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【連載】釜石と私〜第4回:地域のコミュニティに参加するキッカケ〜


釜石で薬剤師として働く


国家試験を終え、八王子から釜石に戻る。

わずか半年弱しかいなかった釜石に着いたとき、
故郷に帰るような懐かしさでいっぱいだった。


また釜石で働ける。


そんな想いをたずさえて、
ようやく私の薬剤師人生がスタートした。

しかし、当時の私の目標は、
『お金を貯めてドイツに留学し、
ドイツでサッカーの指導者ライセンスをとりたい』
というものだった。

ドイツに留学した際に、
日本で薬剤師として働いていたことを、
自信を持って語れるように、
日本にいる間は薬剤師として成長したい。

そう思っていたのだ。

薬剤師として働きながら、
成長を感じる日々。

そんな中、
釜石で新たな出会いの機会に恵まれたのだった。


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釜石の友人と飲みに行った後、
締めのラーメンを食べようという話になった。

ラーメンこんとき

店のカウンターで、友人と話していると、
大将が話しかけてきた。


「お前さん、話し方から見て、
 釜石生まれじゃないな、どこから来たんだい?」


威勢の良い江戸っ子風の喋り方。
見た目からは60歳前後といったところだろうか。


東京の八王子出身であること。

薬剤師として働いていること。

お金を貯めてドイツに留学したいこと。

サッカーの指導者ライセンスをとりたいこと。

一通り語ると、大将が言った。


「三浦俊也さん知ってるか?
 おれぁ、野球やってたんだけど、
 野球部の後輩で、三浦俊也さんと同級生がいてな、
 今度俊也さんを囲む会みたいなの
 企画してるはずだから紹介してやるよ!」


三浦俊也さんのことは存じ上げていた。

その存在も釜石に来た理由の1つだったからだ。

プロ選手経験もなく、
ドイツに留学して指導者ライセンスを取得し、
その後Jリーグの数々のクラブで監督を歴任した、
三浦俊也さんの出身地が釜石であり、
もしかしたら繋がれるかもしれない。

会社の専務から、
三浦俊也さんの父親が新日鐵ラグビー部の関係者で、
ラグビーつながりで紹介できると思うよ、
と言われていたが、思わぬ展開になった。

大将からの好意を受け、
紹介してもらうことにした。


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三浦俊也さんを囲む会


正式な名称は忘れてしまったが、
毎年同級生の方が企画していたようだ。

釜石のサッカー関係者が大勢集まり、
三浦俊也さんを囲み、お酒を酌み交わす。

そんな場所に、釜石に来て1年も経たない、
どこの誰だかわからないやつが参加したのだ。

正直言って、緊張を隠せなかった。

サッカーの指導者になりたかった私にとって、
三浦俊也さんはスターだった。

当時はまだプロ選手経験のない監督は少なく、
特に日本ではごくわずかだった。

実際に三浦俊也さんに会った際には、
ドイツでの生活や、ライセンスを取るまでの苦労、
指導者としての心得など、優しく教えてくれた。

主役を独占するわけにはいかないので、
私が話せた時間は、ほんの少し。

それでも経験者の体験談を知れたのは、
貴重な経験であったし、何より憧れのスターと
同じ空間に入れただけでも、
何にも変えがたいものだった。

その後、たまたま同じテーブルの人とお話していると
新日鐵釜石サッカー部の現役選手と話す機会を得た。

三浦俊也さんがドイツに留学する前に、
新日鐵釜石サッカー部でプレイしていたこともあり、
囲む会にはチームの現役選手が参加していたのだ。

そこで新日鐵釜石サッカー部に入らないか?
と勧誘されたのだった。


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新日鐵釜石サッカー部


当時のサッカー部は東北社会人リーグ2部北に所属し
1部昇格を目標にしていた。

しかし、全盛期から比べると選手層が薄く、
所属選手も結婚や子育てなどの変化もあり、
なかなか試合に参加できず、
ギリギリの人数でやりくりしていたようだった。

そんな状態もあり、
私がサッカー経験者であったことや、
ポジションがGKだったこともあり、
勧誘されたのだった。

私は、自分のプレイヤーとしての実力に対して、
自信も無ければ、東北社会人リーグで戦うことなど
できないと思っていた。

しかし、このレベルの試合を観客席ではなく、
練習や準備も含めて経験できるのは、
貴重なことだと思って加入することにした。

練習に参加してみて、
あまりの厳しさに吐き気を催すことばかりだった。

高校時代の部活動を振り返ってみても、
こんなに激しい練習はしていなかった気がする。

フィジカル、フィジカル、フィジカル…

徹底的にフィジカルを鍛え上げる。
所属選手は、遠野高校や仙台大学など、
強豪チーム出身であり、
基本的なスキルは持っていた。

しかし、リーグ戦を戦っていくために、
何より大切なのがフィジカルだということもあり、
そうしたメニュー設定だった。

贅肉だらけの身体には、キツいどころか、
何度も根を上げそうになった。

そんな時にチームメイトからゲキを受け、
何とか身体を動かし続けた。

東北社会人リーグ2部北は、
青森、秋田、岩手の三県で10チームが所属しており
ホーム&アウェイで試合をこなしていく。

遠征時には車を乗り合わせ、
試合をしていった。

車の中で、サッカー以外のことも含め、
くだらないことなど語り合う。

チームメイトは年齢や職場も様々で、
薬局で働くだけでは味わえない、
多くのことを知ることができた。

今思えば、サッカー部で過ごした時間が
私の人生に大きな影響を与えていたのだった。


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町田和敏(変な髪型をしたポンコツ薬剤師)
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