個別銘柄の投資術_一見悪い決算を正しく評価する_#01
個別株投資をしていると、好決算を出した企業が翌日から株価急落、その逆で、悪い決算が出たのでぶん投げたら株価上昇というような場面に遭遇することがあると思います。
後者の場合、その要因についてはいろんなパターンがありますが、時折、「一見悪い決算だが実はそうでもない」場合があります。
このような場合、ぶん投げを拾うことで、その後、銘柄が再評価されたときに大きなリターンを得ることができます。
最近グリッチという言葉がtwitterでも話題にもなったので、私の最近の経験から具体的な事例を記事にしてみます。
Case1. ファーマフーズ20年7月期第2四半期決算
まず最初はファーマフーズ[2929]の例です。
Case1-1 決算の内容
2020年3月6日に第2四半期決算が出て、赤字幅拡大。だけども同時に通期上方修正+初配の発表がありました。
第2四半期決算は赤字幅が拡大
でも通期上方修正
売上は8億円増えるというのに、営業利益据え置きという控えめな数字...
中身を見ると、赤字の原因が通販事業における積極的な広告投資によるものだとすぐにわかりました。
前年までと異なる巨大な赤字の額を見て、これ本当に黒字にできるのか?という不安を覚えたものです。でも、配当を今年から出すということは、ちゃんと黒字を達成できるのでは?上方修正した業績達成にも会社として自信があるのではないか?とも思いました。
万が一、黒字を達成できなかったので配当(初配)やめます、ということになったら投資家の信頼を大きく裏切るわけで、そんなリスクを抱えて配当開始を発表するだろうか...?
とはいえ、不安が2割、信じたい気持ち8割くらいでした。
Case1-2 決算発表直後の値動き
この決算は多分悪くないという私の思いとは裏腹に、決算の翌営業日の3/9は、日経平均が-5.1%の日だったこともあり、寄らずのS安(990円→840円) という結果になりました。
その後、株価はどうなったかというと、10日寄り付き後に反転、翌日も上昇、その後急落というボラの大きな値動きを展開しました。
Case1-3 ぶん投げを拾ってみる
寄らずのS安&コロナでTwitterやY板でも悲観的な声が実に多かった中、私はひっそりとS安後のPTSを狙いました。寄らずのS安という状況から、もうちょっと下がってきそうだったので。思惑通り引け後のPTSも弱く、840円からのS安である690円の手前で1600株購入することができました。
その株は2日後の3月11日にすべて売却し+30万円。コロナショックで資産が減りゆく中で、当時の株式資産の1/6以上を投資し、資産を5%増やすことに成功しました。
利益以上に、得たものが自信です。決算の数値を見て大きな流れと逆の取引をしたというのは実はこのときが初めての体験でしたが、この成功体験は非常に大きな自信となり、大きな糧となりました。
Case1-4 半年後の答え合わせ
決算直後はボラも大きいので正解/不正解の判断は難しいですが、このあとファーマフーズの業績がどういう軌跡を描いたかを見ることが答え合わせになると思います。
結果は8月に通期上方修正(2回目)+増配を発表。やはり第2四半期決算の内容(赤字拡大だけど売上は増えていて通期業績の上方修正)は、「買い」が正解でした。
20年7月期決算
Case2. PCA(20年3月期決算と21年3月期業績予測)
続いてPCA[9629]です。
この企業は、20年3月期はWindows入れ替え特需で好決算で2020年のうちから話題になり、好業績を背景に株価が高騰したものの、21年3月期は特需が終わり売上が落ちるという市場の予測から、株価急落が止まらない状況になっていました。そこに輪をかけてコロナショックが訪れていました。
個人的には、コロナショックと格闘していた3/13のあの日、資産の半分以上入れていた思い出深い銘柄です。
Case2-1 21年3月期業績予想の内容
4/27に決算が出ました。20年3月期は前述の通り特需で終了。
一方、21年3月期の業績予想は、市場の予想通り減収減益という内容でした。
Case2-2 決算発表直後の値動き
この決算発表後の株価はというと、PTSは下げ、翌日4/28は、下げスタートながら、結果的には+10.3%(3350→3695)というものでした。※ちなみにこの日の日経平均は-0.1%
減収減益の予想でも、こりゃいいぞ、と思ってPTSや寄りで買えた人は、+10%の値上がりを取れたということです。
ちなみにその後、3300円以下で買える日は、2020年に一度も訪れませんでした。(2020年10月5日現在)
Case2-3 中身はどうだったのか?
21年3月期の業績予想は、売上前年比-6.9%、営業利益前年比-26.9%という内容ながら、なぜ株価が上がったのか?
1つの理由は割安(4/27当時でPER12.27)だったからかもしれません。
もう1つは業績の見通しに対する妙だと思っています。
20年3月期の売上構成を見てみると、ストックビジネス(運用+クラウド)の成長が見て取れました。
以下は4/30発表の説明会資料ですが、この数字は、過去の説明会資料と4/27の決算短信から、4/27の引け後に拾うことができる内容です。
この推移を見れば、製品事業の特需終了ということに注目が集まっていましたが、実はその裏でクラウド事業が成長継続で、運用とクラウドというストックビジネスの構成比が高まっていくことは明白ですよね。
となると、21年3月期こそ減収減益予測ではあるものの、ストックビジネスがこれまでの成長率を維持して成長していくということを前提条件として考えれば、その営業利益は21年3月期の20億円を底として、その後この企業はクラウド事業という新たなドル箱事業をベースに新しい成長ステージに入っていくことが期待できるという見方ができたはずです。
これが決算翌日に10%も株価が上がった理由と考えます。
一方で、発表後のPTSや翌日の寄りで安値で投げた人がいるというのも事実です。ぶん投げた人と、それを拾った人。数字をどう見るか、が勝負の分かれ目でした。
Case2-4 3月後の答え合わせ
こちらも半年後の業績(21年3月期第2四半期決算)を見て答え合わせとしたいと思いましたが、タイミングが悪いので第1四半期決算で見てみます。
以下の通り、減収減益。ですが決算翌日の株価は+9.8%上がりました。もうこれが答えでしょう。減収減益でもクラウド事業が成長していることが評価された、と見ています。
株価は発表前終値3870円から翌日7/30に4250円に高騰。
クラウドが25%成長し、ストック収入の構成比が66%という昨年と全く違う構成に!
まとめ
上記のファーマフーズ、PCAの例は、共通点があります。
それは、決算の上辺だけの数字だけ見ている人が多く、本質まで見抜けている人が少ないのでは?ということです。
このようなケースでは、決算直後に本質を見抜けた人に優位性があり、個人投資家が株価の判断がつかない状態で売買するPTSや、翌日の寄りでぶん投げを拾える可能性があります。
個人投資家のリテラシーが年々高まってきたとはいえ、こうした事は度々起こりえます。
誰が見てみても良い数字、実際に中身も良い時は、こうしたチャンスは生まれません。大衆の見立てと本質的な企業価値に大きなギャップが存在するとき、チャンスは大きくなります。
一見、悪い決算や、パッとしない来期予測であっても、中身はどうだろう?と目を光らせることで、大きなチャンスに出会えるかもしれません。
■決算の上辺だけの数字だけ見ている人が多く、本質まで見抜けている人はまだ少ない。
■大衆の見立てと本質的な企業価値に大きなギャップが存在するとき、チャンスは大きくなる。
なお、後に知りましたが、成長企業の初期に見られるような一時的な不調(グリッチ)を狙うという投資手法もあるようです。
PSR分析の父として著名なケン・フィッシャーの著書では、成長企業のグリッチを見抜いて、割安で有望株を狙うやり方が紹介されています。
ファーマフーズの例はまさにこれに該当するでしょう。ただし、不調ではなく、一見不調に見えた、というのがミソです。大衆がそれを不調をみなした場合に、本質的価値とのギャップが生まれ、それが大きな投資チャンスとなるわけです。
以上、投資術に関する記事でした。この記事は投資有無に関わらず、類似した事例を見つけたときに更新していきたいと思いますが、また読んでみたいと思った方は、是非💗ボタンのクリックをお願いいたします。スキの数が次の記事へのモチベーションになります。
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