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俺の獄中絵日記(鹿児島編)その 2

幻のシャバ4ヶ月間の内の某日。


 ところがサァ。有るんだよネ。
 今回ガサもれが。
 ガサもれ?何のことかって?家宅捜査で探しきれなかった物の事だよ。  前回、平塚警察が来た際、家の前で今回と同じようにやられて、これまた今回と同じで家に戻ってガサ入れされた。
 その際、俺の持ち物からはシャブや大麻が出たけれど部屋からは何も出なかった。探し出せなかったんだ。ガサ入れでもれたんだよ。
 ガサもれだ。
 それが今回は部屋にちゃんと残っていた。思えば中途半端な決意だったんだ。

『近くに有ったってやらねエよ』というのと『これが最後だ』とかが入り混じってて・・・。
 それが大きな失敗になるなんて思ってもなかった。とりあえず

プリンターの中のシャブはまたもとの場所へ戻した。

<幻の4ヶ月間のある日>


 お袋の事はさ。福祉の林サンって若い女性の担当者が良く面倒見てくれていたようなんだ。
 前刑で出所したとき、仕事が決まるまで生活保護を申請しようと福祉へ行ったよ。
 いくら持ってるかって聞かれて8千円と答えると、それだけあればしばらく生活できる、と言われて追い返されたものだから、福祉なんてそんなものだと思っていたけど、今回は違ったんだよ。何も頼みもしないのに、出所して仕事の決まるまでは生活保護は必要でしょと言って来た。福祉にお袋の事今までありがとうと礼を言いながら話をすると、就労支援ってのを受ける事をすすめてくれた。
 もうてっとり早くシャブの売して金儲けしようとは思ってないからネ。 イチからやるつもりだったんだよ。だから焦ってたよ。
 何よりも早く仕事見つけなくてはとそればかり。いつまでもモタモタしてたら立ち行かなくなるからネ。そしたら又楽な方へ流れて、もとの木阿弥になりかねない。
 そしたら、就労支援の担当の田村サンって人は俺に良い事言ってくれたんだ。

榎本クリニックとかいう病院から出向で来てるという服部サン。色々薬の事について尋ねられたんだ。『薬はやらないよ。でも、はっきりは言い切れないね。これまでこれだけの回数懲役行ってんだから。でも、売をしようとか、誰か紹介してやろうとかそういうのはないよ。』って正直に言った。そして、『刑務所にダルクの人が来て、ミーティングってのをやったんだけどあれは俺自身のためになる気がした。できたら仕事を探しながらあのミーティングってのに参加したいんだ』と言うと、ウチでもミーティングはやってるわよって。そしたら、就労支援の話は打ち切りさ。あなたは病気なんだからまずそれを治すのが第一。ウチのクリニックに通院してって・・・。

某日ー
『ウツの人が攻撃的になる場合怒りは大概身近な人、つまり家族に向けられます。無意識に甘えられる人と判断しているのかもしれません。』

 とかいう専門家先生の見解なんだけど、もとはといえば長きに渡り俺がそうさせてしまったっていうところだよ。
 心配掛けて、迷惑掛けて、お袋が夢に見た老後の生活とは全く違う現実にしてしまったのは俺のせいだろ。

『かといって何でもしてあげるのは危険です。それは家族が共倒れになる場合の最も多いパターンですから。自分でできる事は自分で・・・』

 そうはいうものの、この人は人生俺のためだけに生きて来たようなひとだぜ。そんなわけにいくかよ。

 そんなものだよ本当に。
 ムシャクシャしてたから?
 イライラしてたから?違うよ。全くカンケーないね。あまりにも身近に有りすぎるのサ。
 シャバに居るときは365日空かさないんだ。
 まさに生活習慣のひとつだよ。依存症としてはそれが一番やっかいらしいけれどね、でも、そうなんだ。罪悪感は遠い昔にもう置き忘れて来てしまったから、軽い気持ちで手を伸ばすのさ。タバコやコーヒーと同じように。


 そうしたら、あの担当の先生は、

『わかりました。今回は通報したりはしません』

と言ったよ。おかしくないか?今回は・・・なんて、通報されるなら誰もクリニックになんて通わないし、通っただけで

 薬をやらなくなるなら誰も依存症に悩まないだろ。しっかりと医師の立場で面倒見ようなんて気は無いと感じる対応だ。
 とにかくこのクリニックに対しての疑問をあれこれ服部サンにぶつけていた俺はジャマだったんだろうナ。
とにかく陽性反応の出た他の3人はおとがめなし。その日荷物を全て持って帰らされた俺は次の日、福祉へ来いと言われて出向いたよ。
 そして簡単な筆記を、あの服部サンにやらされた。そしてその解答は、


 精神病院に入院しろっていうんだよ。カギの付いた、鉄格子付きの病棟へ。
 そしていつになるかわからない退院を待って、それからクリニックへ来て、理事長に頭を下げろってさ。
 そうしたら、又クリニックへ来てもよいかどうか理事長が考えてくれるかもしれないって。
 どれだけ上からだってんだよ。
 だから俺は、宗教団体のようなあのクリニックへは通う気もないからし頭を下げる気もないって言ったんだ。
 だって、一度会ったとき、ほぼ全員がいねむりしてるミーティングじゃ意味がないって言ったら、

『あんたも生活保護が欲しくてうちへ来てるんでしょ』

 なんて言った奴だぜ。そんなのに頭下げらるかよ。そしたら、

『本人に薬止める気はない』

 と診断されて、就労一本にきりかわった。当初の形に戻ったわけだ。

でもその4日後のことだよ。
帰ってきて、まだ4ヶ月が過ぎたばかりだってのに………。

鹿児島編予告1・2おわり

PS
随分前に描いたやつだけど、刑務所のボールペン一本で書いてんだ。
俺って上手くねえか?(笑)

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