見出し画像

パウル・クレー 自己表現と内なる世界

アート:創造的自己表現 - パウル・クレーに学ぶ内なる世界の探求

皆さん、お正月休みも明け、仕事も始まり、心理状態はいかがですか?
中には、気持ちが入らず、上の空状態の方もいるのではないでしょうか?

そんな時は、自分の今を表現してみましょう。
色で表す、写真で表現する、どんな形でも構いません。
アートを自分のために取り入れてみてください

日々、私たちは、言葉を使ってコミュニケーションを取っています。しかし、時として言葉では表現しきれない感情や思いがあることに気づくことがあります。そんなとき、アートは私たちに新たな表現の可能性を開いてくれます。

今回は、20世紀を代表する画家パウル・クレーの人生と作品を通じて、アートによる創造的自己表現と非言語的コミュニケーションの力について考えてみましょう。

パウル・クレー:内なる世界を描く画家


パウルクレー

パウル・クレー(1879-1940)は、スイス生まれの画家で、20世紀美術に多大な影響を与えた芸術家の一人です。彼の作品は、抽象と具象の境界を行き来し、色彩豊かで詩的な世界を創り出しています。

クレーの人生は、まさに「自分軸の確立とコミュニケーション」を体現するものでした。幼少期から音楽と絵画の才能を示したクレーは、長い間、画家としての道を歩むか、音楽家になるかで悩みました。この経験が、後の彼の芸術観に大きな影響を与えることになります。

自己表現の旅路

クレーの画家としての道のりは、決して平坦ではありませんでした。ミュンヘンの美術アカデミーで学んだ後も、なかなか自分の表現スタイルを見出せずにいました。しかし、彼は諦めることなく、自己の内面と向き合い続けました。

1914年のチュニジア旅行が、クレーの芸術にとって大きな転機となります。北アフリカの鮮やかな光と色彩に触れたクレーは、「色彩は、私を永遠に捉えたのだ」と日記に記しています。この経験を通じて、クレーは自分の内なる世界を色彩で表現する方法を見出したのです。

私たちも、日々の生活の中で、クレーのような「転機」を経験することがあるでしょう。それは、旅行かもしれませんし、新しい出会いかもしれません。大切なのは、そうした経験に対して心を開き、自分の内面の変化に敏感になることです。

アートを通じた自己表現

クレーの作品は、一見すると子供の落書きのように見えるかもしれません。しかし、その中には深い思索と豊かな感性が込められています。クレーは、「芸術は見えるものを再現するのではなく、見えないものを見えるようにする」と語っています。

この言葉は、アートによる自己表現の本質を突いています。私たちの内面にある、言葉では表現しきれない感情や思い、それこそが「見えないもの」なのです。アートは、そうした内なる世界を形や色、線で表現する手段を与えてくれます。

実践:内なる世界を描く

クレーの作品に触発されて、自分自身の内なる世界を描いてみましょう。必要なのは、紙と絵の具(または色鉛筆)だけです。以下の手順を参考にしてください:

  1. 静かな場所で、目を閉じて深呼吸をします。

  2. 自分の感情や思いに意識を向けます。

  3. それらの感情や思いを、色や形で表現するとしたらどうなるか、想像してみます。

  4. 目を開け、思い浮かんだイメージを紙に描きます。

  5. 描き終わったら、作品を少し離れたところから眺めてみましょう。

この過程で大切なのは、「上手に描こう」とか「他人にどう思われるか」といったことは気にしないことです。これは、あなた自身との対話なのです。

非言語的コミュニケーションの力

クレーの作品が多くの人々の心を捉えて離さないのは、言葉を超えたコミュニケーション力を持っているからです。例えば、彼の代表作「金色の魚」(1925年)を見てみましょう。この作品には、具体的な「魚」の姿はありません。しかし、金色に輝く抽象的な形と、周囲の色彩の調和が、見る人の心に何かを語りかけてきます。


金色の魚

非言語的コミュニケーションの力は、日常生活の中でも重要です。私たちは、言葉以上に表情やジェスチャー、声のトーンなどから、相手の感情や意図を読み取っています。アートは、この非言語的コミュニケーション能力を磨く絶好の機会を提供してくれるのです。

実践:作品を通じた対話

友人や家族と一緒に、以下のワークを試してみましょう:

  1. それぞれが先ほどの方法で作品を制作します。

  2. 作品を交換し、お互いの作品を見ます。

  3. 作品から感じたことを、言葉ではなく、身振り手振りで表現してみます。

  4. 最後に、感じたことを言葉で共有します。

このワークを通じて、言葉を使わずに相手の感情や思いを理解する体験ができるでしょう。また、自分の作品が他者にどのように受け取られるかを知ることで、新たな自己理解にもつながります。

クレーの晩年:困難を乗り越える創造力

クレーの人生の後半は、決して平坦ではありませんでした。1933年、ナチス政権の台頭により、クレーはドイツを去ることを余儀なくされます。さらに、晩年には重い病に苦しみました。しかし、クレーはこうした逆境の中でも創作を続け、むしろ以前にも増して旺盛な制作活動を展開しました。

この時期の作品には、「天使」のモチーフがしばしば登場します。例えば「忘れっぽい天使」(1939年)は、クレーの心の葛藤と希望を同時に表現しているようです。シンプルな線で描かれた天使の姿は、苦難の中にあっても失われない人間の尊厳を象徴しているかのようです。


忘れっぽい天使

クレーの晩年の創作活動は、私たちに大切なことを教えてくれます。それは、困難な状況にあっても、創造的な自己表現を通じて、自分自身と向き合い、新たな可能性を見出すことができるということです。

実践:困難を乗り越える自己表現

あなたが現在直面している困難や課題について考えてみましょう。それを、クレーのように抽象的な形や色で表現してみてください。この過程で、問題を客観的に見つめ直し、新たな視点を得られるかもしれません。

まとめ:自分軸を確立する創造的自己表現

パウル・クレーの人生と作品は、創造的自己表現が持つ力を如実に示しています。彼は、常に自分の内なる声に耳を傾け、それを独自の方法で表現し続けました。そして、その過程で確立された強固な自分軸が、人生の困難を乗り越える力となったのです。

私たちも、日々の生活の中で創造的自己表現の機会を見出すことができます。それは、絵を描くことかもしれませんし、音楽を奏でることかもしれません。あるいは、料理や園芸、文章を書くことかもしれません。大切なのは、その表現を通じて自分自身と対話し、自分の内なる世界を探求することです。

また、アートを通じた非言語的コミュニケーションは、他者との深い理解と共感を生み出します。言葉では表現しきれない感情や思いを共有することで、人と人との結びつきがより強くなるのです。

今日から、あなたも創造的自己表現の旅に出かけてみませんか?

「芸術は見えないものを見えるようにする」

それは、自分自身をより深く理解し、他者とより豊かにつながる道筋となるはずです。

パウル・クレーの言葉を借りれば、「芸術は見えないものを見えるようにする」のです。あなたの内なる世界を、創造的に表現してみてください。そこには、きっと新しい自分との出会いが待っているはずです。


いいなと思ったら応援しよう!