愛と呪い 1
ふみふみこさんの半自伝的マンガ。
著者ご自身の体験談を元に、主人公・山田愛子が成長する過程を描く物語ですが、ふみふみこさんのふわっとした絵柄とは裏腹に、内容は多聞にセンセーショナルです。
実父による性的虐待、新興宗教に入信している家庭環境、通う学校もその宗教が母体であり、愛子はそんな世界を壊してもらいたいと願っています。
また実際に起きた事件ともリンクしており、オウム真理教による無差別テロ事件、阪神淡路大震災、酒鬼薔薇と名乗る少年の神戸市児童連続殺傷事件などをリアルタイムで体験した世代であれば、より身近に感じられるのかなと思います。
物語の中にも酒鬼薔薇が事件発生当時新聞社に送った手記も紹介されており、彼の残した「透明な存在」の一文は1巻の重要なシーンで挿入されている。
これをきっかけに改めて読み返してみたが、中学生とは思えない文章力である反面、思春期特有の思考にあふれた幼稚な文章であるともいえる。
だがその幼稚さも実際に行動に起こしてしまったのは、後にも先にも彼ただ一人だけだという事を考えると、当時同世代の子供たちに対する影響力は相当なものがあっただろうと想像される。
物語の中では、愛子のクラスメイトで松本さんいう女の子が、それに当たります。
それがどんな影響だったかは、実際に読んで確かめてみてください。
何かに影響されやすい、多感な成長期を誰よりも表現してくれていたのが、この松本さんだったのではないかと思います。
学校生活だけでなく、愛子の家庭内の描写も出てきますが、これは恐らく実際にその環境に身を投じていないと描けない、非常に不気味なものに感じました。
完全なフィクションであれば、もっとバイオレンスに衝撃的に描かれるような家庭環境ですが、淡々と、あたかもそうするのが一般家庭的であるかのように描かれるので、それが却って不気味さを増長させるように私の目には映りました。
そして1巻は、このまま不穏な空気感を残しつつ中学卒業までで終わります。
全3巻で完結する事があらかじめ予告されているので2,3巻がどのような展開になるのか期待して待ちたいと思います。
#アル というマンガレビューサイトにもコメント書きました。
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