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ロマンティック・ラブ・イデオロギーを手放す

わたしたちはそれを物語で、テレビや映画で、幼いころから擦り込まれてきた。

世界でただ一人の王子さま(お姫さま)と出会い、ふたりはおじいちゃん、おばあちゃんになるまで末長くしあわせに暮らしましたとさ。
めでたし、めでたし。

これを「ロマンティック・ラブ・イデオロギー」と呼ぶらしい。
恋愛によって結びついた男女が結婚し、出産、子育を通して愛を育みつつ、ともに年をとっていくという、結婚における恋愛至上主義。

結婚したら、生涯ひとりの人を愛し、セックス、愛情、理解、子育て、やすらぎ、そのすべてをたった一人の伴侶とやり遂げなければならない。
(ふつうに考えてむちゃくちゃハードル高い。
そんな完全無欠なパートナーどこにいるんだよ。)

この考えは19世紀以降、欧米社会で広がり、20世紀に開花した。
日本では欧米に遅れ、高度経済成長期に浸透したと考えられている。

つまり実はこれ、最近できた比較的あたらしい観念なのだ。



でも実際に結婚したことがある人はすでにお気付きだろう。

この物語には続きがある。

ここまではたんなるプロローグに過ぎず、むしろここからが本番。本当の物語のはじまりだ。


わたしたちは変化する生き物だ。
未熟だった時代から様々な経験を経て成熟していくのが人間。
人にはそれぞれ人生の課題があり、それに気づくための試練が訪れる。
それをなんとか乗り越えていきながら人は成長していく。

成長には人それぞれのペースがあって、課題や試練の大きさも様々だ。
同じ出来事を経験したからといって、同じように成長するわけでもない。
そしてその時々で、成長するために必要な相手が目の前に現れる。まるでRPGのゲームのように。

仲間とパーティーを組んで敵を倒しながら目的地に向かって進んでいく。たくさんの敵を倒しながら宝物を見つけ新しい技を獲得しながら主人公は少しづつ成長していく。ステージを進めていくにつれてゲームの難易度も高くなっていく。
そのとき、もう最初のパーティーでは闘えない。
成長した主人公には、いまの成熟度とステージに見合った新しい仲間が必要となる。

わたしたちの人生もそれに似ている。
わたしたちは成長に応じて、そのステージに見合った仲間が用意されている。
仲間は変わるのが当たり前。もしかしたら幸運なことに一生ひとりの人が仲間であり続けるという場合もあるかもしれないけれど、それはとても稀有なことだ。

多くの場合、仲間はステージごとに変わっていく。
わたしたちは成長していくから、その成長に応じて必要な人間も変わってくるのは当たり前だ。

そこに無理やりロマンティック・ラブ・イデオロギーなどという窮屈な概念を当てはめるから苦しい。

最初のステージをクリアするために必要だった人と、最終ステージをクリアするために必要な人が違うことは往々にしてあり得る。

ロマンティック・ラブ・イデオロギーなどという造られた価値観にしばられて、もうお互いにとって必要ない人間関係を続けていくのはナンセンス極まりない。

恋愛して、結婚して、セックスして、こどもを産んで、家庭を協力して運営して、そのこどもを育てて、さらに愛情を注ぎ合って、子作りを終えても同じ人とセックスをして、理解し合って、安らぎを与え合う。支え合って困難を乗り越え、おじいちゃんとおばあちゃんになったら手をつないで買いものに行くなんて、、、。
様々な試練を乗り越え、各々が各々のペースで成長し変化しながら、なおたった一人の人とそのすべてを遂行して添い遂げていくなんて、そんなのもはや奇跡に近い。

人は変わる。
じっさい10年前のわたしと今のわたしでは別人だとじぶんでも思う。
そうやって人は変化していくのだから、それに応じてパートナーも変わっていくのは至極当然のことだ。

もはやロマンティック・ラブ・イデオロギーは機能していないとみんな薄々気づいているよね。
恋愛は一種の熱病みたいなもので、そのうち冷める。一生熱を出してるわけにはいかない。
恋愛至上主義は一生ディズニーランドで暮らしたいと言ってるようなものだ。そんなのふつうに無理だよ。ディズニーランドの価値観を日常生活には持ち込めない。

わたしたちは平熱で、この不完全で残酷な世界を生き抜かなくてはならない。
そんなとき過去に恋愛した、たった一人にすべてを依存しなければならない世界はわたしたちを苦しめる。

造られた概念に縛られるのは苦しい。
そろそろロマンティック・ラブ・イデオロギーを脱ぎ捨ててあたらしい世界線に立つときがきている。


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