通り魔にも満たない

物語を必要としない人が好きだった。
路駐した赤いコカコーラのトラックから大量に下ろされる段ボール。
「コメント欄のねっとりとした賛辞が
コンビニスイーツを上回ることはない」
匂わせ常習犯の彼女を連れた男の常套句。
拡張されたピアスホール。
調子外れの歩き方。
間違った発声法で心を揺らし喉を潰した。
愛・地球博以降行方をくらましたキッコロとモリゾーを追う刑事。
「マンモスうれぴー」
立てた中指の第一関節が吹っ飛んで、眠気から目を覚ました。
点字ブロックの上に置かれた看板には、“Beauty by truth”の文字。
「自分の可能性を信じたら？」
「成功より納得なのか、この人生……」
ズボンのベルト通しに鍵をぶら下げ、松屋のビフテキ丼に舌なめずりをしていたあの頃が、幸にも不幸にも分類されない死腔であったと理解するには歳をとりすぎていた。