タイムマシーンがあったら
「タイムマシーンがあったら僕は何か変えるのかな」23歳の頃に書いた曲にそんなフレーズが出てくる。
タイムマシーンがあったら、そうだな。僕はきっと過去を変えて変えて変えまくってしまうだろう。未来を見て悪い目を潰して潰して潰しまくるだろう。
今、絶賛ボーカルのピッチ修正中だ。
今の音楽制作ソフトは便利なもので淡白な言い方をしてしまえば下手でもうまくできる。限界はあるのだけれど。
やりすぎると人間味がなくなってしまうけれど、そんなことよりも作品として完璧に近いものが求められるようになった気がする。
ピッチ修正はあまり好きになれない。自分の下手さがより気になってしまうからだ。直せてしまうから諦めがつかなくなる。
「ドレミ」と3つの音があったとする。
不思議なものでレがあっていてもドかミがずれているとレも外れているように聞こえる。リズムも同じでレのタイミングがあっていても前後がずれているとレがずれているように聞こえる。
生きていればいろんな人に会う。いろんなことに遭う。「僕はこうだ」と信じようとしても周りが違う波長だと自分が間違っているように感じてしまう。
何が正しいか、間違っているか、そんなことはわからないけど、後悔せずに生きるなんてことはできないのだろう。
ドをぴったりに修正したら今度はレがずれていることに気がついてしまう。レを直したらミが。ミを直したらファが…
もしもタイムマシーンなんてものがあったら最初は一つだけ直すつもりがあれもこれもそれもどれもになって、ズレが許せなくなってしまう気がする。
人生の後悔は大きい。歌のピッチみたいに「直しすぎず人間らしさを大切にするぞ」なんて簡単に思えないかもしれない。
そうやっているうちに過去や未来ばかりに気を取られて、失敗のない人生になるかもしれないけど今を楽しむ気持ちもきっと無くしてしまうのだろう。
後悔しないことよりも納得できる生き方が大切だと思う。何でもかんでも直せたら、誤魔化せたら、自分の一歩に納得できなくなってしまうのだ。
タイムマシーンはいらない。使ってしまうからいらない。