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マイナー漫画オタクによる未知との遭遇:「女子攻兵」編

この漫画がすごい!というコラムが世に出てからというもの、ジャンプやマガジンといった大御所漫画雑誌以外でも面白い漫画は存在するということが世に知れ渡ってきた。非常に良い事だ。

俺も人に知られていない面白漫画を紹介したい!誰にも頼まれてない事なので完全な自己満足だ。

その前にちょっと長い前置きをさせてくれ。

俺はとにかく沢山の漫画を読む。一般人どころかオタクですらタイトルも知らない漫画を発掘してはニヤニヤしている不気味なオタクの1人だ。
ただ、1つ断っておきたいのは、俺は王道の少年漫画を卑下したり、どマイナー漫画を持ち上げすぎるような面倒くさいオタクにだけはならないようにとても注意しているということだ。

そもそも、基本的には大御所出版社の方が良いに決まってる。アシスタントは多いし編集のサポートも充実している。漫画家を支えてくれる環境が強固なほど出来が良くなるのは当たり前だ。

例えばこの作品
「血潜り林檎と金魚鉢男(阿部洋一)」

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どマイナー漫画オタクとして十分オススメできる名作なのだが、連載誌の廃刊という作者以外の都合で打ち切りを食らっている。
奇跡的に素晴らしい救済のもと完結に至ったとはいえ、出版社が変わってしまってるため、
無印or新装版血潜り林檎(全3巻)→新・血潜り林檎(全2巻)、と読み進めなくてはならないので未読の方が手に取りにくい状態となってしまった。

まあ、ここまで極端な例はそうそうないが、
尻切れトンボに終わる可能性が高くなるというのは確かなことだ。
この漫画が今後もすごいとは限らない!なんて馬鹿正直に宣伝できるわけでもなし、いきなりタイトルと表紙だけで手に取るのは怖さが伴うだろう。

あとは…まあ、読んだら終わり!なところもあるよね。
アニメ化は絶対しないし、グッズもない。当然SNSでスピンオフを勝手に生産する絵描きもいなければ、良さを語り合うコミュニティもない。作品+アルファを前提に楽しみたい方には受け付けないだろう。
自分以外のオタクが嫌いなオタクにとっては都合が良いのだが、そんな日陰に向かって全力ダッシュするダンゴムシみたいな連中は全くもって気持ち悪い。

それでも一時の楽しさを味わいたいと思う方は是非、誰かが紹介したものからでも読んでみてほしい。


さて、長々と語ったが今回紹介する作品は、

女子攻兵(松本次郎)

という漫画だ。

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この漫画、正直言ってかなりヤバい。
狂人の思考を直で注入される。ブラウ1589のメモリーディスクのようだ。

これは楽しさに犠牲を伴うタイプの娯楽だ。何かを捨てなければ新しいものは得られない。
だが、僕らは今までもそうやって楽しむ事を覚えてきたはずだ。この記事を読んでいる中で、今だに休日は公園の砂場やブランコで遊んでいる奴はいるか?新しいものを楽しむためには何か自分の楽しみを捨てる必要がある。
例えば、岡村孝子の「夢をあきらめないで」を一生マトモに聴けなくなる覚悟をしてでも我孫子武丸の「殺戮にいたる病」を読むことこそが犠牲を伴う楽しさだろう。もうあの曲は殺人ソングにしか聴こえないがそれでもいい。

さて、ざっとこの漫画の世界観を説明しよう。

人類は、人智を超える高性能コンピューター「預言者」によって管理されていた。
新たな生存圏として発見された「異次元空間」に新天地を求めて移住した人々は、地球からの分離独立をもとめて武装蜂起。地球連合軍との間に異次元戦争が勃発した。

戦線は拡大、長期化。地球連合軍は戦局を打開するべく、従来兵器全ての攻撃を無効にする新兵器「女子攻兵」を戦線へ投入、大規模な攻勢へ転じようと画策していた。

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あ〜、松本次郎キメえ〜。最高〜。

この漫画の象徴ともなる「女子攻兵」はエヴァンゲリオンのような操縦するタイプの生物兵器だ。そして登場者は全て犯罪者で統一されている。
その理由は精神汚染だ。「女子攻兵」に乗り続けていると精神がジワジワと女子高生寄りになる。汚染度が進むと何故か標準装備されたガラケーからメールが届く。相手は実在しないメル友や彼氏、両親だ。兵士達は極限状況の戦闘中でも彼氏からの別れ話で落ち込み、今日のご飯はすき焼きだと狂喜する。
過酷な戦地ではメンテナンスや補給が滞っておりおっさん達は次々と「女子攻兵を駆る兵士」から「シンプルに巨大な女子高生」になりつつあった。

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この時点でお気づきだろう。この漫画のキャラクターは9割がオカマだ。ちなみに残りの1割は別ベクトルのキチガイだ。
いや、正確には「自分のことを女子高生だと思い込んでいる一般兵」か。

中身はおっさんだがガワは全員女子高生なので絵面だけは戦う女の子漫画に見えるのがあまりにも怖すぎる。

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この現象、ちょっと覚えがないか?
バーチャルyoutuberだ。コンビニバイトのおっさんがめちゃカワ女子高生になれる。大衆を前に堂々と振る舞い、パフォーマンスをする。自ら生み出した設定を忠実に守り、仮想の人格を演じる。
彼らが現状であそこまで出来上がっているのを見るに「女子攻兵」の魔力たるや尋常ではないだろう。自分をカワイイ女子高生だと認識した上で、戦場の圧倒的な上位者となり、破壊と殺戮の限りを尽くす。
精神汚染が伴う架空の兵器でここまで説得力に圧を感じる事は恐らく今後ないだろう。

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ストーリーは、精神汚染度が上がり暴走した女子攻兵を狩る猟兵部隊隊長のタキガワを視点に進んでいく。
長年女子攻兵に乗り続けてもなお精神汚染が進まないタキガワは狂っていく戦友達を屠るハイエナ部隊として戦場の嫌われ者だった。彼はツキコと名乗る女子攻兵をターゲットにした極秘任務を任されるのだが…?

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これ以上内容について書くのは蛇足なのであとは手にとって読んでほしい。

安心してほしいのはこの漫画は決して松本次郎の気持ち悪いオナニーで終わるわけではないという事だ。
何故女子高生なのか、そしてガラケーが標準装備なのかは全部訳がある。世界観の作り込みも尋常じゃないほどしっかりしているし、それが7巻で上手く完結している。
そして何より、シリアスでグロテスクで難解な内容ながら、戦場兵器の高揚感と女子高生特有の明るさ能天気さが読者に余裕を与えてくれる。

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まごう事なき名作として推薦します。

まあ、グロテスクとナンセンス描写に関しては本当に容赦がないのでそこは注意しておく。小中学生が読んだら間違いなく吐いてしまう。特に6巻では刃牙SAGAに匹敵するレベルのお色気シーンがあるので食事前後の服用は避けてください。

では。

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