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米津玄師「ゴーゴー幽霊船」

「世の中には、すぐに分かるものと、すぐ分からないものの2種類がある。すぐ分かるものは一度通り過ぎればそれでいい。けれど、すぐに分からないものは長い時間をかけて少しずつわかってくる。」

映画「日日是好日」より

 映画「日日是好日」で、主人公典子は世の中には「すぐに分からないもの」と「すぐに分からないもの」の2種類があると言っていた。

この映画を見た時、わたしはこれを「まるで米津玄師楽曲のようだな」と思った。

米津玄師楽曲の中には、歳を重ね、人生経験をある程度経たからこそ響くものがある。

「ゴーゴー幽霊船」もその一つだ。

米津玄師「ゴーゴー幽霊船」

米津玄師「ゴーゴー幽霊船」は、歌詞の詳細な意味を理解しようとすると、さまざまな解釈が生まれるような作りになっている。

リリースされた当時も、今も、正直に言って「この歌詞の意味を完全に理解した!」と言い切れない。

わたしにとって「すぐに分からないもの」である「ゴーゴー幽霊船」の話を今日はしていこうと思う。

「遠い昔のおまじない」とは?

歌詞に何度も出てくる「遠い昔のおまじない」。

おまじない、と聞いて、最初に聞いた時は自分の身を守るような、いい意味でのおまじないかと思ったが、これはどうやら違うようだ

「おまじない」というよりは、「呪い」といったニュアンスだろう。

現代を生きる私たちは、数々の呪いと共に生きている。

歳をとった女に価値はない、見た目が悪い、結婚できない人は何かある・・・。

それらはまさに呪いだ。そんな呪いを自分にかけてしまっては生きにくくて仕方ない。

ちょっと病弱なセブンティーンも、自分が何者にもなれないような、外の世界に向かうことを恐れるような呪いにかけられ、妄想の世界に逃げている。

それがアンドロイドに出合い、幽霊船に乗って外の世界へ向かうことで最終的には遠い昔のおまじないがあんまりな嘘と知った。

「おまじない」が「呪い」だと思うと、この曲はハッピーエンドにも思える。

怒りを散らした幽霊船はどこへ行くのか

内気な少女がアンドロイドに導かれ、妄想の世界でなく現実の世界を生きていく。


それは初音ミクというボーカロイドの声を借りて、世の中へ音楽を発信し続けていた米津玄師のようにも聞こえる。

「diorama」は米津玄師が本名で、自分の声を使って初めて出したアルバムだ。

幽霊船にのって自らの声と歌で世の中に挑んでいく、と思うとやはり「ゴーゴー幽霊船」が収録されるのは1stアルバム「diorama」でしかないと思う。

意図したかは分からないが、そのように解釈すると「ゴーゴー幽霊船」は世の中への宣戦布告のようなものにも見えるからだ。

また、「まんまの言葉信じてくれ」「本当のことさ信じてくれ」という歌詞は「米津玄師が作る曲は誠実な歌」であるから信じてほしいというように取れる。

米津玄師という幽霊船が、この修羅ともいえる現実を、心からの言葉で紡いだ歌で進んでいく。

まだまだ幽霊船は進み続けていて、行き先はまだ、誰も知らないのだ。

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