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Around The Planet Folks (2)

 ASIAN KUNG-FU GENERATIONの新しいアルバム『プラネットフォークス』は、聴いてもらえれば分かる通り、いろいろなミュージシャンと共に作り上げたアルバムです。このマガジンでは参加してくれたミュージシャンを取り上げながら、アルバムの背景に広がる様々な音楽について紹介していきます。

下村亮介(the chef cooks me)

 10年に渡ってライブのサポートメンバーを務めてくれたシモリョーこと下村亮介。『プラネットフォークス』にもさまざまな形で参加してくれました。特に大きな仕事としては、M4のエンパシー、M7のフラワーズ、両曲のプロデュースとアレンジですね。

 アジカンがプロデューサーを起用するのはこれが初めてです。僕らは音楽制作の現場で他人を信用することについてかなり慎重なタイプのミュージシャンで、新しいスタッフを迎えても打ち解けるまでに時間を要します。外部(仲間だけど)の人に音源制作の核心みたいな場所を明け渡すこと、共有することはとても勇気のいることでした。シモリョーだからできたことだし、その後の『プラネットフォークス』の解放性に大きく影響した選択だったと思います。

 映画のタイアップというパブリックイメージの「アジカンらしさ」を求められる状況はいつだって難しいです。ある種の自己模倣やカリカチュアを含みなら歩みを進めるという難題の、一端どころかかなりの部分を一緒に背負ってくれました。

 フラワーズでは悲しみと喜びを行き来するような繊細なアレンジをしてくれました。何度聞いても引き込まれます。

 彼はこれだけでなく、M2「解放区」のコーラス、M5「ダイアローグ」のシンセサイザー、M9「触れたい確かめたい」のシンセベースのアレンジ、M10「雨音」のシンセサイザーと、多くの楽曲に参加してくれました。

 そんなthe chef cooks meの名曲はこちら。僕が「ボーイズアンドガールズ」で歌うのはこの曲のワンフレーズ。僕らの孤独も違いも全部抱きしめてくれる最高の一曲。

 出会いはもう少し前だったと思うけれど、「Pascal & Electus」をレコード屋の店頭で聴いたときのことははっきりと覚えています。爆発が起こる前の予感を感じるサウンドだと思いました。

 そして一緒に作ったアルバム『回転体』。自分のプロデューサーとしてのキャリアにとっても、とても大事な作品になりました。3回くらい寝込んだけど、本当に最高の制作期間でした。

 次のツアーからはサポートを離れることが決まったけれど、引き続きチームの一員だし、アジカンのみならず、僕の音楽活動には欠かせない仲間であり、世界中を一緒に旅した親友のひとりです。

Cover photo by Masaya Mifune