カワシンジュガイの"国内希少野生動植物種"指定について
今年も野生下で絶滅の危険性が高い動植物が"国内希少野生動植物種"に2022/01/24付けで指定されました。
その中には淡水二枚貝である「カワシンジュガイ」と「コガタカワシンジュガイ」が含まれていました。
この問題にはタナゴを飼育・繁殖を楽しむ上で注意しなければならない最重要課題を含んでいますので、今回はこのニュースについて取り上げたいと思います。
■国内希少野生動植物種とは?
環境省のHPを覗くと、国内希少野生動植物種とは
と記載されています。
ざっくり言うと、野生で絶滅の危機がある動植物の中で、環境破壊など人間の活動によってまもなく絶滅しうる種類を国内希少野生動植物種に指定することで、保全を図ろうというものです。
佐渡島で有名なトキ、北海道に生息するタンチョウ、沖縄のイリオモテヤマネコなど427種(2022/01/24時点)が国内希少野生動植物種に指定されています。
タナゴに目を向けると、イタセンパラ、セボシタビラ、スイゲンゼニタナゴ、ミヤコタナゴの4種が現在指定されています。(多いですね。。)
また、国内希少野生動植物種に指定されると、その種は捕獲や採集、販売・頒布、譲渡しなどが禁止になり、それらを破った場合は法で罰せられます。
一方で、国内希少野生動植物種の中には①特定第一種、②特定第二種というカテゴリーも設けられており、概要は以下の通りです。
①特定第一種:国内希少野生動植物種の中で、商業的な繁殖が可能な種類
NG:野生個体の捕獲、採集
OK:繁殖された個体の販売・譲渡し(※環境大臣及び農林水産大臣への届出が必要)
②特定第二種:国内希少野生動植物種の中で、販売・頒布を規制する種類
NG:販売・頒布、またそれ目的での捕獲、譲渡しなど
OK:上記以外(自分で野生個体を捕獲・採集して飼育、繁殖することはOK)
これら以外にも、天然記念物や都道府県独自の指定希少種もいるため、トラブルにならぬよう野生個体の採集を楽しむ際は事前にチェックしておきましょう!
■カワシンジュガイについて
前置きが長くなりましたが、本題のカワシンジュガイについて述べていきます。
そもそも「カワシンジュガイ」や「コガタカワシンジュガイ」とは、イシガイ目カワシンジュガイ科に属する淡水二枚貝で、北海道や本州の山間部など、夏場でも水温が20℃くらいまでにしかならない低水温の川に生息しています。
カワシンジュガイは卵から孵るとグロキディウム幼生と呼ばれる形になり、アマゴやヤマメ、イワナなどに寄生して成長します。
アマゴやヤマメ、イワナと一緒に住んでいることからも、カワシンジュガイが水温が低いところに住んでいることがわかりますね!
グロキディウム幼生の状態から成長すると、やがて寄生先から離れて川底に落ちて二枚貝の形状へ変態して10cm~に成長していきます。
成長速度は遅いものの、その分寿命が長く中には100年以上生きる個体もいるようです。
「カワシンジュガイ」と「コガタカワシンジュガイ」は、ともに絶滅危惧種に指定されており、生息数を減らしています。
私が初めて野生個体を目にしたのは、北海道の千歳水族館の水中観察ゾーンで、千歳川の川底にひょっこり立っている姿を目にして感動しました!
そんなカワシンジュガイですが、様々なタナゴの繁殖に適するということで、タナゴ愛好家からの人気が高いのです。
タナゴ水槽にカワシンジュガイを入れることで、タナゴがカワシンジュガイに卵を産み殖やせるというわけです。
しかし、カワシンジュガイを含む淡水二枚貝は植物性プランクトンの中でも珪藻類を餌にしていますが、これは水槽内で淡水二枚貝が必要とする量の珪藻を発生させることは非常に困難で、基本餓死してしまいます。
加えて、上述した通りにカワシンジュガイは低水温でしか生きられないため、飼育する場合は水温が20℃以上に上がらないようにする必要があり、夏場には水槽用クーラーなどが必要になります。
しかし、タナゴはそのような環境下には生息しないため、タナゴ愛好家はクーラーなど使用せず25℃以上になるような水槽にカワシンジュガイが入れられるため、夏場は暑さで死んでいるのが現状です。
カワシンジュガイは飼育下で繁殖できないこと、飼育下ではすぐに死んでしまうことから、野生個体が乱獲されて一般的に"タナゴ繁殖用の消耗品"として扱われています。。
そんな状況から、国内希少野生動植物種の特定第二種に今回指定されました。(これまでのことを読むと当然の結果ですよね。。)
ここ数年はかなりひどい状況だったので、正直私はやっとかという感想です。
今回の件に限らず、アクア業界も昨今の世の流れと同様に持続可能な方法で楽しむように転換しなければならないと考えています。
私はこれまで持続可能なタナゴの飼育を目的として、二枚貝フリーの人工授精について研究を重ねてきました。
一人でも多くの人が問題意識を感じて行動することで、第二のカワシンジュガイが出てこないことを望まざるを得ません。
好きなものだけではなく、それを取り巻く環境に視点を広げて、何をすべきなのか考えることが大切だと思います。
長くなりましたが、この記事を読んでくださった皆さんには感謝を申し上げるとともに、観賞魚の飼育の在り方について考えていただくきっかけになれば幸いです。
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