或るおばちゃんの話
おばちゃん、と言ってもおじいちゃんのお姉さんやから実際はおばあちゃん。
せやけどあたし(16歳・ピチピチ女子高生)は“箕面のおばちゃん”っていつも言う。
70になってから新築買って、おばちゃん割と嫌われモンやから「 一体何歳まで生きる気なん⁉︎」って言われとった。可哀想やと思いつつ、ちょっと笑てもた。ほんま不死身なんちゃうかって思うんよ。
スーパーカブのマックス速度で爆走するのが日課で、近所ではカブバァって呼ばれてるみたい。生まれた時からカブに跨った状態やったんちゃうかって、どんどん噂に尾ひれがついてる。でも現実も負けてない。
おばちゃんベンツやダンプカーと接触事故起こしたことあんねんけど、全然平気やねん。ベンツの時なんか前歯がフロントガラスに突き刺さって、逆に向こうの運転手がビビったみたいやわ。見舞いの品にもいちいちケチつけるし、可愛げがまるでない。でもあたしはそんなおばちゃんに憧れてる。誰も泣かへん悲しまへん葬式って最高やん! って思う。「あいつほんまムカついたわあ」「マジありえんてぃーやわ」酒ぐびぐび呑みながら陰口大会。死んでるからもう陰でもなんでもないけど、色々言われてるのを鼻で笑いながら、おばちゃんはまた別の世界でせっせと伝説を作って待ってんねん。カッコエエやろ?
おばちゃんは鋼鉄みたいな人やから、接した人は皆強く逞しくなる。勿論人間だけやなくて犬も。雑種で“天津”って名前の犬を飼ってるんやけど(バーミヤンで天津飯食べた日に拾ったから。はじめ「『やん』がかかってて丁度ええし『バーミやん』でええやん」とか何とか言ってたけどあたしが止めた)、17年と結構長生き。毛並みはバリカンで整えられ、寒空の下震えてる。魚の小骨を喉につめたこともあって動物愛護ナンチャラにしてみればえらいことなんやろうけど、あたしには踏み込まれへん一人と一匹の世界があるって感じかな。おそらく。maby。
ハマショーの『MONEY』がすきです。