【金利入門#2】株価と金利の関係㊤
おとといスタートの「金利入門」。有料記事にもかかわらず1万以上のアクセスがありました。「大事そうだけど、やっぱりとっつきにくい」という方が多いようで、解説しがいのあるテーマだと再認識しました。
前回、金利は「経済の体温」と説明しました。ほどよく温まっているのが健康的だけれども、高けりゃいいというものでもない。そして、「金利と景気」の関係は単純ではないという話でした。
今回のテーマはそこから延長。金利と株価です。報道では「金利上昇で株安」「金利が上がったものの株価は下がらず」と因果関係がよくわからないこともあると思います。日本やアメリカの実際の動きもみながら説明し、今後の株価・金利記事がスッと頭に入るようにします。
ただ、「金利と株価」は1回で説明しきれないので、㊤㊥㊦にわけます。来週までに㊦を流す目標です。
ほかにもたくさん声が寄せられています。
などなど…。金利は奥が深く、いまの市場・経済をつかむうえで大事なアングルがまだまだあります。というわけで、みなさんのフィードバックを踏まえながら、「金利入門」シリーズは9月以降も続けます。
◆ まずはチャート
下のチャートをみて、「金利と株価」の関係を考えてみてください。
今年前半の「金利急上昇 → 株安」が際立ってみえるかもしれません。ただ、チャートに少し補足すると、印象がかわります。
③は「金利低下→株高」なので、④の「金利上昇→株安」と因果関係の構図は同じです。ところが、①は「金利低下&株安」、②は「金利上昇&株高」。③④とは因果関係が異なります。そもそも、2020年なかば~2021年末は俯瞰すれば「金利上昇&株高」ともいえ、今年前半の「金利上昇→株安」とずいぶん異なることがわかります。
つまり、前回の「金利と景気」の関係のように「金利と株価」の関係も一筋縄では言えないわけです。
◆ 前回記事と比較
これは前回のフローチャート。「景気と金利」は因果関係が一方向ではなく、相互に影響しあっています。「金利と株価」も似ています。
金利上昇は景気が強いことの現れでもあるので、そこだけとれば株高につながります。しかし、金利上昇も行き過ぎると、今度は景気や株価にブレーキがかかってしまうのです。「金利上昇&株高」のときもあれば、「金利上昇&株安」のときもあるのです。
じゃあどっちなのか、といわれるとそれはその時々です。多くの投資家がどういう側面を強くみているのかで因果関係の矢印は次々とかわります。それが市場価格の難しさでもあり、おもしろさでもあります。
◆ 4つのサイクル
上記はこの半年ほどで市場がよく意識するようになった相場のサイクルです。縦軸は金利、横軸は景気のよしあしです。
まず金融相場。2020年のコロナ以降の株高が象徴的です。超金利のなか景気が回復に向かい、投資家心理が明るくなる過程です。
次が業績相場。景気回復とともに金利が上昇しはじめますが、企業業績も伸び、株価は上昇を続けます。2021年はこれに近い時期が多かったと思います。
ところが金利上昇が行き過ぎると、次第に株価の上値を抑え始めます。これが逆金融相場です。2022年はこの色合いが強かったといえます。。
最後が逆業績相場。景気が悪化し、金利が下がる中でも、株式市場のムードの改善は遅れ、株価が下がる局面です。
今年前半は「逆金融相場」だとしても、逆業績相場に移る時期はわかりませんし、必ず移るとも限りません。4つのサイクルはあくまでイメージであり、実際の相場のムードや力学はいつも異なります。繰り返しですが、その時々で多くの投資家がどの側面に着目しているかが重要になります。
金利上昇、「スピード」も大事
2000年以降でみるとこんな感じです。最近金利が上がったといっても、3%前後という水準は歴史的に高いわけではありません。しかし、上昇のスピードは歴史的にも急でした。
景気回復とともにじんわりと金利が上がるならば株価も崩れにくいのですが、金利の急上昇はリハビリ中にフル回転するようなもので、景気にも市場心理にも響いてしまいます。この先、長期金利がさらに上昇するとしても、そのスピードがどうなのかというのもあわせて意識することが大切です。
きょうはここまで。今回は復習も兼ねて、4月に配信した記事も一部活用しました。次回㊥では、「債券投資か株式投資か」「金利とPER」「マネーフローは」など運用目線で「金利と株価」の関係を解きほぐしていきます。
◆ フィードバックに感謝
前回もたくさんコメントを頂きありがとうございました。連載記事ですら、皆さんの声を踏まえ、書く内容や難易度を柔軟に調整していくのは従来のメディアではあまりなかったことだと思います。
読者目線でコンテンツをつくっていくのはとても楽しいですし、なによりコンテンツの質が上がると思います。引き続き、皆様のフィードバックをお待ちしております。
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