夢で逢えたら
2014、4、4、
おばあちゃん子だった俺は、ばあちゃんが死んだときはそりゃあショックだった。
昨夜はばあちゃんの夢を見た。
夢の中の俺は小学校一年生だ。実家の近くに住んでいたばあちゃんの家に俺はひとりでいた。
腹が減ったので電気もテレビも点けたまま、パンでも買おうと外へ出たら大雨が降りだした。好みのパンが見つからなくて、いい加減歩いたから実家のそばまで来てしまった。。
雨がひどいのでこのまま実家に帰ることにする。
家に着いた事を、ばあちゃんに教えようと、電話を掛けるがばあちゃんは出ない。
ちょっと見てきなと、おふくろがタクシー代をくれた。この時代のおふくろはまだ若い。
すると電話が鳴りだして、おふくろが受話器を握るが、どんどん顔
が青ざめていくのがわかった。
「おばあちゃんが川の下流で見つかったって。」
タクシーに乗るのは二人になった。
急いで現場に向かうも、タクシーを降りるとそこは山道だ。「どうしてばあちゃん、こんなところに。」と夢の中の俺も疑問に思う。
カッパを着た消防団の背中を見ながらぬかるんだ山道を登る。
やっとの事登りきると、いつの間にか先についていたおふくろが、人だかりの中から、大きな声で俺を呼ぶ。
もう、そこにどんな光景があるのか想像がつくので俺は足が一歩も出ないんだ。
来た道を走って逃げだしたい。
周りの大人に押されるようにして人だかりに近づくと、白衣を着た医者がかがみこんでいるのが見えた。 処置をあきらめたその様子に、
「ふざけんなよ。何だよその顔は。あきらめないでばあちゃんを助けてくれよ」
俺は医者を押しのけて、ばあちゃんの耳元で、気も狂わんばかりに叫んだ。。
「ばあちゃん」って。
なのに、ばあちゃんが、どんどん冷たくなっていくのを感じるんだ。
何度も何度も「ばあちゃん」って叫ぶけど、ばあちゃんは何もこたえないまま冷たくなっていった。
まるで病院のベッドの上で俺の声が届かぬまま逝ってしまったあの時の様に。
目が覚めるとさ、泣いてるんだよ。まだ夜中だってのに、夢がリアルすぎて眠れない。
それどころか涙が止まらず、しゃくりだす始末だ。
悪い病気がまたはじまった。この夢に、いつもふりまわされる。
ああ、人間は必ず死ぬ。人間だから死ぬこと考えたら怖いけどさ。でもさ、死んだら、またばあちゃんに会えると思うと、死んでみるのも悪くないな。
夢の中のばあちゃん。せっかく会えたんだから、せめて一言声かけてほしかったよ。
おふくろはばあちゃんの死んだときの年齢を超えた。
必ずやってくるその時、俺は冷静でいられるか自信がない。