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善因善果なる美
スキンケア等に就て、朝における予のルーティーンを書く。
先ず、顔を洗って導入化粧水を塗る。忘れること多し。何故かと云うに、先頃迄、保湿は朝餉後の化粧前に行っていたからである。或人より保湿は起き抜けが善いことを知り、況や予も心に留めたい。
予の使用したる化粧水類は、無印良品の導入化粧水、菊正宗の化粧水(日本酒の薫る化粧水である)、豆乳イソフラボンの乳液である。其等を資生堂のシルク混のコットンに丁寧に浸け、優しく肌に馴染ませていく。顔全体に塗布を繰り返さねばならず、まどろっこしい。其が為に、時間とやる気が足りなければ直接手に浸けて顔を潤す。但し其差は歴然也。
次に瞑想をする。瞑想は食前が好い。食後の身体は食物の消化に努めるが為、凡そ集中力を闕くからである。
寝起きの静なる錯乱状態は座禅と閉眼(或は半眼)を以て此を躾ける。深呼吸をし、頭より足末まで体躯全体を観察して行く。此は心眼で行う。瞑想中は、周囲に漂いたる凡ゆる音、凡ゆる匂い、凡ゆる気配に導かれず、亦惑わされない。寧ろ其等を利用して、精神を統御する。恰も後方に我魂顕れたるかの如く、唯自己の意識を眺めるのである。此をメタ認知と云う。
《ヘッドスペース》の指示に随えば、約十分後、視界が澄明に為る。則ち精神、一片の氷心の如し。然るに、些かの集中も愜わぬ日も有る。精神に宿る猿共を悉皆放逐すること能わざらしめるのである。其は啻に精神統一能わざるのみでない。縦横無尽に駆け巡る猿共は、意識を不要な迄に鋭敏にする。即ち意識を支配するのではなく、意識に拠って支配せられるのである。斯様な日は素直に諦める。我裡より生ずる拒絶に随わずんば、如何にして快適な朝を過ごせよう歟?
頭をマッサージする。則ちヨガである。膝を付き、顱頂を畳(自室に畳を一畳敷いている)に押し当て、背に廻した双腕の指を絡め天高く掲げる。其姿、宛として邪教を信ずる徒弟の拝跪に似たり。
此時、百会を軸として頭を緩やかに廻す。激しく動かせば、首を痛める虞が在る。慎重にせられる可し。頭部の浮腫をば改善すれば、即ち、胃腸の活動、顔の浮腫、後頭部の絶壁等、多岐に亘り効果が望まれる。江湖では此姿勢を「兎のポーズ」と呼ぶようである。
一定凝りが解消せられれば、「チャイルドポーズ」、即ち正座の姿勢から体躯を前に倒し、腕を伸ばす姿勢を以て全身を整える。
扨て朝餉である。輓近は米を炊くこと甚だ煩わしく、オートミールや冷凍食品を以て主食を賄う。主菜は残飯を温めるが殆どであり、態々作って食べたりはしない。バナナ、きなこ、蜂蜜をヨーグルトに入れて済ますことも屡々ある。初夏には充分であろう。
食後はサプリ(亜鉛とビタミンB)を一錠ずつと、半分に割った育毛薬(ミノキシジル、フィナステリド)を一錠ずつ服む。育毛薬は効果著しく、然るにサプリの効果を予は詳らかにしない。誰か其効能を知らん乎。
歯を磨く。能う限り次亜塩素酸水を使う。此は先日通い始めた歯医者で購入した。
工程甚だ多く、先ず60℃のお湯と1:1で口に含み、30から60秒含嗽する。次に歯ブラシに原液を浸け歯茎をマッサージする。次にフロスをする。終に歯を磨く。甚だ面倒なるが故、予は此を好かない。味も悪い。高濃度のプールを口に含んだ味を想像せられれば此と相違ない。
髪を乾かす。蓋し額の渇きはドライヤーに拠るものらしい。故に前後に化粧水等を改めて塗ることも有る。
ドライヤーは、俯き、毛の逆立つ如く温風を当てる。毛先まで入念に乾かす。最後に冷風を当てる。後、育毛剤を頭部に塗布し、櫛で解く。予はパーマを当てたるが故、毛先の辺りは手櫛で解く。
日に拠って、顔の体操とマッサージは入念に行う。モデルの仕事や人と会う時である。特に輓近は、硬直したる咬筋が目に余るので、畳に寝転がり頬に手で圧を加える。張りと凝りが緩和せられると、頬の段差が解消せられる。口も顎も軽くなる。然るに摩擦やマッサージは却而弛みと斑点の原因たると云われる為、過度な施術は禁物である。
低気圧で気が鬱する日は、側頭筋や上耳介筋を動かして顔の重さを少しでも紛らわす。
無論、眼輪筋の運動も闕かさない。「瞳」は「人見」であるように、吾人は他人を瞳で甄ける。瞳を忽せにすれば、即ち人相が悪くなる。人相が悪くなれば、即ち運が逃げて行く。
目頭と目尻に優しく指を添え、前頭筋を使わず、眼輪筋のみを以て瞼を持ち上げる。瞼を開閉すると同時に、視線を四方八方目一杯に転がす。此が膨張した瞼の改善に頗る功を奏す。此以上の運動は無いと予は断ずる。
化粧に就ては、当然の如く、その日の気力や予定に合わせて仕様を変える。時間が出来映えを左右することは言を俟たない。
予は其手順を漸く一通り憶えた。肌の潤いこそ要である為、此時点で渇きが気になれば、保湿を改める。
日焼け止めを塗る。コントロールカラーを塗る。予は色弱が為に、己の肌の色をば識別すること能わず。塗布前後の変化は著しく希薄に見えるが、色の識別を能くする友人曰く、随分と健康そうに見えるようである。
手を抜く日は此儘フィニシングパウダーをブラシで馴染ませる。使用している無印の化粧ブラシは、古い為か、甚だ使用感が悪い。予は高級なブラシを欲せんとす。
眉毛を描く。最低限で済ましたる日は此を以てメイクを完了とする。但し、眉毛のみが際立つことは悦ばしくない為、大抵は其儘アイシャドウも入れる。
手を込める日は、コントロールカラーの後に、クリームファンデーション、コンシーラー、フェイスシャドウ、ハイライト、アイライン、ノーズシャドウ、リップもする。浅学非才なる予をして更なる化粧法を識らしめたい者が居れば、予は唯々諾々として此を識りたい。
軈て化粧を終えれば、髪を整える。パーマを魅せるためにホホバオイルはふんだんに使う。3回程プッシュする。加えて仕上げに半プッシュする。此が為にホホバオイルの消費量は著しく増加したり。あな、美とは金喰い蟲也。
着替えて香水を纏う。此は休日のみである。香水の纏い方に定見は無い。空中に吹き掛けた香水を優雅に潜ることもあれば、腕や後頭部に散布することもある。此も忘れること甚だ多し。
以上が朝のルーティーンである。