北の楽園
2014/11/5 記
取り調べ2日目。
出来上がった調書にサインをすると、なにやら話が始まった。
取り調べに来たオヤジは結構偉いオヤジらしく、昔は工場の担当もやっていたという。
「せっかく衛生係なんて誰でもできるわけじゃない仕事してたのにもったいないな」
と、調査になってから何人かのオヤジに言われたのと同じ言葉をまたかけられた。
衛生係だろうが腕章巻いてようが、俺はオヤジとの接点のない作業のほうがいいんだと言うと、
「若いのに偉そうに言われるとムカつくか」とかなんとか始まった。
「昔はこの刑務所も6工場しかない小さな刑務所だったんだよ。あの頃は俺も工場持ってて懲役とはうまくやっていたよ。工場がまとまってたよ。作業中に運動会の練習させたり、バーベル作って筋トレなんかもさせてた。小さなことじゃ懲罰なんか行かせなかった。最後まで面倒見てやりたかったからな。
可愛がってた奴が死んだ時なんか俺が全部体を拭いてやって、一晩中線香の火を見ていた。
悲しかったなあ。でも今は刑務所もおかしな具合に変わってしまったよ。若い奴の態度に頭くるだろ。どう言ったって治らないんだよ。人なんて言い方ひとつでどうにも変わるものなのにな。
前にここを出所した奴が、ここを
北の楽園刑務所なんて言ってメディアに取り上げられてしまってからかな、上が言うんだよ。あくまで事務的にやれ、情けはいらないってさ。それじゃ信頼関係も作れず、懲役だってついてこないよ」
なんて言ってたこの刑務官は、工場持ってる頃はいわゆる熱いオヤジだったんだろうな。
北の楽園。甲府刑務所が最後の楽園と呼ばれているのと同様に楽勝な刑務所だと舐められてるわけだ。
不名誉なんだろうね、刑務所側としては。
こう言う熱いオヤジが引退して、若いオヤジに世代交代している今は、懲役を「俺の兵隊」と言って色々面倒見てくれる事も昔話になったと言う事だ。
PS
(写真)
保護会を一歩出るとこの風景。
怖い時あるね。
最近は仕事がハードなせいか、夜になると足が攣る。
なんとかしてくれ。