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夫婦の愛のかたち

2014/12/23 記
 32歳の時だったかな。一度だけ悪い品物を渡してしまったことがある。
 紹介された京都の夫婦は8ヶ月間で100グラムの覚醒剤を消費するらしく、当時品物が無くて焦っているというので俺はワンクッション置かずに東京のホテルで旦那さんに渡した。
 実際にそこでちゃんと試して、納得し、持ち帰っているのだから、後からクレームを受ける筋合いはない。
 しかし、代金の他にお礼だと言ってポンと10万寄越した旦那さんの人の良さに、その時一見して粗悪品だと分かってた俺はその後のクレームを受け入れた。
 品薄だったこともあり、俺はちゃんとしたものを少しずつ返していくことにした。
 一度京都に来いと何度も誘ってくれるので、その時も返済分の少量を持って京都に向かった。

 京都では旦那さんに粗悪品を売りつけた野郎をなんとかしてやろうと、事務所の人間が待ち構えていたんだな。
 飛んで火に入る夏の虫だ。

京都駅に迎えにきてくれた夫婦と鰻を食べた。
 旦那さんは60歳近かったのに奥さんは俺の一つ上の33歳。
目の覚めるような京美人だ。

「奥さんがこんな綺麗な人だとは驚きました」

精一杯の褒め言葉のつもりだった。

その後旦那さんは事務所に寄ると行って、一緒に行ったところ俺は囲まれることになったんだが、旦那さんが言った。

「彼は悪い人間じゃない。
現に少しずつ返してくるし、騙すつもりやったらここまで来んやろ。」

悪いことしたとは思ってるが、騙すつもりもなく誠意を持って対応してるが、この状況はさすがにやばかった。

旦那さんは俺を信用すると言って、その場が収まった。
 殺されるとこだったかもしれない。
 その後気をよくした
旦那さんの自宅に行くことになる。 下京区のマンションを二つぶち抜いた家で、奥さんが飯を作って待ってるというからだ。
 時間を潰すのに入ったパチンコ屋では、スロットに座ってた俺のところに店員が来て、ドル箱満タンのコインを持ってきて、会長の方からって。
 会長?いったい何をしてる人なのか、聞いてみたが、若い頃に頑張ったんやというだけで、教えてはくれない。しかし余裕のある人なのは分かる。
 俺に紹介してくれた人も含めて4人で食卓を囲んだ。
 食事が済むと、これから2人で覚醒剤を使うので、みられたくないから外に出ててくれと言われ、俺たち2人は外に出た。
なんでも朝、昼、晩と日課になってるようだ。これなら2人で8ヶ月の間に100グラムの使うってのも分かる。
 その後紹介してくれたやつは帰るのだが、俺は引き止められた。
京都までの交通費も、その他全て旦那さん持ちできてる。
 今晩はどうするのかと聞かれ、新幹線も終わりなのでどこかのホテルに泊まって明日帰りますと言った。
 するとエロビデオでも見るかって。
俺は断り、ホテルに行くことにすると腰を上げかけるが、なぜかもう少しゆっくりしていけと。俺を返したがらない。
そのうち、もう一回覚醒剤を使うというので、俺は外に出ようとすると奥さんが

「ええよ。気ぃ使わんで、あんたもう家族みたいなもんやから」

なんて京都弁の綺麗な響き。
え?家族みたいなもんなやって?
旦那さんの信用を得たということでなのか。

毎日注射するのに奥さんの腕や足、どこをみたって注射痕はない。
いったいどこに…。
 それが一番ここへきてからの俺の疑問だった。
 その答えが目の前でわかる。奥さんは横になり、旦那さんが首に注射していた。

「いたた。ちょつともれとるで」

これまた京都弁がほんとにいい女を演出する。

その後、洗い物に奥さんが台所へ姿を消すと、旦那さんが俺に言った。

「お前3Pやったことあるか」

もうびっくりしたよ。

「はぁ?だめですよダメ!あんな綺麗な奥さんに悪いと思わないんですか」

「俺はなあ、もう、みてる方がいいんや。前に一度やったことあるんやけどええ感じやったんや。あいつもあんたのこと悪く思ってないようだしな」

そりゃあ、しつこい。そのうち奥さんが、キッチンから叫ぶ。

「なんか、変な相談してんやないやろねえ」

助けると思って…。という言葉に負けて、ここへきてる立場上断れずに、そりゃあいい思いさせてもらったっけ。けれど、どうもいけない。仲のいいあの夫婦に対して、罪悪感しか残らないのだ。こんな思いをするなら2度とこんなことはしないと誓う。
 しかし、いろいろな愛の形があるんだね。それからそんなことはしてないけど、やっぱり夫婦はなんでも本音で付き合わなきゃダメなんだとあの時反省した。
 自分の女房には、恥ずかしいからとか、カッコつけたりとかはせず、女房だからこそ、恥ずかしいとこ見せて、ほんとの自分を見せなきゃ、長い付き合いはできないんだなって。
 今じゃ人に言えないこともなんの恥じらいもなくやってる俺だけど、
京都に行った頃の俺は女に対してはまだ経験不足で、みてるだけのはずの旦那さんが、ちょこちょこ近くに寄ってきてはうるさかったな。

「おい、お前、自分がようなってたらあかんで!女房ようせにゃぁ!

PS
別れた嫁となんとなく似てたっけ。

(写真)
親父とお袋も、バカ息子のこんな話に写真使われてると、思ってないよな。

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