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海運市況の展望2025
2024年の海運市場は、地政学的リスクやパナマ運河の渇水によるトンマイル需要の増加、新造船の大量竣工など、様々な要因が複雑に絡み合う中で推移しました。2025年に向けては、これらの要因に加え、世界経済の動向や環境規制の強化が海運各セグメントの市況に大きな影響を与えると予想されています。
LNG船の新造船竣工増加
LNG船市場では、2024年に新造船の竣工が大幅に増加し、前年の倍となる約70隻が就航する見込みです。この急激な供給増加は、2022年のロシアによるウクライナ侵攻後の欧州向けLNG需要増加を見越して発注されたものです。しかし、LNG生産プロジェクトの遅延や需要の低迷により、新造船の供給過剰が懸念されています。
• 2024年上半期のLNG取引量は2.02億トンと過去最高を記録
• 新造船の大量竣工により、運賃市況は2025年にかけて弱含みの傾向
• 2026年中盤まで新造船の竣工ペースは高水準で継続する見通し
• エネルギー効率設計指標(EEDI)の厳格化により、新造船の環境性能向上が求められる
喜望峰迂回ルートの影響
紅海情勢の悪化により、多くの船舶がスエズ運河を避け、喜望峰経由の迂回ルートを選択しています。この迂回により、アジア-欧州間の航行日数が約21日間延長し、船腹の逼迫や運賃の高騰につながっています。主な影響は以下の通りです:
• 輸送コストの増加:燃料費、保険料、警備費用などの上昇
• スケジュールの遅延:航行時間の長期化による到着遅れ
• 運賃の高騰:7月には上海-ロッテルダム間で40フィートコンテナ1個あたり8800ドルまで上昇
• 船腹供給の逼迫:迂回による船舶の長期拘束
• 環境への影響:航行距離の増加による排出量の増加
この状況は短期間では解消されず、2025年以降も継続する可能性があり、世界の物流と経済に大きな影響を与え続けると予想されます。
自動車船の輸送需要動向
2024年の自動車船市場は、船腹不足が継続する中で堅調な需要が見られました。世界の完成車輸送需要は8300万台から8400万台に達し、そのうち海上輸送が必要なものは1550万台から1600万台と予測されています。日本からの自動車輸出台数は410万〜420万台程度と予想され、前年並みの水準を維持しています。
2025年に向けては、以下の要因が自動車船の輸送需要に影響を与えると予想されています:
• 中国の自動車輸出の動向:近年急増してきた中国からの輸出量が注目されています
• 米国経済の底堅さ:コロナ禍での買い替え需要の潜在的な回復が期待されています
• 地政学的リスク:中東情勢の悪化や米中対立の影響に注意が必要です
• 環境規制の強化:EU-ETSの導入など、環境対策コストの増加が予想されます
ただし、新造船の大量竣工が2024年度後半以降に本格化するため、2025年以降は需給バランスが徐々に改善される可能性があります。
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