高齢数学者と女詐欺師
この記事は、書きかけの為、随時書き足して更新いたします。
最近店に「微分幾何学の研究をしている」と言う70歳近いお客様がよく来る。近くの大学で非常勤講師を務めていることから、先生と呼ぶようになった。
実は9年くらい前にも通っていてくれたことがあった。
当時、その先生と隣に座る50代くらいの夫婦との会話を繋げた事があって
話は少し盛り上がり、ご婦人の方が「うちの娘も数学が大好きなのよ」と先生に投げかけると、「俺がやっているのは数学じゃ無いんだ!あんたに言ってもわからん!」と、急に激昂した。
気分を悪くされたご婦人は、夫に「もう帰ろう」と一言。ご夫婦はそれっきり来店されることはなかった。
先生は、またやってしまったと言わんばかりの顔で、お会計を済ませて出て行ったきり来なくなった。
俺は若い子が好きなんだ
先生は、子育てが終わる頃の脂の乗った女性が大嫌いだ。
本人曰く、話が通じないらしい。
「おれは授業で若い生徒とばかり接してきたから、若い子としか、話をしたく無いんだ」そんな先生にコッテリ油の乗った女性が話しかけるものならバッサリと「俺に話しかけないで!」と一刀両断する。
若い子が先生に話しかけ、ほんの少し数学や、それに似た学の話を始めて15分もすれば「おまえはなにもわかってない!」と激昂する始末。
あ、若い女性なら話は別で、にやにやしながら、やっすいスパークリングワインをシャンパンと呼び、1本注文し目で私にシャンパングラスを出せと合図しその女性の前で注ぎ出しプレゼントする。
「俺は好きな人にしか奢らないんだ!とゴウゴしながら。
とにかく若い女とカラオケが好き
男なもんだから若い女性が好きなのも、酒を飲めば歌いたくなるのもわかる。もっぱら先生のオハコはあいみょん。
子も育てた経験もなく、学校という若い子から教祖のような扱いを50年間近く受けてきた70過ぎの老害が歌う「あいみょん」
冷蔵庫にラブレター…
こちらとしては殺意しか芽生えぬ。
とにかく、座らせる席を選ぶ「面倒なお客様」なのである。
機嫌が悪い時は、そっぽを向いて誰とも話さず、2杯飲んで会計のお金をカウンターに放ってお帰りになられる。
しかし可愛い所もあって、私のような限定された空間の長を務める物に対しては、物凄いペコペコするんだ。
お金を持ってきたこともある。大量の1円玉と5円玉を。
「1円と5円は邪魔なんだよね」
ありがたや ありがたや
2年前に奥様を亡くされ、独りになり、身寄りも無く酒とカラオケと4次元の球体が彼を癒していた頃、教え子とお茶を飲む機会があったらしい。
しばらくウチの店に通い詰めるうちに、先生が変な話をするようになった。
「彼女ができた」という話だった。
それも、教え子と何度かお茶を交わしているうちに、告白されたらしい。(本人談)
その教え子はビルのメンテナンス系の会社を立ち上げるために、奮起しているらしく、そんな教え子を金銭的に支えるのだとか。
体の関係は無いらしいが、先生にとって、40歳も若い女性に言い寄られたらイチコロだろう。
詳しい話は端折るが、その彼女が同棲したいと言い出したらしく、先生はその気になり東京のマンションを売却して埼玉県の賃貸にて、2人で暮らすと言い始めた。
「いやぁー、お金かかるねぇ、今日は彼女と一緒にユニクロに行ってきたんだ。全部払ったんだけど、ユニクロってけっこう高いねぇ」
先生からは、毎日のように私にFacebookメッセンジャーにてメッセージが来る。
「今日は彼女とデートしました」
「今日は彼女とお昼ご飯を食べました」
「今日は彼女に、新居を契約してくれと言われました」
「僕は婚約しました」
おいおいおい、先生、それ騙されて無いかい?
今住んでいるマンションも売っちゃって、9月20にはそのマンションをでなければならない。
送別会
先生から兼ねて「私の送別会を開催したい」旨を受けていた。
9月8日、午後4時。
先生主催の送別会を執り行った。
2時間、飲み食べ放題4000円コース。
内訳11名様
「2時間のうち、最後の三十分はプロジェクターを使って微分幾何学の講義をやります」
中学校もまともに出ていない私を筆頭にノンベイ御一行は、イイだけ酒が回ったタイミングで、「微分幾何学」という得体の知れない世界へ誘なわれる事になった。
元気な60歳ノンベイは、その講義中に立ち上がり、プロジェクター投影の光を利用し、手でハト影絵を披露しさらに腹話術で泣き真似を奏でる始末。
会社にこき使われ、日々シカバネ状態でなんとか生きている40代のIT野郎は朝10時から飲んでいるとか言いながら、もう寝ている。
つづく
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