![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/150063729/rectangle_large_type_2_5b0ff4dd22d604ff465ead68ac9ff4f2.jpg?width=1200)
言ってもわかんねーのは
2014/12/17 記
あいも変わらず今日も一人。
独居で朝から豆いじりだったので、昨日の話の続きをするよ。
俺はね、結構子供に人気あるんだよ。どこへ行っても。(笑)
まだ俺がいいお父さんしてる頃の話なんだけどさ、娘がまだ、ろくに喋れず、やっとよちよち歩き出した頃かな。
俺が仕事から帰ると、冷蔵庫に入ってるアイスを食わせろとぎゃーぎゃー言っては女房を困らせていた。
怒り出す女房を止めて、娘を部屋に連れて行った。
天井に向かって「おーい」と叫ぶ。
すると娘の足元にシューアイスが転がった。呼んだら落ちてきたシチュエーションだ。
もちろん俺が隠し持っていた袋入りのシューアイスだ。
「いい子にしてたから落ちてきたのかな」
なんて、天井とアイスを交互に見たりして、2人で半分ずつ食べた。
次の日は帰宅した俺を出迎えては早くも一緒に天井に向かって呼びかけるつもりのようだ。
アイスは冷蔵庫というのを、もう忘れているようだ。
女房に聞くといい子にしていたというので、アイスはすぐに落ちてきた。
「明日もいい子でな」
なんて言う。
そのうち、女房が、今日はちょっと微妙。なんて言う日はアイスはなかなか落ちてこない。
2人して「おーい、おーい」と、天井を見つめる。
娘の目を盗んで、シューアイスを両面テープで天井に貼り付けては
「あっ!やっと出てきたぞ!もっと大きな声で!」
なんて言うと娘は力の限りに叫ぶ。
抱き抱えて自分でアイスを取らせると、完全にアイスは天井から出てくると思ったかもしれない。
「おかしいね。今日はなかなか落ちてこなかった。もしかしてあまりいい子にしてなかったんじゃないか?」
なんて言ってると、女房が、
「そんなことまだわかんないでしょ」
そしてある日帰宅するとその日は女房が、
「今日は怒られて泣いた泣いた」
と言っている。
その日は2人でおーいおーいと叫んでもアイスは出てこない。娘も喉から血が出んばかりの叫びようだ。
俺は言ったよ。
「今日怒られなかったか?
お父さんは怒られたんだ。だからアイスが落ちてこないのかなぁ」
すると娘はアイス食いたさにぎゃーぎゃー騒ぎ出すかと思いきや、何か思うところありとか言わんばかりに斜め上を睨んでは、1人で遊び始めた。
諦めたのだ。
あんな歳でもちゃんと言って聞かせればわかるんだと確信した。
だから暴力は必要ないのだ。
むしろ言ってもわかんねーのは大人の方だよ。
![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/148148505/picture_pc_0c487950604ff8e2311a85d44f8ed092.jpg?width=1200)
PS
俺にあの子達と会える資格はない。
関わらないという約束の元に、30年経つ今も彼女らの情報はシャットアウトしてきた。
知れば必ずコンタクト取ろうとする弱い自分がわかっているから。
一番知りたいことを、知らないままに生きることは辛い。
幸せならそれでいい。
幸せだと言って聞かせて欲しい。
俺以外の男がそうしてくれたとしても今の俺にやっかみなんてない。
素直に幸せを喜べる年になった。
しかし言葉をかけられるような、俺が許される日は来ないかも知れない。