放浪旅あいまい記憶日記 その2
<<< カリンバを作って売り始めたきっかけ >>>
「まあ、雨降りそうだからなー」と思って空を見上げると
案の定、始めた途端にポツリときた。でも、それほどの雨ではなく、なんとなくかたずけている途中に、雨も止んできたので、その場で腰掛けたまま2台目に作ったカリンバを弾きだした。先日亡くなったおばあちゃんの魂に捧げようと思い、小雨の中しばらくポロポロ弾いていると
「あら。いい音ねー」
と上品そうな初老の女性が話しかけてきた。
「どこの楽器?」
「アフリカの楽器ですけど、これは自分で作りました。カリンバと言いいます」
と答え、しばらく、音を鳴らしながら旅の話などしていると、
「これ、私に作っくださらない」と、もちろん作れますよと答えた。
これが初めてオーダーでカリンバを作った始まりだ。
「わかりました。どちらにお住まいですか?」と聞くと
「ここよ。一番上にすんでるの」と指をさしたのは、俺が座ってるすぐ斜め前にある1階が高そうな紳士服のお店があるビルだ。彼女はこのビルのオーナーだ。
スゲ〜!と素直に思った。
彼女がいなくなって、おばあちゃんに感謝しなきゃと、またカリンバを弾き出した
雨も止み、しばらく弾いていると二人の男性が立ち止まった。二人とも白いシャツに黒いスーツ姿だがビジネスマンのそれとは違い、かなりルーズにきこなしていて薄手の黒いロングコートを羽織り、表参道にふさわしくかなりファショナブルな立ち振る舞いだ。
背の高い方の人が、もう一人に小声でなんか話してる。そして
「その楽器売ってるの?」と聞いてきた。
「いえ、これは自分で作ったもので売り物では無いのですが、オーダーで作れますよ。さっきも一台オーダーもらったんですよ」と答えると
また、隣の人と小声で話し、
「それ10台作れる?」
「えっ10台?」
話をよく聞くとショーに使いたいらしい。オーダーを受け名刺を受け取り
その名刺を見ながら「お店どこなんですか?」と聞いたら二人に笑われた。
ここだよと指さされたのは、すぐ目の前の店だ。結構有名なヘアープロダクツの会社だというのはのちに知った。
結局この日、俺は計11台のカリンバを作ることになったのだが。この時はまだ、この楽器をこれから生涯にわたって作って弾き、命までを助けられることになるとは想像もできなかった。
2台目のカリンバを路上で弾いたのがきっかけといったが
本当のきっかけは一号器で、もう手元になかった。
そして、この初めて作ったカリンバに旅の最後に助けられたのだ。
ー つづく
次回は初めての海外旅行のピンチに、初めて作ったカリンバに助けられたお話です。
<<< 初めての海外ひとり旅の最後にピンチが!>>>
読んでくれてあれがとう!!おヒマな時に続きも読んでね!
幸あれ!!!
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