危機一髪シリーズ・税関の強者
海外駐在員にとって、空港の税関ほどイヤなものはないんじゃないかと思う。日本に出張行くたびに日本から食材を初め、いろいろ買い込んでくる訳だ。家族で赴任してて、子供が小さかったりすると買い物にも力が入るから荷物も増える。その増えた荷物を持って税関を通るから、呼び止められるんじゃないかと、毎回ひやひやしたものだ。
呼び止められると大抵関税を取られる。今の税率まで自分の知識はアップデイトされてないけど、90年代当時は無税での持ち込み額がかなり制限されていた。だから日本で買ってからパッケージを開けて、新品ではないことを装ったりもした。
それでも呼び止められないように、平然とした顔で税関を通過したり、大量の荷物を持ち込んでる人の陰に隠れりしながら通過するとか、対策を練ったものだ。
職場の同僚に、税関で呼び止められネチネチされた挙句、多大な関税を払わされたので、「俺が日本人だから差別してるんだろ!」と息巻いたらこっちへ来い、と事務所へ連行された人もいた。さらにこれは日本税関での話だが、生ハムを大量に持ち込んだ某現地法人の社長がいて、検疫で回収すると言われたので、お前らに取られるくらいならここで食ってやる!と言いながらその場でハムを平げたと言う武勇伝も聞かされた。
そんなこんな、とにかく、ことほどさように税関はイヤだった。僕はブリュッセルに住んでいたので、悪名高いベルギー税関を避けてアムステルダムから入ったりパリから入ったりしていたのだが、ある時、呼び止められてしまったのだ。
パリのシャルル・ド・ゴールでの話だ。その時、僕のバッグには家族から頼まれたニンテンドーが入っていた。新品でないようにみせたくて、日本で箱から出し、手持ち荷物に裸で入れといたのだが、外箱が捨てられなくて、スーツケースに入れておいたのが仇となり、検問で、この製品の箱はあるのか?と聞かれ、開けさせられたスーツケースからスーパーマリオが登場、となっってしまった。スーツケースにはニンテンドーの外箱がデカい顔で居座っていたのだ。一網打尽、ゲームオーバー!と悟った僕はそれでも何とか切り抜けようと、一緒に入っていたルー・リードのCDを取り出し、キミも好きかい、ルー・リード?などと機嫌をとる作戦に出たが、失敗した。
いよいよこれで関税は免れないと腹を括ったが、税関員はなぜか、ちょっと待ってろといい放ち、事務所へ消えた。
しばらくして出て来た彼は「OK, 行っていい」と信じられないセリフを口にした。まさかの展開、無罪放免になった僕は、ほっとむねを撫で下ろし、”VIVA, FRANCE!!!”と叫びたい気持ちでいっぱいだったから、心の中で精一杯叫んだ。やはり自由と平等の国、フランスならではの粋な計らいに見え、いたく感動したのである。
※写真はネットからの拾い物です。
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