賛美の落とし穴
今回はちょっと趣向を変えて、賛美についてのコメントです。
キリスト教の歴史の中で、数々の賛美歌が作られてきました。
誰もが聞いたことのある「Amazing Grace」などの有名なもの、童謡になっているもの、表彰式の曲になっているものなど、様々です。
わたしが訳詞をしながら常に自分に問いかけるのは、「本当にその歌詞で良いのか」ということです。
賛美歌には、大きく二つあります。
一つは、自分の体験した神様を、詩的な表現を用いて賛美するもの。
もう一つは、聖書の御言葉を用いて賛美するものです。
どちらも、主なる神様を「正しく」賛美していなければなりません。
前者は感情的に、自分勝手に神様をこうだと決めつけてはならないし、後者もまた、正しく聖書を引用し、文脈どおりに適用しなければなりません。
日本語の賛美歌に、「聖戦をふれよ」という賛美があります。
歌詞はヨエル書3:9-10(4:9-10)そのものです。
元気よく勇ましい賛美歌ですが、この賛美のもとになっているヨエル書の箇所を見てみると、この呼びかけは、主なる神様に敵対する者たちに向けられた、主の挑発の言葉であることがわかります。
決して、主の民を「戦いに勇ましく出て行け!」と鼓舞するものではありません。
外国語の賛美を翻訳するとき、聖書のどこの言葉をベースにしているのかよくわからないことがあります。
例えば、God is the strength of my heartの歌詞の”God is my portion”という言葉は最初何のことかさっぱりわかりませんでした。
それでも、特に英語の歌はサラっと聞き流してしまうことが多く、耳に心地よければそれで良しとなってしまいがちです。
今回の翻訳の際に調べてみたら、portionとは分け前、という意味で、「主はわが嗣業」とか、「主は私の受ける分」などと訳されている詩編73編などにある御言葉でした。
元のベースの御言葉がわからないと、訳詞もまた曖昧な、何となくそれっぽい言葉の羅列になってしまいます。
なので、わたしが訳詞をする際には、必ず元の歌詞がどこの御言葉をベースにしているかを確認するようにしています。
今回なぜこんなことを書いているのかと言うと、現在翻訳している賛美の中に、大きなミスを見つけたからです。それが、You are the king of Gloryという賛美です。
この賛美は、1979年に作られたMavis Fordという人の曲だそうです。
その歌詞は、このようになっています。
V
You Are The King Of Glory
You Are The Prince Of Peace
You Are The Lord Of Heaven And Earth
You Are The Sun Of Righteousness
しかし、この歌詞、他のいくつかのサイトでは、こうなっています。
V
You Are The King Of Glory
You Are The Prince Of Peace
You Are The Lord Of Heaven And Earth
You Are The Son Of Righteousness
違いがわかりますか?
そう、4段目のSun(太陽)がSon(息子)になっているのです!
SunとSon、発音はとても似ていますので、間違えるのも無理はないですが、元の御言葉を見ればそんな間違いをするはずはないのです。
聖書のどこを見ても、Son of righteousnessという言葉はありません。
あるのは、マラキ書3:20(4:2)にある、Sun of righteousnessです。
一見、イエス・キリスト=義の子としても正しいような気がしますね。
それが恐ろしいところです。
実際、いくつものサイトでこの箇所をSon of righteousnessで歌っていますし、韓国語で歌っているサイトも、全て당신은 정의의 아들(あなたは正義の子)となっています。
英語の発音が似ていること、意味もそれなりに通ってしまうという偶然が重なって起こったミスです。
私も英語で聞いたときは特に気にしませんでした。
韓国語で聞いて、정의의 아들(正義の子)ってあんまり聞いたことないフレーズだな、と思って調べてみたら、なんと原曲の英語ですら混乱があることが分かったのです。
元となる御言葉をちゃんと確認していれば、このような間違いは起こらなかったはずです。
賛美は、雰囲気やノリで高揚して、恵まれた雰囲気になるためのものではありません。
美しい旋律だけでは何が心に浮かぶのか、聞く人次第になってしまいます。
美しいメロディーの反キリストの歌もあるでしょう。
賛美は宣言であり、告白であり、メッセージです。
メロディーだけでは賛美は成り立たないのです。
特に訳詞する場合、歌いやすさだけで何となく翻訳してはなりません。
元のメッセージを損なわないように、歌詞を良く吟味する必要があります。
適切な歌詞で「正しく」主を賛美しなければなりません。
まだ話したりないですが、長くなりましたのでこの辺で。
主を賛美しましょう!