御所坊における感染症対策の工夫と実践
感染症予防の取組として、お客さまはもちろん、スタッフ達の健康と安全を第一に、そして安心できる環境をつくっています。色々と壁や問題に突き当たりましたが、それを人脈や頭を柔軟にマッサージしながら構築してきました。その過程の途中経過報告です。
はじめに
2019年11月19日、中国温泉協会の総会に出席し「金湯賞」を頂戴した。
中国から行くべき世界の温泉地10選に有馬温泉が選ばれたのです。
これで中国からたくさんの観光客が有馬に来るだろう!
受賞した時、ふと昔の事を思い出した。
まだインバウンドのお客さまが少ない頃、北京にあるCCTVの番組に出演したことがあります。CCTVと言えば中国で一番のメジャーな放送局。
その人気番組に出演し有馬温泉のPRが出来たので、これで中国からたくさんお客さまが来るだろうと思いました。放送後すぐに 石原都知事が東京都が尖閣諸島を買うと言い出した事件で一気に中国からの旅行者は消滅しました。2012年の事だったと思います。
金湯賞をもらったものの、そんな事にならなければ良いけどなあと思った。
2020年1月末が春節祭の時期で、予約も順調に入っていましたが、1月中旬ごろから中国からの予約のキャンセルが入りだしました。
新型コロナ感染症の始まりです。嫌な予感が的中したなあと思いましたが、桜の咲く頃には終息するだろうと思っていました。思惑は全く外れてしまいました。
遮蔽版をつくったら良いやん!
桜が散っても終息しない。ゴールデンウィークには緊急事態宣言が発令されて休業要請がでた。
ところが「ゴールデンウィーク明けは営業しても良い。」と言われても、お客さまは皆無。しかし温泉は湧き出ている、止めると機械ものは何かと問題を起こす。そこで温泉だけでも始める事にした。かつての阪神淡路大震災の時と同じだ。とにかく動く事が重要だと思った。
飛沫感染防止に遮蔽版を設ける。安直にはビニールを垂らせば良い。
でも旅館のフロントには似つかわしくない。
自宅から御所坊に向かう途中に、面白い看板屋がある。器用で色々な要望に応えてくれるし無理もきく。
看板屋に寄って「透明のアクリル板はない?」と聞いて、2枚のアクリル板を確保し、一枚のアクリル板の下を駅の切符販売所のようにカットしてもらう事にした。
出入りの大工の棟梁に連絡して、購入したアクリル板に合わせて枠をつくってもらった。
定尺のアクリル板をそのまま使用したが、左右が多少あく。しかしお客さまとフロントスタッフとの遮蔽だから問題ないんじゃないかと考えた。
その後アクリル板が手に入らなくなった時期が来た。速やかに動く事が大事だとやっぱり思う。
その後、農機具屋に行って温室用のビニールを購入。送迎車の運転席とお客さまを乗せるエリアを遮蔽した。
ピストルを突き付けられるのは嫌だ!
お客さまに検温をしてもらっています。いち早く非接触の検温器を備えたのは有馬の芸妓さん達だったと思う。
コロナ感染症が始まって、温泉街の店はどうかなと芸妓さんの店「一糸」に立ち寄ったら、頭にピストルを突き付けられた!
わかるけど・・・何となく気分は良くないんじゃないかなと思った。
最近は、このように頭ではなく手首で検温されるけど、どうしたもんかと考えていたら、下記のようなものが見つかった。
登録しておけばスタッフの検温も記録される。お客さまはゲストとして表示され、記録が残る。
当時は結構な値段をしたが、今は半額ぐらいで手に入るみたいだ。早く動いたらすべてが正解でもない一つの例です。
しかしお医者さんのお客さまが「購入先を教えて」って言われて紹介したこともある。
消毒薬って何処にも売っていないやん!
消毒しなければいけない。
って言われても消毒薬が手に入らない時期があった。そこでお客様の紹介で製薬会社から直接消毒薬を手に入れた。
容器をネットで購入して、お客さまに適時必要な時に消毒してもらうのが一番良いと考えた。最初はプレゼントしようと考えたが、容器が手に入らない。価格も馬鹿高くなっている。何か中に入っているものの方が安い。
そこで貸し出しというようにしているが、消毒薬が行きわたってくると、無くなる率も少なくなって来た。
接触回数を減らしたらよいやん!
2020年の緊急事態宣言明けから日帰り温泉を始め、そして宿泊のお客さまを受け入れるようにする。接触回数を減らすには食事の提供回数を減らす。
かねてからお弁当の様な器を作っていたので、その器を使って料理を出す事にした。
どんな料理が出てくるのか、お客さまも知りたいだろうから写真を撮る。
そして部屋食で提供してみた。
非常に喜ぶ人と、そうでない人がいる。やっぱり人によって意識が違うと思った。7月に入りGOTOも開始されるという事で、食事の提供は普通の状態に戻した。
そして夏休みから年末まで、GOTO様々で賑わいを取り戻す事が出来た。しかしそれもつかぬ間、年末からGOTOが止まり正月明けからは氷河期を迎えた。
非対面フロントシステムを構築しよう
お客さまが少ない氷河期だが、ありがたいことに行政は色々な助成を設けてくれた。その多くはコロナ感染症対策の助成。
非対面フロントシステムって、何となくわかるけど、ラブホテルやビジネスホテルだと分かるが、そこそこのお代を頂戴する旅館としては難しい。
今までお客さまにチェックイン用紙に色々記入してもらっていたが、タブレットを使用して必要事項を確認してもらって、最後サインをしてもらうシステムを導入した。
このシステムはスタッフ間の接触も少なくし、言い違いや連絡ミスを起こさないというもの。つまりチェックインの際に夕食の時間やアレルギーの有無などを訊ねるが、それをお客さまに書いてもらって、それが自動的に必要な部署に配信されるというものだ。
でも、昨年のGOTOの時みたいなことが、今年は未だ起こっていないので、どれだけ有効かは確認が出来ていない。早く活用されている現場を見たい。
スリッパが問題だって?
お客さまの中には非常に神経質な人もいらっしゃる。スリッパを指摘された。紙のスリッパに変えたら良いと言って下さるが、そう簡単にはいかない。平らな場所の移動だと紙のスリッパでも問題はないが、御所坊は階段はあるし、風呂上りに足が濡れているとスリッパがボロボロになってしまう。
そこで病院や歯医者さんなどで見かけるスリッパの殺菌庫を導入する事にした。でもたいがい真っ白け。どこに置いても目をむいてしまう。そこで前述した面白い看板屋に登場を願った。
真っ白なスリッパ殺菌庫に艶消しの黒のシートを貼って、透明なガラスには車用のスモークフィルムを貼った。
殺菌庫を開け閉めすると青い紫外線ライトが付く。玄関のフロント横に置いているがワインセラーみたいに見えて、我ながらええアイデアだったと思っている。
でも、何となくおかしい。おかしいというのはコロナ感染症対策の助成金を活用して購入したのだが、シートやフィルムを貼った費用は助成されない。おかしいと思ったがしかたがない。
小さな10足入るスリッパ殺菌庫を男女の脱衣場にも設置をしました。ようするに男女それぞれ1度に10人が最大定員ですよ。という事にしている。ご理解とご協力をお願いいたします。
職域接種と缶バッチ
企業などでワクチン接種を行う事の出来る職域接種の制度が発表された。
有馬でも一早く行う事になった。意外とこうゆう時は一致妥結仲良くなる。一番最初に起こった問題は、有馬で何人の職域接種を行うか?それぞれの宿や施設にアンケートを取り、1800人いや2000人となった。
いかにスムーズに接種を受ける人を並ばして、当日のドタキャンを無くすかが次の問題。我社のスタッフを何人かキャンセル待ちの状態にして、ドタキャンがでれば、待機しているスタッフを会場に行かすという事をやった。
ワクチンの都市伝説が流れ、ワクチン接種をためらう人も出たが、意外とスムーズに行き、接種会場では若い人がほとんどだった。僕みたいな年寄りはもうすでに2回目の接種を終えている。また有馬の住民は高齢者率神戸市一なので多くの有馬の町民はワクチン接種を済ませていので、有馬温泉の関係者のワクチン接種率は90%を超えたと思う。
それを何とかうまきアピールしたいと考えていたところ、神戸芸工大の学生さんたちが、「デザインの力で有馬温泉を応援しよう!」という事で、接種済みの缶バッチをデザインしてくれた。
レストランが殺風景になってしまった・・・
「ソーシャルディスタンスを確保しろ!」「1m以上の間隔を開けろ!」と言われ出した。
食事処の“閑”のテーブルを減らさざるを得ない。
減らしてみると殺風景になってしまった!
コロナが去れば、またテーブルを戻すか?
それかテーブルを大きくすれば、ゆったり感が出てプラスになり、殺風景が無くなる。しかし満室になった場合、テーブルが足らなくなってしまう。
「30分に一度換気を行うように!」と言われ出した。
幸いというか、食事処には締め切るドアがない。その為、換気は問題ないのだが、冬場 足元が冷えると言われていた。「換気をする為に・・・」と言いながら冬場を過ごしたが、なんとかできないか?
これは妙手だと思う
御所坊の料理を提供するのに1名分、横80㎝、奥行き40㎝のスペースが必要だと考えている。
そうすると既存のテーブルでは狭い。つまり料理を提供するスタッフが困るケースが多い。ではどれぐらいの大きさがあれば良いのだろうかと考えた。
朝食を提供する場合、どうしても一度にすべての料理を並べるケースが多い。御所坊では朝食に湯豆腐や焼海苔を出すので、そのスペースも確保しなければいけない。
と言って、大きければ良いかというとそうでもない。サービスする係の手が届かない。必要十分な大きさを考えなければいけない。
そうすると横80㎝、奥行きが40㎝で2名分だと合計、奥行きが80㎝。それに真ん中に鍋などを置くスペースを20㎝と考えると、奥行き100㎝のテーブルがあれば良いという事になる。
しかし定尺というのがある。たいていは90㎝。ネットでテーブルを探しても奥行きが100㎝のテーブルは市販されていない。
だったら作るか!
同時に御所坊のお客様は1組何人で利用されているか? 調べてみた。
2名以下が60%を超えているじゃないか!?
だったら全て2名用のテーブルをつくり、組み合わせる事で4名や6名にも対応したら良いんじゃないかと考えて、平面図から配置を考えた。
すると2名ばかりだと8組に対応できることが分かった。
この状態でも向かい合わせ、左右とも1m以上の間隔があく事になる。
かつては4名用のテーブルもあったので4名用に2名が座ったとすれば7組しか対応できなかったことになる。さらに皆が4名用のテーブルで2名使っているのに、自分たちは2名用だと差別されたように思うかもしれない。
配置のメリハリだけで4名用と2名用のテーブルがあったかもしれない。2名で良いのだと確信した。
次に冬場の足元対策。
テーブルにスカートの様に布団を巻き付け、ホームこたつのようにしたら良いんじゃないかと考えた。
・・・でもヒーターを取り付けて、8テーブルいっぺんにスイッチ入れれば電気容量が持つか!?
テーブルを移動する時、線が邪魔になるのだはないか!
それを解決した!
どう解決したかは、実際お越しになり 確かめて下さい!
キーレスを導入したけど・・・
ご夫婦などでお越しの際は温泉の利用時間が違うので便利だと考え、御所坊ではもともと部屋のカギを2組用意していた。
しかし部屋のカギは色々問題はある。
コロナ感染症の時代に入って不特定多数の人がさわるアナログの部屋のカギをキーレスに変えた。カードでも暗証番号を入力すれば開く。
カードの場合はお客さまの人数分発行しなければいけないし、紛失の場合いがいと高くつく。だったらお客さまの電話番号の下4桁ぐらいを暗証番号にセットしておけば問題はないんじゃないかと考えた。そして一部の部屋に導入して試してみたがお客さまから評判は良かった。
そこで全ての部屋をキーレスにした。すると問題を発見した。
キーフォルダーに記載されている部屋番号でスタッフはお客さまの名前をよんでいる。最近は働き方改革でスタッフの勤務も朝晩で交代したり、一人のお客さまをずっと見ているわけではない。
必要な時は「お名前は?」と聞けばよいが、例えばトラブルがあったとする。スタッフが入れ替わり「お名前は?」と聞けば怒りは増幅されて炎上するのではないか?!
これを何とかする方法はないだろうか?
DXなアイデアじゃないの?
まず、デジタルとITってよく言うが改めて調べてみた。デジタルは数字。情報を数字で表現する事。ITは情報を活用できる状態に活用する事だそうだ。
車のスピードメーター。ビューンと針が回る車に憧れたが、あるときそれが数字で増えていく車に乗った。何となくしっくりいかなかったが、今乗っているリーフ。スピードメーターはアナログの様に見えるがデジタルで針が回る状態もデジタルで表現されている。
未だに使ったことがないが、車を駐車スペースに近づけ、何かのボタンを押すと勝手に車が駐車する・・・らしい。一回だけ試しかけたが怖くて気持ち悪いので使用していない。しかしこれはIT技術というのだろう。
そうするとDXは・・・
「DX推進ガイドライン」では、DXを「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」と、より詳細に定義しています。
・・・という事らしい。
客室の扉をキーレスにしたらお客さまを識別する事がしにくくなった。ビジネスホテルではそれでよいと思うけど、旅館ではもう少しお客さまの名前を呼べる方が良い。
また“おもてなし”はお客様の求める事を先回りして行うことといえる。
するとガイドラインを例に考えると。
ビジネス環境の変化 ⇛ 働き方改革でスタッフが入れ替わる・コロナ対策で接触回数を減らすな等々
顧客や社会のニーズ ⇛ おもてなし・安心安全等々
製品やサービス、ビジネスモデルの変革 ⇛ 人手不足やスタッフが入れ替わる事でいわゆる“おもてなし”や従来のサービスがしにくくなってきている。それを逆まわるさせるシステムの構築。
業務そのものや、組織、プロセス、企業文化を変革し、競争上の優位を確立する事 ⇛ 行けるんじゃない!(笑)
このアイデアは現在進行中で、補助金なども活用しながら進めている途中なので、まだ話は出来ないのですが、色々取り組みを行っています。
このnoteは現在製作中のホームページを補完する為に始めました。