鹿児島県天城町を踏破 その2<日本全市町村踏破(制覇)>
2018年2月10日。昼前に、天城町の徳之島子宝空港に降り立ち、天城町、徳之島町、伊仙町と、概ね時計回りに徳之島を周って、再び天城町に帰って来た。
午後六時を回り、もう暗くなって来たが、本日最後の訪問スポット「戸森の線刻画」である。
線刻画は、英語ではペロトグリフと言われ、主にその土地で文字が使われるようになる以前の、先史文明の遺物として注目される事が多い。特に、日本では、「超古代史」の文脈で使われる。
その中には、北海道の手宮洞窟やフゴッペ洞窟のもののように、本当に古代のものもあれば、提唱した人が無理矢理解釈したとしか思えない怪しいものもあるのだが、ともかくも、古代に関するもののことが多いので、ちょっと期待して訪ねたのである。
そして、ここ戸森のものは、江戸時代のもののようである。その根拠は、江戸時代以降に普及した布帆を使った船が描かれているから、とのこと。
なるほど、本物ではあるのだけど、近世のものということで、何だか微妙な気分になったが(笑)、江戸時代にもこういうものが刻まれていたというのは、初めて知った。奄美群島では徳之島でしか確認されていないという事で、そこに多少とも謎もある。
戸森の線刻画は、第一、第二、第三と、離れた三つの岩に刻まれている。手前にあるのが第二で、中央が第一、奥が第三。発見された順番なのだろうか。
まずは第二線刻画。十隻の船と九本の弓矢が描かれており、一部の船には屋形状のものが描かれていて、注目されているとの事。
第二線刻画、手前にあって写真でもはっきりと分かりやすい船の絵の拡大。
次に第一線刻画。こちらには九隻の船と四十八本の弓矢が描かれている。最も大きく描かれた船の帆は、縦線で描かれており、これは江戸時代以降に普及した布帆を使ったものだと考えられるとのこと。また、矢じりの描写に三種類あり、透かしが表現された矢じりもあって、弓矢に対し一定以上の知識を持った者が描いたと考えられるということだそうだ。
これが、縦線で表現された帆を持つ船。
その下にも、船が大きく描かれているが、帆の形式が異なる。
第三線刻画は、地中保存されており、ブルーシートが被せられている。現物が見られないのは残念だが、岩に刻まれた線刻画は、空気に晒せば次第に風化して消えて行くので、保存方法としては正しい。第一、第二についても、現物は資料館に収蔵するなどして、現地にはレプリカでも置く方が良いだろう。
線刻画を見終え、空港近くの宿に着いたのは、午後7時頃。すっかり夜になってしまった。今回の宿は、民宿「平和の森荘」。
いかにも民宿らしい、味のあるたたずまい。
「平和の森荘」の夕食。島野菜がふんだんに使われている。
出色なのは、ノゴキリガザミという、熱帯・亜熱帯の内湾や河口などの汽水域に生息するカニの汁である。日本産のものは非常に珍しく、ほとんど市場に出回る事もないのだが、この宿では、目の前の干潟で獲れるものを出しているそうだ。ノコギリカザミを食事に出す宿は、日本でもここだけではないかと、宿の主人が語っていた。
翌朝、宿の庭から、その干潟を眺めてみた。遠くリーフ(珊瑚礁)の外縁で砕ける波。洋上に一定間隔で並ぶのは、滑走路へと続く空港の施設の一部だ。
朝食を食べ、「平和の森荘」を出発。離陸まで多少時間があるので、もう少し島をドライブする。宿の玄関には、ノコギリカザミや伊勢エビ、ウミガメなどが飾られていた。ウミガメの捕獲は現在では基本的に禁止されているので、昔獲ったものか、偶然漁網に引っ掛かり死亡してしまったものなのだろう。
島の北部の道は、マラソン選手・高橋尚子が練習に用いていたことを記念して、「尚子ロード」と名付けられている。
ちなみに、この尚子ロードの記念碑の場所が分からず(県道に面して立っているのだが、自動車で走行していると見逃しがち)、路地に迷い込んだ際、路上を歩く青い鳥を発見した。近付くと逃げてしまうので、やや遠くから撮影している。
さらに、島の北西端、ムシロ瀬へ。
南西諸島の奄美群島以南の地質は、珊瑚礁由来の琉球石灰岩が主体であり、徳之島もそうなのだが、ここでは珍しく、火山由来の花崗岩が露出して、それが波に洗われ、奇観を造り上げている。
なお、徳之島の北西65kmの沖には、硫黄鳥島という火山島がある。天気が良い日には、徳之島からも見えるそうだ。硫黄鳥島は行政上は沖縄県に属し、かつては有人島であったが、戦後、噴火の為に全島民が那覇や久米島や移住し、無人島になった。ムシロ瀬も、同じ火山脈にあるのかもしれない。
鹿児島県全43市町村のうち、39市町村踏破、残り4市町村、達成率90.7%。
九州・沖縄全274市町村のうち、255市町村踏破、残り19市町村、達成率93.1%。
日本全国1741市町村のうち、1715踏破、未踏破26、達成率98.5%。
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