優しくもがく、そして“何度でも”

2020年の一年間を振り返ってみて、組織マネジメント・コミュニティマネジメントにおいて何が起きているのか考えるとき、私は特徴的な現象が1つあるように感じています。

それは一言で言えば、「グリップが効きづらい」ということのような気がしています。「グリップ」とは「握る」という意味ですが、リアル・対面での会議や面談や会食が減って、オンラインでのコミュニケーションが増えたことによって、共通認識がつくりにくくなったり、関係性が希薄になったり、モチベーションや指示・実行がつくりにくくなっているような気がするのです。これはマネジメントにとっては“受難の時代”だと思います。

なぜそうなるのかの構造分析をもう少しだけすると、
① 個々人の優先順位(何を大切にしたいか)が顕(あらわ)になりやすく、今まで少しつき合いっぽかったもの・仕方なくやっていたものが淘汰されやすくなっている。参加しない言い訳もしやすく、距離も取りやすい。
② そもそも個々人のエネルギーが下がっている可能性。今までリアル・対面の触れ合いで高めていたモチベーションやエネルギーがその燃焼装置を失い、自分でもうまく理由がわからないままに調子(勢い・リズム)が出ない状態が続いている。
③ ①と②を起因としながら、組織内・メンバー間での“相互の高め合い”(相互作用)が起きにくくなっていて、それによって組織やプロジェクトやメンバーの温度が上がりにくくなっている。

これは人と組織のマネジメントにとっては受難の時代であり、ものごとがうまく進まずに、いろいろなことを“あきらめたくなる”ような環境です。NPO・市民活動・地域活動などをされている方の中には、「難しいなぁ・・・」「もうやめてしまおうかなぁ・・・」と思う方もいらっしゃるのではないでしょうか。

でもですね。ここでもう一度考え直してもらいたいなぁと思っています。
今までリアル・対面の接点によって握れていたものが握りづらくなった一方、個々人が自分の大切な優先順位で場や関わりを選択できるようになったこと自体は喜ばしいことの一つのような気がします。むしろ仕切り直して、選ばれ合うような価値ある活動をつくっていく機会と捉え直すことはとても勇敢で前向きだと思います。

今の時代は「優しさ」が必要だと感じています。成果やスピードの前に「優しさ」を持ってくる。メンバー・仲間の状況や気持ちに気を配り合い、今まで以上に優しさや愛情によって声をかけ合い、目配りをし合う。もしこれからのマネジメントがこの方向に傾いていくのならば、それは「成果」や「生産性」にとっては非効率で手間のかかる難しさの増加かもしれませんが、人間にとっては良いことのように思います。

そして、いざ活動を進めようと思ったとき、マネジメントにとっては受難の時代ですから、ものごとは進めづらく、グリップは効きにくく、思い通りに行かなくていろいろとあきらめてしまいたくなる環境下かもしれません。その時に必要な心構え・スタンスが「優しくもがく、そして“何度でも”」です。

今は「優しさ」が必要です。もう状況やルールが変わっていて、みんなが少しずつ今も混乱の最中に居ます。そこに対して、状況配慮・気持ち配慮の優しさが必要だと思います。しかし、それだけではものごとが進まずに、みんなにとって大切な場所・活動を維持できなくなりかねません。だから、「優しくもがく」ことが必要です。みんなで優しくもがき合うことが大切です。相手や状況や気持ちに配慮し合いながらも、「やろうよ!」と優しくやわらかくもがき続ける粘りと勇気が貴重です。

そして、「何度でも」です。前提条件が崩れているのですから、前のように一発でものごとがうまくまとまったり進んだりしない場面も出てくるでしょう。そのとき必要なのは、めげずにあきらめずに「何度でも」働きかける粘りと強さです。一度日程調整がうまく行かなくても、2度、3度と調整する。一度うまくいかなかった提案や断られた依頼があっても、時間を置いてもう一度チャレンジする。または、別のチャンスに切り替えてまた前に進む。

「1万回だめで、へとへとになっても、1万1回目は、何か変わるかもしれない」
「1万回だめで、望みなくなっても、1万1回目は、来る」
ドリカムの「何度でも」の精神で、目の前がうまくいかなくても何度でも何度でも働きかける優しさと粘り強さと超越性を持ちたいです。

何でそこまでやるのか。それは必要な活動だからです。市民活動やコミュニティ活動は社会や人間にとって必要だからです。自分も含めたみんなのために。がんばりましょう。^_^

いいなと思ったら応援しよう!