自己中心的な人間中心設計者家
某社からサービスデザインに関する仕事をいただいている。この「デザイン」界隈にもいろいろな流派があることに最近気がついた。
一部のサービスデザイン界隈で最近バズワードとなっているのが
「デザイナーは顧客だけでなく、地球環境のことも考えてデザインしましょう!」
「今のユーザだけでなく百年後のユーザーのことも考えましょう!」
という分母をやたらと大きくした崇高な理念である。
たとえばあるカンファレンスで、某社のデザイナーは「カスタマージャーニーマップを作る時に、必ず地球環境という項目を入れましょう!」と言っていたそうだし、別のデザイナーはビジネス、テクノロジー、ユーザに加えて環境を考慮しましょう、と言っていたのだそうな。
これはとても興味深いのだが、そうした分母が大きな言葉を語っている人に「それは具体的にどういうことですか」と聞いてもまともな答えが返ってきたことがない。
一番最近この「環境に配慮するのがデザインです!」的な話を聞いたのは、ある研修でのことだった。その研修はおそらく地球環境に配慮していたと思うのだが、講師の目の前に座っている何十人もの「エンドユーザ」のことは配慮してくれなかった。何を言っているか全くわからない上に、研修を最後まで受けてもその話がどう関連しているのかわからなかったから。
実は
こうした「人間中心・環境中心」を説く人の「自己中心」は今に始まった話ではない。21世紀になったころ、人間中心設計が勃興した時もそうだった。ある日講演会を聞きに行った。5人くらいいた「人間中心設計」の専門家は最後の一人を除いて大幅に時間を超過し、主催者、自分の後の講演者のことを考えずにしゃべりまくっていた。その日渡された概要を記した紙には
「人間中心設計を声高らかに唱えながら、自分の家では家族に自己中心的な振る舞いをする人もいる」
と書かれていたのを覚えている。
そして少し話を飛躍させれば、「百年後のユーザーも考えたデザインを!」と崇高な理想を語ることと、「八紘一宇」「大東亜共栄圏」「東方生存圏」というこれまた現実から遊離した崇高な理念を語っていたことを合わせて考えるのは面白いと思うのだけどね。