どうしてやさしくなれないの
2014/12/4 記
清ちゃんから手紙がきたよ。
文字を書けないお袋の伝言が記してあった。
先日、服のサイズを教えろという伝言に、色々お袋に頼むのもためらったが、夏に送られた俺は冬服を持ってない。
年明け北海道の大雪の中を、痩せた今となっては、ウエスト20センチもでかいGパンに半袖シャツで出所するわけにもいかず、ありがたくサイズを記した手紙の返信だ。
まず、イラつく。
わざわざ購入することはない。
引き出しのコートを送ってくれたらいい。というのにそれがない。と。
そんなわけはないのだ。
ズボンはウェスト76センチ。
それくらいのがタンスにあるからそれでいい。と言っても股下は何センチか?と。
財布がないので送ってくれ。カードが入ってたらそれもそのままで。というと、みずほのカードでいいのか?
それも入ってたならそれでいいんだよ。
そして今は抜いてるであろうビデオのコンセントを差し込んどいてくれ。後は勝手にビデオが録画するからと頼めば、録画の仕方がわからない。と、俺はコンセント入れてくれと言ってるだけだー。
この前、岡山の親父とうまく行ってるようで保護司伝いにお父さんにも手紙かけ、なんて言ってたのに親父のことを書けば、連絡とってないから知らないと、喧嘩でもしたのか。
何なんだよ。この勝手な言い分は。
最後にわかりやすく、俺が必要なのはズボンと上着と財布の3つだけだからと言ってるのに、靴はあるのか。イラつきマックス。
何でわかんねーんだよお袋。年取っちまったなあ!そんなこと言ってねーだろ。
こう言ってるじゃないかと便箋に怒りのペンが走る。
挙句には先日の電報の、
「満期はあなたの決めたことだからよかったと思う」ときた。
どういう意味なのか、俺じゃなくそっちで決めなはたことじゃないのか!なんて事まで書いて発信しようとしたけど、少し落ち着いてやっぱりやめた。
お袋も歳をとったんだよ。これは仕方ない事じゃないのか。
そして今、この日記を書きながら読めば、お袋の質問は全て俺のことを心配しての、俺のためにという言い分じゃないか。
何を腹を立てることがあるのか。
反省してもう一度手紙を書き直したよ。ズボンも定規で測って、
「全便で書き忘れたよごめんね。
股下は70センチだ。コートが見当たらなければ何だっていいんだよ。どうせ羽田に着くまでのわずかな時間なんだから、それと財布はね……」
どうしてやさしくなれないんだろう俺は。
PS
ほんとに優しくしてやる前に逝ってしまったお袋。ごめんよ。
遺骨には毎日のようにお菓子をお供えしているが、こんな気持ちが届いてるわけがねえ。
生きてるうちにやらなきゃなんの意味もないんだ。