嫌煙というムードとヂャーヂャー麺
ちょうど1年前に義父から譲り受けたワゴンの車検が切れているのに気が付いたのは世田谷区の祖師谷商店街での事だ。
その日の夕方、4才になる息子が放った「ウルトラ饅頭を食べたい」の一言で家族を乗せて商店街まで送迎中だった。
あわててユーザー車検の予約をネットから行い翌々日の3ラウンドが車検の予約時間になった。
当日、多摩自動車検査事務所に向かう道すがらに見かけた町中華の立て看板に書かれた『ヂャーヂャー麺』が忘れられなくて、車検が終わった後にその店に足を運んだ。
原来、麺系の中にアンなどが入った外道は口に合わないと思い込んでいたので、過去にこのような物体を食した事が無いのだがこの「ヂャー」という言葉というか発音が美味しそうで引き込まれてしまった。
もともと北国出身ということもあり「味噌味」という文字にも異様に惹かれる。
「はい、おまちどう」
とともにカウンターに載せられたソレは、間違いなく片栗粉を溶かれたスライムのようなアンの中に野菜やキクラゲが放り込まれて、それらが蓋となって熱が逃げないようになっている底の細麺を引っ張り出す作業がこれまた口に入るタイミングを勿体ぶらせる。
アンをひとくち舐めると味噌の味と炒めた野菜の香ばしさが広がり、自分の記憶の中の麺類というカテゴリに星三つが付いた。
アンをかき分け、キクラゲを探したり、溶けたカタクリだけの部分を探したりと、よくもまぁこのようなアトラクションを人間は考えたものだ。
そんな時だった。
「カチッ、カチッ」という懐かしい音が厨房の奥から聞こえてきた。
この音はヘビースモーカー時代に毎日50回は聞いていたあの、ライターでタバコに火を付ける音だとわかるのに2秒と時間はかからない。
運が良いのか悪いのか、厨房から店の出入り口までの煙道に自分が座って麺を啜っている事がわかった。
先ほども話したが、口の中に広がる味噌とそれらの醸し出す妙味を楽しんでいる時分に、急に煙草とタールが焼ける匂いが邪魔し始めた。
もうこうなったら、味は台無しだ。
かくいう当店も4月から紙を燃やす系のタバコの禁止を発表した
インスタグラムのアンケート機能を使い、結果7対3の割合で禁煙勢が勝利したのだ。
禁煙にする事でお客が減ると近くの店主から危惧されていたが、その辺りは覚悟している。
そんなことよりも味を堪能している横で紙タバコを吸われる辛さの方が今は問題としているのだ。
元々はヘビースモーカーだった、ばあちゃんが63才という若さで急逝した原因が、蜘蛛膜下出血(当時は喫煙が原因だと考えられていた)だったことから、自分も早くタバコをやめて、ばあちゃんより長生きしなくちゃ。と考えるようになり、6年かけて脱煙に成功した。
しかし、苦労して脱煙した僕の目の前でプカプカ吸われては‥。
しかもカウンター越しなので煙は全てこちら側に流れてくる事になる。
正直、煙草の害で目の前の客が今後、死のうが、のたれ死のうがこちらには関係ない。
ただ、巻き添えはゴメンなのだ。
腹を決める。
店の売り上げは落ちるかもしれない。でもいい。
あの忌々しい煙から解放されるのであれば。
今働いてくれているアルバイトスタッフ1名にも、売り上げが落ちて今後雇う事ができないとお伝えする時期も来るかもしれない。
それでも、家族のために最後まで活きなければいけない自分にとっては英断だと信じる。
時代は変わった。
人は100才まで生きる時代なんだ。
70才でも恋愛自由な時代なんだ。
もう、水飴を混ぜた安い日本酒を飲ませられて糖尿病になる時代でもない
半島の安い焼酎なんか飲まなくていい。国産で宮崎の金宮を飲めばいいんだ。(飲み過ぎ注意w)
みんなで健康になって死ぬまで恋愛しようぜ。
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