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本みたいな距離感

「今日はいい歌歌ったぞ!」という日はお客さんから反応がなくて「今日はダメだった〜」という日ほどCDが売れるのはミュージシャンあるあるだ。打ち上げでたまに話題になって盛り上がる。

それは「伝える距離感」が影響しているんじゃないだろうか。

「いい歌歌った!」と思うのは「自分が気持ちよく歌えた」とき。だいたい感情を込めすぎだったり、伝えようとしすぎている場合が多い。

「CDが欲しい」と思うのは曲がその人のものになった時で、感情を込めすぎているときは相手が入る余白を全て自分が埋めてしまっている。

「ほしい」は自分から手を伸ばして、自分が感動するから生まれる気持ちなのだ。


本みたいな距離感でいられるのが一番いいのかなと思う。

本屋にいろんなタイトルが並んでいて、ふと目についたものを手に取る。パラパラとページをめくってみて何となく読みやすいものをじっくり読んでみる。

そこにはひとつの物語や考え方がただそこに置いてある。ただそこに置いてあるから「おや?」と思った部分だけを頭や心に入れることができる。

そういう取捨選択が自由な余白や距離感があるからこそ何かを受け取れるのかもしれない。


歌を歌うときも「面白い」とか「感動ポイント」を用意しつつも、本になったような静かさで気持ちや作品を置いておくのがいいんじゃないかと僕は思う。

きっと歌だけじゃなく話をすることも文章を書くことも、あえて少し離れて余白を残すことが伝えるために大切なのかもしれないな。


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後藤大
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