照明計画で気を付けていること_私たちは現実を見ていない?
こんにちは。
照明器具メーカーで照明デザインを請負っているgotoです。
前回の記事で脳の働きにフォーカスした記事を投稿しました。
照明デザインの話なのに?
と思う方が多いと思いますが、「視る・感じる」を扱うジャンルなので
それを司る脳の機能を無視できないのです。
「今までにない斬新なものを!」というオーダーがあるけれど…
たいへん言いにくいのですが、無駄なあがきです。
脳の働き(仕様)からその理由を説明します。
ずばり脳はナマケモノです。
隙あらば怠けます。
いや自分は何事もやる気満々だ!という方はそう思い込んでいるだけです。
理由は単純。
脳はたいへんコスパ悪い器官なのです。
私たちが見ている景色は基本コピペ
通勤時に必ず通る道。
一歩進むごとに景色は少しずつ変化します。
一瞬一瞬を脳が眼球の網膜を通じて脳に送っている…
のではありますが、脳はそれをいちいち処理してられません。
ではどうするのか?
コピペです。
「現実」をそのまま受像するのは網膜まで
問題はこれからです。
網膜から先は錐体細胞(RGBを主に識別)と棹体細胞(明暗を主に識別)の
2種類の神経細胞のルートに分解されます。
二つの経路に分けた信号をさらに扁桃体へ向かいます。
その扁桃体は記憶を司る海馬と連携しています。
そこで過去の情報と照らし合わせ「快」「不快」と分類します。
↓「快」「不快」に関してはこちらを
過去と照らし合わせた情報で使えるものは再利用します。
際立った変化を有する情報以外の「いつもの景色」は
ここでコピペされます。
「自分の見たもの以外は信じない」は成り立たない!?
「見る」という当たり前の認知だけでこんなにも複雑な手続きを
要するのです。
なぜこのような仕様なのかは、そう機能する個体が生き残った(自然選択)
からとしか言いようがありません。
全ての生命は「遺伝子の奴隷」とも言われています。
遺伝子が命じるのは「生き残る事」「繁殖する事」のみです。
それを達成するに適した機能が重要であって、決して「ありのままを見る」
といった崇高さは最初から蚊帳の外なのです。
このあたりのお話に興味ある方には下記の本がお勧めです。
いかに新奇なものでも見飽きてしまう
というわけです。
設計やデザインに依頼するということはそれなりのコストと勝負を
かけるという事です。
見た目の派手さや話題性にばかりこだわって後に残ったのは微妙な
出来のオブジェクト…
などという事にはしたくないですよね。