日常飽和

キスはできる程度に好きだけど、
クラミジアをうつさないでほしかった。
全くロマンに欠ける野郎だ。

完璧なお膳立てで会うに至ったはずが
場違いなファッションに身を包んでいた。
一杯千円のモカブレンドの酸味。
扁桃炎にしみる。

借り物の言葉が空間に浮く午後三時。

自己紹介でポリアモリーと明かすのは反則。
こちらを睨みつける、黒髪少女集団の視線が痛い。時代ごとの自分自身だろうか。それも不健康になる前の。
長編のフランス映画を見ているような退屈と眠気に襲われた。
やはり、家で「人殺しのモーティングルーティーン(三十歳・男性)」を見ている時間が最も有意義だ。

別れて尚、その人の一人称が思い出せなかった。
病院帰りに勢いよく電柱を蹴り上げる。
通行人Aに声をかけられ、「イヤモニで指示されてるんすよ」とうそぶいてへらへら笑った。