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人をバカにするコミュニケーションを卒業する

残り8

わたしの母は皮肉を扱うのが上手な人だった。
ものごとを真正面から捉えるのではなく、斜め横から見るようなその言い回しは、わたしにとって最高におしゃれな冗談であり、シャレの効いたユーモアだった。

いま考えてみると、わたしの育った家には独特の会話のルールがあった。
誰かを褒めるときは、必ずその人がいなくなってから。面と向かって誰かを褒めることは絶対になかった。
そして誰かを貶すときは、その人のいないところで悪口を言うか、面と向かって反対の言葉を使って皮肉るのだ。
例えばわたしが組み合わせを間違えてものすごくダサい格好をしたら母は笑いながら「オシャレだね」と言うし、わたしが作った下手くそな作品を見て「上手だね」と揶揄するのが母にとっての気の利いたシャレだった。

わたしも母から学んだコミュニケーションを最近まで実践していた。良いことも悪いことも面と向かって伝えない。その人がいないところでこっそり言う。そして面と向かって言うときには皮肉を使った。

それを一部の友人は「辛口だね〜」とか「毒舌だね!」とよろこんだ。
たまにびっくりしたような、傷ついたような反応をする人もいたけど、なぜ彼らが不快な反応をしたのかわたしには分からなかった。
わたしのオシャレな皮肉が通じなくて、わたしもまた傷ついたりしていた。


それが人をバカにする言い方だと気がついたのは、むすこが中学校に上がってからだった。

ある日、むすこがこう言った。

「おかあちゃんはバカにするから、おかあちゃんには言いたくない」

と。


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うれしいです!!!!