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APPLE VINEGAR -Music Award-
Twitterのコメントを読みながら、「この賞についても分かって欲しいな」という気持ちがむくむくと湧き上がってきたので、ここにきちんと「APPLE VINEGAR -Music Award-」についての言葉を記しておきたいと思います。
まずは設立当初のブログをふたつ貼ります。ポップに賞を思いつくところから始まって、ふたつめのブログではすでに緊張しています。「えらいことをはじめてしまった」というのが、賞の設立当初からの率直な自分の心情の中心にあります。
そして、2020年のステイトメントから一部を引用します。
ポピュラー・ミュージックの状況というのも、ここ数年で劇的に変わりました。CDはメディアとしての役割を終えつつあって、リスナーもストリーミング・サービスを使うようになりました。そうした変化自体は悪くない、月額千円くらいで、過去の名作や最新のシングルを聴けるわけですから、リスナーにとっては夢のような時代になったと思います。
ミュージシャンの側も、耳に入れてもらえるチャンスが増えた。ただ、泣き言はあまり言いたくないですけれど、音楽で食べて行こうという人にとってはタフな時代になりました。もっとも欧米では音楽産業は成長に転じているわけで、「日本では」いう限定的な話かもしれませんが。
どんなイシューにも当てはまりますが、将来の世代に「夢も希望もない」と思わせてしまうのは嫌だなと思います。ましてや、そういう時代を僕らが用意したのならば、それは責任重大だなと思うのです。より良い環境を作って、それを手渡してから去って行きたい。音楽についても、同じように思います。
せめて新しい世代の素晴らしい作品を讃えるような賞を作ろう、と僕は思いました。賞の創設時に書いた僕のブログを読んでもらえればわかりますが、ごく個人的な賞として、自腹で賞金10万円を用意してはじめた賞です。
論評の精度についての問題は指摘されている通りで、もっと作品についてふさわしい言葉を送る努力をせねばと自戒します。
この賞の目的は、素晴らしい作品を完成させたアーティストたちへ祝福や賞賛を送ることであり、また賞金を送って今後の活動を支援することであり、未だ出会っていない世代に夢や希望を与えることです。それだけははっきりとここに記したいです。
いろいろ考えましたが、これからも選評のスタイルは「その作品の良さについて語る」ということを貫きたいと思います。もちろん、密室ではなく、オープンなかたちで。その作品がどのように素晴らしいか語ることは、簡単なことではないと実感します。
商業的な成功が伴わないということで自信を喪失したり、心が折れてしまう友人や仲間たちを見てきました。しかし、作品の完成/達成は、それだけで素晴らしいことだと僕は思います。
このブログに書いたことは、本当に切実にこの賞と繋がっている想いなので、読んでほしいなと思います。僕は「Yes!!!!」を言うために「APPLE VINEGAR -Music Award-」を作りました。
しかし、この賞を続ける限り反省しなければいけないのは、当初のブログにも書きましたが、アワードの形を取っていることです。どんなに注意しても、アワードには権威的な性質が宿ります。その不遜さに対する自己嫌悪は尽きません。各作品の優劣を比較することが目的ではないし、ただの賞レースになることを明確に避けたいと思っているけれど、結果的に選んだ「大賞を決める」というスタイルとは矛盾しています。
選考についての賛否があることは、とても健全なことだと思います。そしてありがたいことだとも思います。この賞が拾いきれなかった、言語化できなかった各作品の魅力が語り直される機会になってくれるなら、こんなに嬉しいことはありません。そして、賞が批評されることは、僕自身の学びにもなります。
今年は130万円の賞金が集まりました。すべて寄付です。坂本龍一さん、亀田誠治さんをはじめとして、レコーディングスタジオやミックスエンジニア、様々な企業のみなさんが援助してくださいました。感謝しかありません。
例に挙げるのがふさわしいかは分かりませんが、テレビの業界に支払われるスポンサー料のいくらかがあれば、インディの業界では立派なアルバムがいくつも作れます(でも、ここはパキっと分割しているわけではなく、華やかな場所に集まる資金や機会の恩恵を多くのミュージシャンが受けています)。様々なオリンピック事業を例にあげるほうが良かったかもしれません。
「お金ではなくアイデアで突破せよ」という言葉にいくらかの正しさがあるのは事実ですが、作品の製作費というのは根源的な悩みのひとつです。マイクひとつが塗り替える音楽や現場やモチベーションがあります。
資本主義的な性質に応じて製作費が削減されていく流れに、一石を投じたいという思いもあります。商売や宣伝を離れたところで、みんながどうやってお金を回していくのかについては、音楽だけでなく社会全体で考えないといけない問題だと思います。
長くなりましたが、この賞は、ささやかな「Yes!!!!」を、僕と僕の仲間たちのアングルから、大声で伝えるためにやっています。
同時代を生きる人たち、様々な志を持って作品作りに取り組んでいるアーティスト、バンドマン、ラッパー、トラックメイカー、これから楽器やマイクやサンプラーを手に取る人たち(若者とは限らない)、波形編集に明け暮れるアシスタントエンジニア、それらすべての未来に向けて。
そうした場所や機会が、同時多発的に増えることも願っています。それぞれの場所から立ち上がることを。
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