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中国NVC国際集中トレーニング(IIT)

先日、中国の温州で開催された10日間のNVC(非暴力コミュニケーション)の国際集中トレーニング(IIT)にNVCトレーナーとして呼んでいただき、そこで10クラスほど担当させていただきました。

IIT国際集中トレーニング(International Intensive Training)とは、NVC(非暴力コミュニケーション)の深い学びと実践を提供する10日間の集中トレーニングです。世界各国で開催されており、多国籍の参加者は、共に共感や自己表現のスキルを磨き、個人やコミュニティでのつながりを深めるための方法を学びます。このトレーニングは、国や文化を超えた対話を促進し、平和的なコミュニケーションを実践する場でもあります。今回のIITは中国人が65人、インターナショナルな参加者が10人で、全日程、英語に中国語の通訳が入る形で行われました。

今回の中国IITのオーガナイザーのリュイと私は、昨年のバリで開催されたIITで久しぶりに再会し、その時に一緒に東アジアのつながりの場への夢を語り合い、いつか実現したいと思っていたことが、こうして中国で形になったことは、私にとっては長年の夢の実現への大きな一歩となりました。

中国IITのNVCトレーナー
韓国、アメリカ、イギリス、南アフリカ
そして私は日本から

NVC(非暴力コミュニケーション)とは?

NVCは、感じていることや大切にしていることを率直に分かち合うことで、人と人が深く共感し、つながることを可能にします。どれだけ歴史的な分断や痛み、敵対的なイメージが存在していても、嘆きや痛みを共にシェアし合うことで、個と個が出会い、そこで対話を通して共感が生まれる時、自然にお互いを思い合うようなつながりや、思いやりの心を取り戻すことが可能であることを深く体感しました。

共感と対話の力

今回の中国IITを通じて、改めて感じたことは、歴史的な分断や対立でさえも、共感と対話を通じて少しずつ乗り越えていけるということです。NVCは、私たちが互いに本音を語り合い、相手の感情に寄り添うための大切な場を作り出します。歴史や国境を超えて、心と心がつながる瞬間は、私にとって平和への希望そのものです。

中国人参加者が私のワークショップ参加してくれた最後に「私には大きな嘆きがあってどうしていいかわかりません」と泣き崩れました。そのときの感想を後日こんなふうに伝えてくれました:

「ワークショップの終了時、私は悲しみと無力感の中にいましたが、Yukoが『あなたの体に触れてもいいですか?』と優しく尋ねてくれました。私が『はい』と答えたとき、信頼と安心感の中で彼女に抱きしめられました。次々と仲間が私を抱きしめてくれて、その場にいる皆さん(日本の仲間を含む)からの体温とエネルギーを感じました。私は国境を超えた愛、サポート、つながりを体験し、それは私にとって最も温かく力強い抱擁でした。」

嘆きを共有するヒーリング・サークル

今回のIITの準備にあたり、私は日本人として、何を伝えられるかというよりも、どうやったらつながれるのかをずっと考えてきました。なにかしらの癒しが起こるような場を持ちたい、、、でもどうやったらそれが起こるのだろうとずっと悶々なやんでいました。

そして、それは10月1日の国慶節、中国の建国記念日にヒーリング・サークルとして起こりました。

私は一個人として、日本が中国に与えた歴史的な痛みに対して、日本人として胸が痛んでいることや、今日もなお日本が影響を与え続けていることに対する申し訳なさを、涙ながらに話しました。恐る恐る顔を上げて周りを見ると、周りの多くの中国の参加者がその言葉に共感し、一緒に涙を流していました。そして、終わった後も何人もの人が私のところに来てくれて「来てくれてありがとう」と言って抱きしめに来てくれたのです。

日本のチームがプレゼントした 5カ国語のニーズ板カード

そして、数日後、日本人参加者の2人が朝のサークルで日本から作ってきた5ヶ国語のニーズ板カードに込めた願いを語った後に、中国からの参加者の言葉を聞いて、私は号泣してしまったのですが、その後、ある中国人参加者が、私にこんなメッセージをくれました:

「今朝のサークルで、日本の参加者がシェアしてくれたとき、最初に感じたのは平和と安心でした。私は、IITの場が世界平和とつながりのための可能性を創り出していると思います。Yukoが歴史がもたらしたトラウマに対して涙を流している姿に感動し、私の中にあった尊重のニーズが満たされました。」

彼女のこのメッセージに、私も深く安堵しました。こうした対話が、歴史の痛みを乗り越えてつながりを育む力を持っていることを改めて感じました。


分断を乗り越えるために必要なもの

私にとって、歴史的な分断や対立を乗り越えるために一番大切だったのは、相手の痛みや怒りにまず耳を傾けることでした。自分から「和平」を申し出るよりも、まずは彼らの思いをしっかりと受け取ること。それが、私がこの場で大事にしたいと思ったことでした。

IITでの対話の中で、私たちはそのような思いを率直に分かち合い、多くの瞬間に互いの痛みや悲しみがシェアされました。そのたびに、私たちは一歩ずつ、歴史の負の遺産を乗り越え、つながりを深めていくことができました。彼女もメッセージの中でこう言ってくれました:

「私は、自分の子どもたちに対立や憎しみの感情を引き継がせたくありません。彼らが歴史を理解しながらも、新しい世界と人々の善意を信じられるようにしたいです。」

この言葉を聞いて、私は、私たちが同じ方向に向かって進んでいることを強く感じました。これまでの傷を超えて、もっとお互いの声を聞きたい、もっとつながりたいという思いが、私の中でさらに強まりました。

世代を超えたトラウマの癒しの講義
ロールプレイで号泣する人が多かった

彼女が言っていた「子供たちに対立や憎しみを引き継がせたくない」という願いに深く共感し、こうした対話とつながりが、歴史的な負の連鎖を止め、未来の世代に憎しみではなく、希望とつながりを残すことができるのだと感じました。これからも、こうした場が広がり、私なりに微力ながらも東アジアの平和とつながりに貢献していきたいと思います。

そして、来年は日本でもIITを企画し、東アジア諸国からの参加者も募集したいと考えています。NVCを通じて、さらに多くのつながりが生まれ、共に平和を築いていけることを心から願っています。

コミュニティ・サークルの時間


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