薬を断ち切る愛の力
2014/10/13 記
さて、昨日シャフの話をしたので今日もその続きをするか、退屈な連休だしな。
じゃあさ、俺の長年に渡るジャンキーライフの中で、シャブにどっぷり浸かっていながらもスッパリ足を洗った人間がいるかというと、これは確かにいる。
それではどんな人間がその泥沼人生を避け、希望に満ちた新しい人生を歩み直したかといえば、まずは
1回目の懲役に行って帰って来た奴。頭がいい。
この時点で自分の人生と薬のどちらが大事か気づいているのだ。
これに気づかない奴は俺のようにその後もズルズル行く。
この初の懲役体験で懲りた時が人生の分岐点だ。
そしてもうひとつは女で、結婚したから。
健康な子供が欲しい。
家庭を壊したくない。
夫を裏切れないという愛の力が薬を断ち切る大きな武器になるんだね。
多くが薬がらみの男を渡り歩いて身を落としてしまう中、確かに立ち直って幸せを掴んでいる女性はいる。このパターンしか俺は知らない。
いつだったか、東京拘置所の図書工場で一緒だった宮脇さんに覚醒剤を届けに行った。
一緒に捕まったが執行猶予だったという彼女は宮脇さんの帰りをずっと待っていて、毎日電報を打って来ていた。こんなに愛されて羨ましい限りだった。
その彼女と共に、当時の俺の女も一緒に4人でカラオケに行った。
聞くと彼女は逮捕されてからいっさい薬はやめたと言っていた。
俺はいつものように事情聴取する。
「どうして辞められたの?」
彼女はこう言った。
「捕まっちゃうと彼と会えなくなっちゃうでしょ。それが一番辛くて。だから彼にももう絶対に薬やって欲しくないの」
なんていい女なんだって抱きしめたくなったよ。
でも、そんなの知らないから、さっき頼まれた覚醒剤を奴に渡しちゃったよ。後で、隙を見て取り返そう。そして二度と薬の付き合いはやめようと思った。
彼女は、
「今度改めてウチへ来ませんか?お料理得意なんで、お二人を招待したいんですけど。ねえ、」
なんて言いながら奴の太ももに手を置いて笑っている。
俺が女にこんなこと言われたら、今すぐ持ってるシャブをドブに捨てるよ。
なのにこの野郎は俺に薬なんて注文しやがって。
今の彼女の言葉を聞いて少しでも反省したのかと思えば、彼女がトイレに行った隙に彼女のグラスにさっき渡したシャブをこっそり入れたりしてやがる。
取り上げてグラスを片付けたよ。
彼女はけなげで、優しい女性だが、男は最低の野郎だった。
どうしてこんなカップルが成立しているのか彼女が哀れでならなかった。
でもね。安心してくれ。
この前宮脇さんと開会したらちゃんと別れていたよ。。
彼女の幸せのためにはそれが一番だ。
PS
こんな最低の男が女には事欠かないんだよね。なぜかずっと気になってたけど、それは優しいからだね。物腰から話し方まで。
それに引き換え、俺は女に雑だものモテないよな(笑)
でもね、優しかろうが何だろうが、こうして数十年後の奴を見れば、結局本性はばれる者なのさ。
ほんとの愛は見かけじゃないだろ。