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【ヨネックス カーボンクルーズSR レビュー】 クッションと軽快さがうまくバランスされたシューズ

ヨネックス カーボンクルーズSR(ブラック/オーシャンブルー)

2024年8月上旬に発売された「ヨネックス カーボンクルーズSR」をショップから提供いただいたので紹介したいと思います。


経緯

ランニングシューズ後発のためシェア獲得にかなり苦戦しているようでヨネックスさんがかなり熱心に営業かけてきたようです。
ショップがヨネックスさんより何足か提供され“真面目に”履いてくれる人を探していたとのこと。
従って忖度なしにショップにインプレを送らなきゃいけません。
レコメンドをお店に送れたら尚よし。

走歴

ちなみに私は走歴2年、本格的にランに取り組み始めたのはここ1年。月間走行距離230km前後、PBはハーフ1時間37分、フル3時間44分程度のひよっこ。素人が素人なりに感じたことを記そうと思います。

履いているシューズ

  • アシックス GT-2000 11

  • アシックス ノヴァブラスト4

  • アシックス マジックスピード3

  • ニューバランス フレッシュフォームX1080 v13

  • ブルックス ハイペリオンマックス

  • ブルックス カタマウント2

  • サロモン ウルトラグライド2 GTX

ヨネックスと言えば

ヨネックス=テニスやバドミントンのラケット、またゴルフクラブやスノーボードのイメージが強いです。
私はロードバイクもやりますが(むしろ自転車がメインだった)、ヨネックス製のロードバイクを初めて見たときは「自転車も出してんの??」と驚いたものです。
調べたところ2009年にランニングシューズに参入しているよう。

確かに、2009年に参入しているのであれば15年は経過しており、もう少し存在感があってもおかしくなさそうですが、基本的な設計思想が「膝や脚に負担をかけない」「怪我をしない」といった万人が長く楽しく走ることを目的としているようなので、シリアスランナーの選択肢に入りづらかったのは確かでしょうね。

現在展開しているランニングシューズはジョグシューズの「フィットジョグ」、セーフランシリーズ「100X」「200X」、カーボンクルーズシリーズは「エアラス」「SR」「XR」とありますが、ネットを横断しても軽量モデルの「エアラス」のレビュー以外ほとんど見つかりません。

カーボンクールズ エアラス

というか、そもそもヨネックスのランニングシューズのレビューがほとんど見つからない
「SR」「XR」は8月に発売されたばかりなのに発売のプレスリリースしか見ない始末です。

商品レビュー

外観

ミッドソールに使われているのはヨネックス独自の素材「パワークッションプラス」。12mの高さから落とした生卵が、割れずに6m以上跳ね返るという高い衝撃吸収性と反発性を併せ持ち「軽く、疲れにくい」走行感を得られるという。

アッパーは通気性の良い柔らかなエンジニアードメッシュとなっており、通気性とフィット感をうまく両立していると思います。

シュータンはガセットタンでシューズとの一体感があり、伸縮性の高いニット素材でありながら裾はM字形状の樹脂製の素材で補強されており足首側にかなり幅広い(手持ちの他のシューズに比べてもかなり広い)。
お陰で足首のホールド感は抜群。シューレースで圧迫される部分にもボリュームあるパッドが配置されて距離を走っても足の甲に圧痛などは感じない。

シューレースは伸縮性は高くはないがしっかりとした作り。
また、レースがウェーブ形状となっており解けにくく、余ったレースをまとめておけるバンドが付いているため走行中に解けることはないでしょう。

履き口のアンクルパッドの厚みは十分で柔らかく足首を包み込んでくれてか優しい履き心地。とは言ってもアンクルパッドはしっかりと踵にフィットして前述のシュータンのシステムとも相まってホールド力は非常に高いです。

卓球のラケットのラバーのよう

アウトソールはテニスやバドミントンシューズでも使う凹凸の高耐久ラバーを採用しているとのこと。
前足部の面積は中程度ですがその広さが中足部に掛けて続いているように感じます。また、踵部の面積はかなり狭く安定感は高くなさそうに感じました。ヒールストライクよりもミッドフット走法を想定しているのかな。

少し不安に感じた部分は中足部外側が内側よりも盛り上がっていることです。

中足の外側が内側に比べて盛り上がっている(画像の奥側)

単純な印象として、オーバープロネーション(接地した足が内側に過度に倒れ込もうとすること)にならないかということ。
こればかりは実走してみないと分かりません。

サイズ感・重さ

足首のホールド力は高い

私が通常履くランニングシューズのサイズは29cm。幅広甲高の足をしておりウィズは2Eを履きたいです。素材やメーカーによってはDでもいける場合もありますが、その場合はワンサイズアップしたいところ。

ヨネックスのランニングシューズにはワイド展開がないところを見ると、ホームページには記載がありませんがDサイズと思われます。ヨネックスの方に聞いたところEサイズでした。
しかしそこは老舗の日本のメーカー。日本人にあったラストを採用しているのか、わずかに狭さは感じるものの29cmで問題ありませんでした。

ジョグシューズとしては軽い方

重さについては公式値は26.0cmで242g。26cmでカーボンシューズとしては重い方、ジョグシューズとしては軽い方。29cmの実測値は284gでした。

そもそもですが、公称する重さの基準サイズはほとんどのメーカーが27cmを基準にしているのに(ナイキは28cm)、なぜ26cm??
最初は少しでも軽く見せたいのかと勘ぐってしまいましたが、日本におけるメンズスニーカーの一番の売れ筋サイズが25.5cm、次が26cm、その次が26.5cmだとか。
ランニングシューズはワンサイズアップで履くことが多いことを考えると基準サイズが26cmということに納得しました(他メーカーと比較しにくいことに変わりありませんが)。

実走レビュー

すでに累計100kmほど走っていますが、初めて足を入れたときの印象は「柔らかい」
また、思ったとおりソールの外側の盛り上がりのためか立位では足首が内側に倒れ込む感覚がありました。
ドロップは10mmなので足が自然に前に転がる感覚があります。

初実走は10kmを入り5:40/kmから最後に4:20/km程度まで上げてみました。
走り始めて感じたことは足裏全体を面で着地した際に、懸念されていた中足部の盛り上がりがヒール外側から拇指球に掛けてスムーズに荷重移動させるガイドの役割をしているということ。
着地から蹴り上げまで非常にスムーズに行えます。そのお陰なのかシューズが思いのほか軽く感じました。

5:00/km前後までのスピードであれば衝撃はしっかり吸収してくれて、クッションは少し柔らかさを感じるものの横ブレを感じることもありません(カーボンプレートが柔らかすぎるクッションの剛性を補強しているのかな)。

中足部分は十分な面積があり思っていたよりは安定感があります。
高い反発は感じませんが、どちらかと言うと優しく着地させて優しく前に足を送り出してくれるイメージ。

ただ、クッションの柔らかさは気になりました。
特にボリュームがあるヒールから中足にかけては体格が大きい(身長184cm・体重74kg)私には柔らか過ぎるように感じます。

プレートの上に軽量なフォーム材の「フェザーライトエックス」に衝撃吸収と反発性に優れた「パワークッションプラス」が拇指球とヒール部分に配置され、プレートの下には軽さと反発性に優れた「フェザーバウンスフォーム」が配置されているとのこと。
クッションの感覚としては「モチッ」や「ブニッ」ではなく「フカッ」

この「フカッ」とした感覚が踏み込み方によっては「スカッ」に変わります。
クッションがクシュッと潰れた感じで沈み込みが大きく、プレートのしなりもあまり強くないため、スピードは出しづらく感じました。
この原因は最もボリュームのある「フェザーバウンスフォーム」の特性のようです。
 → 追記

しかし、スーパーシューズのように反発の強いフォームに固いカーボンプレートでは使いこなせる人は少ないでしょうし故障の原因にもなりかねません。
そういう意味では、柔らかいクッションに適度な反発、そして高い安定感が走力そこそこの人にマッチするように味付けされているように感じます。

また、雨が降ったあとのウェットな路面で走ってみましたがグリップはあまり良くありませんでした。ズルッといくほどではありませんが、蹴り出しの際に少し滑る感覚がありました。
乾いた路面では十分にグリップするので頼りなさは感じません。

追記

使い初めて最初の頃はクッションが柔らかすぎて頼りないシューズと思っていました。
「プレートの反発も弱いし相乗効果を発揮していない」「5:00/kmまでがいいところ」と勘違いしていました。

このシューズは強く深く踏み込まず“パンッ”と弾くように足離れを素早くしてピッチで回した走り方をすると速く軽やかに走れることに気づきました。
イメージとしては“パッパッパッ”とした足さばき。
走り方を変えただけで気づけば4:30/kmくらいまで楽にスピードが出て驚きました。

私みたいに大きな体格の人が体重にまかせて乗り込むような走り方をするとクッションが潰れ過ぎてこのシューズの特性を活かせない気がします。

まとめ

このシューズは最初の印象よりポテンシャルの高いシューズであると認識が変わりました。
アウトソールの特性やドロップが10mmあるのでゆっくりペースでも足運びしやすく、クッションが柔らかい割にプレートのお陰か安定感もあるので、私はジョグやペース走、ロング走に使っています。
また、サブ3.5までならレースでも十分に使えそうですね。

このシューズの良さはクッションがしっかりしている割に走ると軽快さがあるというバランス感だと思いました。
また、遅いペースから速いペースまで走り方によって様々な特性が顔を出すところが面白いです。
そういう意味では思わず履いてしまう飽きさせないシューズと言えるでしょう。

ランを始めようと思っている方はヨネックス「セーフランシリーズ」から始めて、キロ6分くらいで走れる様になったときにステップアップとしてこの「カーボンクルーズSR」を購入する流れが良いかも知れません。

ちなみに世界陸連の規定からは外れますがソールの厚みが40mmを超す「カーボンクルーズXR」というマックスクッションモデルもあります。
「フェザーバウンスフォーム」の厚みが増しているようなので、フォーム材の特性から柔らかいとは思いますが、40mm超の厚みの割にSRより20g程度しか重さが増量していないことを考えると、ウルトラマラソンのような超長距離を走るときに使えそうな予感がします。

価格はSR、XRともに税込19,800円
これほど面白い特性を持つカーボンプレート内蔵シューズとしては安いと思います。

最後に

ヨネックスのランニングシューズのシェアについて思うこと。

ランニングシューズで十分な実績があるメーカーはエリートランナーから初心者まで対応できる幅広い商品ラインナップがあります。

様々な機能がそのシューズの方向性によって横断的に搭載され、ひとつのシリーズとして複数展開されていることがほとんどです。

ランニングシューズの寿命はシューズによって異なりますが、一般的には距離400~500km、耐久性の高いシューズではその倍くらい履けるものもありますが、初心者でも月間走行距離は50~100km、中級者になれば150~250km、サブ3以上の上級者であれば300km以上は当たり前になります。
ということは、初心者でも年間500km以上は走ることになり、ほぼ必ず1足は履き替えると考えられます。

いろいろなメーカーのランニングシューズを履いてみたいと思う人も少なからずおられるでしょうが、特にランニングシューズの合う合わないは故障にも繋がるシビアな面もありますから、同じメーカー、同じシリーズを購入される人は多いと思われます。
そんな中で自分の走力に合わせて同じメーカーで選択肢を持てるということはブランドロイヤリティの形成に繋がっているのではないでしょうか。

ヨネックスのランニングシューズは購入するにあたり迷いにくく分かりやすいラインナップですが、これでは一定の層は獲得できてもユーザーの走力の高まりとともにヨネックスから離れていくような気がします。

商品の展開がもっとピラミッド型であれば良い気がします。
今は頂点のない小さな四角形に見えます。

新製品の登場を心待ちにしておきます。

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