調整機能を重視し、完全自由市場を主張した。
ケインズ経済学:市場の合理性に疑問を呈し、政府の介入が必要と主張した。
マルクス経済学:資本家による労働者の搾取が限界を迎え、労働者による革命が起こると主張した。

アダム・スミス(古典派経済学)は、重商主義の時代の中で輸出偏重に対する適正化のために需要と供給による市場の自動調整機能の活用を提唱した。

ケインズは、人間の不確実性から、必ずしも市場が完全に機能する訳では無いことを指摘し、政府の介入の必要性を指摘した。これは、大恐慌下で唱えられ1970年代まで続いた。

マルクスは、労働者とイノベーションが価値を創出しているとし、資本家による労働者の搾取によって革命が発生し、資本主義が崩壊するとした。

ミルトン・フリードマンは、1970年代に新自由主義を唱え、政府の過剰介入を指摘し、規制緩和や民営化の推進を主張した。

ポール・サミュエルは、古典派経済学とケインズ経済学の統合を唱え、完全雇用までは政府の介入が必要だが、その後は、市場経済に任せることを提唱した。

ソースタイン・べブレンは、市場経済を駆動しているのは経済的な合理性ではなく、見栄や羨望、虚栄心であり、民主主義下においてもヒエラルキーが存在し、その維持のために消費が行われていると提唱した。

マックス・ウェーバーは、資本主義的な金儲けが道徳的であるという考え方は、プロテスタントの信仰心から来ていると主張した。禁欲的な労働への価値観が資本主義につながっている。つまり、市場は合理性ではなく、道徳心に基づいて駆動しており、合理的ではない。カトリックからプロテスタントへの概念の変化が影響している。

マックス・ウェーバーの定義、資本主義下の経済行為は、リスクと利益と損失を予期することができ、それをコントロールできるということからしか起こらない。また、資本主義下の経済行為は、それまでの私的家庭における経済行為と異なり、企業という仕組みに組み込まれている。企業内の協業が経営者からの命令で行われている。前近代的社会では、生きることと労働することは分離していないこととの対比として述べられている。

シュンペーターは、貸与された資本の出資によりイノベーションを行う。それを私有財産を前提として行われている。これは一般的に信用創造が前提となっている。イノベーションとは経済自体が自分で改善していく創造的破壊である。

ポスト資本主義の各主張
各説に共通する点として金融資本主義(マネーゲーム)が問題である。また、環境問題に対応できないことを課題として挙げている。

原じょうじは、公益資本主義では、株式会社は公器であり、株主だけのものではない。ステークホルダー全ての利益を考慮すべきである。ストックオプションが特にアメリカで悪用されている。実態経済が豊かになるように設計すべきだ。短期的な投資家にペナルティー、長期的な投資を優遇。社中分配により、会社の利益を社員にも分配する。企業価値を、富の分配の公平性、経営持続性、イノベーション、とする。

柳澤氏、面白法人カヤック 鎌倉資本主義
地域経済資本、地域社会資本(コミュニティ)、地域環境資本を資本としてカウントし、バランスをとって成長させる。地域政府、株主、企業が地域にコミットする。

里山資本主義
お金に依存しないサブシステムとしてセーフティネットを構築する。近いところで水食料燃料を調達してコストをさげる。

マイケル・ハート、アントニオ・ネグリ、帝国、資本主義では共有財産が否定されている。公共財を私的財産にすることを強制される。共有財産を民主的に管理さることを許容し、コミュニティで管理する。

ポールメイソン、ポストキャピタリズム
IT産業は、全てのものをゼロ円にする。これが、資本主義と適応しない。利潤の搾り取りがうまくいかない。経済成長はイノベーションが起きた時にしか起こらない。最後のイノベーションが情報技術である。ロールモデルは、学際的な知的エリートになる。様々な知識をネットワークを介して、つなぎ合わせる。知的利潤の配分。GAFAは、これをゼロ円にすることを止めている。

ひろたたかのり 共生主義論
資本主義の基盤は既に崩壊している、価値の先取りはリスクを内在している(確率論的に常に崩壊するが、金融商品は楽観的すぎる。)、現在の課題は資本主義では解決できない。先取りが内包されている資本主義はシステムとして既に病んでいる。共存主義を提唱。総有という所有形態。共有して所有し、転売できない形態。

山口周 ビジネスの未来
物質限界に対して、個々人がヒューマニティーをもってハックしていく。未来のために今を犠牲にすることをやめる。持続可能な社会など存在しない。循環する社会を実現。喜怒哀楽を消費や行動原理に組み込む。なのでベーシックインカムが必要。市場に評価されることを原理とした行動で幸福になれないことが確定している。

株式会社COTENの課題意識
資本主義とは、近代社会に概念として生まれた社会OSである。私たちが、普段、標準と考えている考え方の中で近代に形成されたものが資本主義と言える。経済学的には、政府がどのように介入すべきかという点がIssueの共通認識となっている。
マネーゲームにインセンティブがつくので、誰の役にも立たないことに対する活動が加速されてしまう。お金があっても幸せにはなれない、ただ、お金が足りないと幸せになれない。お金は一定の値までは価値があるが、ある閾値を超えると価値が減損する。しかし、資本主義ではどこまでもお金という指標を追いかけ続けてしまう動機付がされる。また、市場が評価することを私たちが評価してしまう。資本の理論以外で、社会組織を動かすことにコストがかかる。
これまでに起こった社会変革は、限られたコミュニティの間で考え方が変わることで、社会が後追いする形で発生してきた。法人COTNE CREWに対しては、金融商品ではない形で資金を提供してもらう。つまり、金銭的な直接的なリターンが無いという形で資金を提供してもらう。システムや制度を変えて資本主義を変えるのではなく、個人の意識が変わることで世界が変わると思う。金銭的な報酬が無いものは寄付である、という考え方を変えたい。COTEN CREWは、世界を進めるということに自分の金銭的リソースを投入することが良いことだ、という社会実験である。
今後2年程度は、COTEN CREWをこの考え方に振り切る。固定観念から自らを開放するような活動に対して価値を感じる個人・法人に対してサポーターとなることを呼び掛ける。これに対して合理的な説明はできない。説明できてしまえば、それは資本主義だからである。


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