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Masafumi Gotoh
2021年8月14日 23:41
Vol.5 トングの爺 音楽スタジオで楽曲のミックス・チェックを複数の人間で行なっていると、ときどき不思議な現象が起きる。 例えば、ひとりのメンバーが「最初から最後までイン、イン、イン、という感じの、なんとも言えない異音が聞こえて不快である」とか言い出す。ところが、他のメンバーはおろか音響のプロである録音技師も、その音を聞き取ることができない。「何を言っているのだ、コイツは」と思って即
2021年8月14日 23:30
Vol.4 前世が牛の爺「ファッション=服装」は難しい。 というのも、衣服には防寒などといった機能的な役割とは別に装飾としての役割が纏わりついているからで、装飾には金銭的な成功の度合い、属しているコミュニティと文化、性格、衣類選びにおける才能やセンス、その他、様々な情報が付属している。 ゆえに、例えば、豪奢なレストランや高級ホテルのバーにはドレスコードという厄介な決まりごとがあって、ジ
2020年6月12日 10:25
Vol.2 二刀流の爺「武士は用事のないところへは行かない」という話を聞いたことがある。 用もないのに街をぷらぷらしていると、「やや! この無礼者」とか言って刀を抜く羽目になったり、「覚悟!」 とか言われて短刀で刺されたり、側溝に足を落として骨折したり、小銭を落としたり、家に居れば踏まないで済む虎の尾を踏んでしまう可能性が高まる。そういった厄災のどんつきには「死」があって、なるほど、武術と
2020年6月13日 15:21
Vol.3 ランチタイムの爺 束の間の昼休みにどのようなランチに行き当たるのかというのは、多くの人々にとって切実な問題だと思う。少なくとも俺にとってはそうだ。何を食べるのかによって午後の仕事へのモチベーションが変わってくる。 だからと言って昼から豪奢なフルコースを優雅に食べたい、と思っているわけではない。そんなことをすると料理を待っているうちに昼休みが終わってしまって、豪華な食事の割に気分
2020年6月12日 09:24
Vol.1 加速する爺 職業柄、それなりの量の機材や荷物をカートに載せて移動することが多い。これはミュージシャンの厄介な性質のひとつだ。 我々ミュージャンには、適宜練習やリハーサル会場などに楽器や機械類を持ち運ぶ必要がある。ツアーなどの巡業の場合は、着替えなども持ち運ばねばならない。そうした場合には大量の荷物をガラガラと引きずって、時には背中に背負って、満員のJR山手線や京急羽田線の乗客に