
お花見とタケノコ掘りとオヤジのロンピー
今年も、実家の庭にある、枝垂れ桜で、お花見しようよ!と、私の呼びかけに応じて、姉ちゃんが塩梅よく日取りを3月27日と決めてくれた。
天気もよく、東海3県では、桜は「満開」とのこと。
早朝から電車に乗って、出かける。草取りが基本目的で、今日のお花見はどうなんだろう?と思いつつ。
電車に乗っていても、車窓から見える景色に、サクラが綺麗に咲いている。やや朝日がまぶしい。
お花見
家につく。作業着に着替えて、今日も草取り。オババが、昼ごはんの早弁は、やめておくようにと。お昼ちょい前に、姉が五平もちを買ってきて、ポトラックを開くというので。
昨年は、廊下に机をだして、姉と、オババ、私と3人で、静かなお花見でした。天気が曇りだったのかなあ。
今年は、仏壇のあるお座敷にお雛様が飾ってあって、昨年使ったテーブルが、お雛さまの箱が積んであるんで、どうするんだろうか。
11時ぐらいに、姉と姉の旦那さんの車が到着。
日当たりのよい、玄関前の庭先で、旦那さんと姉ちゃんが、キャンピングテーブル、折り畳み椅子をだして、テーブルの上を布巾で拭いたりして、セッティング。愛犬ココスも参上。
私が草取りをしている間に、オババが菜花の御浸しの胡麻和えにアイコトマトを切って飾ったもの。姉のお手製の菜花の御浸し。昆布ときゅうりの浅漬け。そして、お店で頼んでいたという串に3個お団子がついた五平もち。
片づけが簡単に済むように、紙のトレイ、プラスティックの使い捨てコップ、割り箸、お手拭きのあり合わせを並べて、いざ、お花見会。
飲み物は、ペットボトルの緑茶。あまりに綺麗な黄色をしていたので、「これって、ビール?」と訊いてしまった。「緑茶、緑茶!!」
安心した。ビールは、飲めんのだ。
昨年のお盆のときのメンバーで、一人と1匹増えただけでも、賑やかだし、日差しを浴びながら、野外でのお花見は、やっぱりいい。
「花より団子」というもので、開始後、すぐに黙々とそれぞれの紙皿に、菜花のそれぞれの御浸し、漬けもの、五平もちをよそって、たわいのないことを話ながら、食す。
「こないだ、どうやったの?」オババ。
「よかったよ!」姉ちゃん。
旦那さんが合唱団の練習に通ったというオペレッタの発表会があって、そのことらしい。
私、「そんなに素晴らしいものなら、『ビバ、合唱』というラジオ番組があって、たまに聴くけど、ローカルなものでも取り上げてくれるみたいやで・・」
旦那さん「有料やったし、著作権もこともあるでありえんわ」
なるほど。
オババの薄味菜花の胡麻和えが、私にはちとしょっぱかった五平もちのタレを中和してくれるようで、オババの胡麻和えをやたら食べていた。
ワンコ、ココスに時折、姉ちゃんが声をかけると、ココスがジッと、話す人の目をみる。旦那さんが声をかけると、今度は、旦那さんの方をむいて、じっと目をみる。まるで、人間のようだ。小学校の頃、先生の話に夢中になると、先生の目を見つめていた。先生が、「あなたは、話す人の目を見つめて聴くのですね」と、褒められたような記憶が蘇ってくる。
あっという間の時間で、お開き。姉ちゃんが「あっ、写真撮るの忘れた!」
「ゴミ袋!」で、ゴミ袋を持って行き、後片付け。
私は、「花より男子」を思い出す。今年になって、初めて、日本版を見たので。韓国版だったら、「F4」と呼ばれる男性組だったけど、日本版は、なんだったけ。
風もなく穏やかな日だったので、何となく、楽しかった。
それから、また、草取りを続ける。
直帰するつもりが、時間に縛られずに、おちついて、草取りしたいなあと、思い、「今日、泊まっていくわ」に変更。
オババと二人きりになると、暗い、現実的な話ばかりでてきてしまって・・。私が、ADHDなので、話がとびまくり、会話にならない。オババも耳が遠いので、聴こえないから、勝手なことを話し始めて。
打開策は、鰹節削り。風呂の掃除。
明日は、一日の寒暖差が大きいという天気予報を聴いて、上下仕事着用ヤッケのまま、シュラフカバーに、厚手の毛布を一枚借りて、寝てしまう。
翌日、6時には、目が覚めてしまい、カタカタ音をさせず、灯りもつけず、薬をのみ、今朝の朝食用のコロッケパンと、昨日の残りの五平もちと、姉の菜花の御浸しをレンチンして、先に食べていた。すると、オババが起きてきて、表のカーテンを開けたり、入れ歯をいれて、掃除機をかける。
朝は、寒いので、ストーブの石油をいれたり、豆炭を起こすのを手伝った。豆炭は、節電のため炬燵に使っている。
石油用ポンプがいかれていて、壊れかけのポンプを昨日姉ちゃんに捨てられ、「これ使え!」といわれた、新しいポンプもなぜだか不調でダメだった。
ゴミ袋をあさり、昨日捨てたポンプを見つけて、オババが朝食を食べている間に、黙ってストーブのタンクに石油をいれる。
豆炭炬燵も、炬燵に手を入れると、温かくなっていた、よかった!!
しばらくやってなかったので、塩梅がわからず。独身の頃は、七輪で、火をおこして、豆炭をいれて、団扇をあおりながら、煙モクモクさせながら、起こすのが、日課だった。薪も手に入らなくなって、七輪もこわれて、卓上ガスコンロを外に出して、専門の底に穴のあいた片手鍋みたいなものに、豆炭3個をいれてコンロの上において、火が着火するまで、気を付けてみている。
タケノコ掘り
姉がやってきて、「あんたがくれたポンプどうにこうにも使い物にならんわ」とオババ。姉がおかしいと、水を汲んで試してみてもビクともしない。不良品なのか。
姉が「そろそろタケノコでておらんやろか」と二人で、タケノコ探し。姉が一つ発見。目印をつける。「マリにほらせるわ・・」
オババ、「買い物に連れてって・・(卵、石油ポンプ、ロンピーのリストは、私が書いた)」昨日から、変な音がゴン、ガーンとする。ハクビシンでも入り込んでいるのとちゃうやろか。壁を叩いても、別に異常なし。私、「オヤジに怒鳴られる夢をみるねん、そこで、末のオジサンが出てきて、まあええやん、ニイ~(兄貴)となだめる夢やわ」(オヤジの霊かもしれん)
姉、「私は、おじいさんの夢なんかみいへんで。霊と言う人もおるかもしれん。そういう人はそういう人」
「10時ぐらいにくるわ」
しかし、待てどもこない。
オババが準備して、ダウンの上着をきて。お昼近くになってもこない。徐々に気温も上がってきたので、ダウンから薄手の上着に着替えて待つ。
次に、杖をついて竹藪の中を歩き、タケノコ探しをし始める。私は、ついて回り、「ここ!」「ほら、そこ!」と言われた場所に、記しの棒をさして、後につく。姉は、集金に来るといっていた、業者がなかなかこず待機。業を煮やした姉は、張り紙をして、車で、下の姪のマリと、ワンコを乗せてやってきた。
オババは、「マリは、タケノコ掘りたいだけの子やで」と、姉が来る前に農機具から、タケノコ掘り用の鍬をだし、「水路につけておいて!」と。
祖母の葬式以来、顔をみなかった、マリ。写真でみたのは、成人式の写真だけ。「いい娘になったなあ・・」と、心で思う。
「あんた、整形しとる?」
「プチ整形したいけど・・マユと???」と、軽い会話。
「おねえちゃんの声とよう似とるね」「めっちゃいややけど、お姉ちゃんの声と似取るって言われると・・」
「おばさんね、アニソン好きやねん。中川翔子さんて、すごいね!!」
「アニアカ(アニソンアカデミー)聴いとった。声優さんて、大変やね」
マリは、随分昔のことを・・と呟く。(養成所時代はマリの黒歴史とか)マリにとって、随分昔と、オバサンにとっての、昔は、ちいと前なんや。生きとる長さからしたら、逆算すると、ちいと前に過ぎん。12年間、喪だったから。
わたし、オバの戯言を聴きながら、掘り専のマリは、クワを振り上げ、記しのつけたタケノコを掘り始める。やばくなったら、「おかあさん、やって!」
次々、掘っていく。
収穫は、おそらくシロの部類で、5本ぐらい。
姉は、一つとりあげ、オババに「味噌汁でも作ってやりな!」
私は、タケノコの破片を見つけて、洗って、一口口にいれてみると、「う、うまい!」
マリ、「もう、食べているんですけど・・・?」私の異様な姿に反応。
それから、ワンコともども、3人、車で、買い出しに出かける。
一人だけ残された私は、これは、刺身だな。丁寧に皮をむいて、半分は残しておこうと思ったが、生の掘りたてのタケノコを魚の刺身を切るように慎重に一口大に切って、醤油を少しかけただけのものに、箸がとまらなくなってしまい、全部食べてしまった。どちらかと言えば、あく抜きをしたタケノコで、ご飯、チラシずし、味噌汁よりも、なるべく人の手を加えないものに、真の旨みがあると。それと、1年間、庭木の手入れ、竹林整備を専門書を読み、ノコも買い、竹伐り修行と、寒くなって、オゾイ仕事(竹垣周辺のツタとか、邪魔なツバキの木などの片づけ)をやるなかで家族とのふれあいがあっての、初物が味わえる喜びをひとしおに感じた。
それから、浮遊霊のように、竹藪に入り込んで、更にタケノコ探しを始める。
タケノコの本日の収穫は、5本で終了か。
竹藪の隅っこのほうに、捨てられた玉ねぎから、芽が出ていたものをみつけて、花壇の片隅に、クワで適当に畝切りをして、その玉ねぎの芽を植えておいた。
オヤジのロンピー
また、竹藪浮遊霊になり、探しはじめると、オババが呼ぶ声がして、娑婆にもどされたような感覚。
「ロンピー買ってきたで、こんな体に悪いものをと、言われたわ」
とどのところ、コンビニにあったらしい。
ロンピーは、オヤジの愛モクだった。オババは、なんかしらんけど、香りがいいというて、おじいさんがロンピー吸ってた・・と。
病気になってから、禁止されて、それでも、従弟が用事があって訪ねてくると、タバコないかとねだっていたようだ。
オヤジの好きなもの、お酒とタバコ。
お酒は、お正月にだけ、オババが濁り酒のワンカップを買っておいて、オヤジが少し飲んで、「ああ、うまい!」と言ってたそうだ。
仏壇にロンピーをお供えして、チンして。一本中庭の外で、しゃがんで、くゆらすと、ふと、オヤジの匂いがした。
タケノコ発見に喜びを感じて、もう、1泊していくと、言っていたが、なんかオヤジが背中を押してくれたような気がして、帰路につくことに決めた。もし、そのまま泊まったら、タケノコシーズン中、ずっと居座ってしまい、帰れなくなりそうだったから。
姉ちゃんに反省メールをしていたら、ふと気が付いたことがあった。昨年から、本当の桜のお花見ができるようになって、2回目。12年間、折り紙で折った桜、バラの花で、遺影にかざり、室内お花見を続けてきた。
そんな自分自身の少しの一歩が、大きな一歩のような気がする。
了