HOMRA in Las Vegas 06
第6話「死に損ない」
著:鈴木鈴
葬列が、荒野を進んでいく。
どことも知れぬ、広く、白茶けた荒野だった。ブラックスーツに身を包んだ一団が、長い列を為しながら歩いて行く。誰もが一様にうつむいて、咳ひとつ聞こえない。静々と、粛々と、彼らは歩きつづける。
その光景を、エドはじっと見つめている。
――待ってくれ、俺も……!
エドは彼らにそう呼びかける。呼びかけたはずだ。だが、声は出なかった。追いかけようとしても、足が進まない。まるで意識だけがそこに浮かんでいるかのように、エドは感覚もなく、ただその光景を見せつけられていた。
右耳が焼け落ちた男が、歩いて行く。
背中一面が焦げた巨漢が、歩いて行く。
小指の先だけが欠損した男が、歩いて行く。
そして、その先頭を歩むのは――
――ボス! 王様!!
焦燥と寂寥が、意識だけに縛り付けられたエドを焼く。存在しない腕を必死に伸ばし、存在しない目から涙があふれ出す。
――いやだ! 置いていかないでくれ! 俺を! 俺も!!
エドは叫ぶ。声なき声で、喉が張り裂けるほどに。
それでも葬列は止まらない。彼らは歩いて行く。歩いて行く。灼熱の太陽の下、荒野の涯に向かって。
やがて、葬列は揺らめく地平線の向こうに吸い込まれ、見えなくなった。
エドはただひとり、その場に取り残される。もはや声を発することもなく、意識だけの彼はその場にうずくまり、静かな嗚咽を漏らしはじめる。
その姿は、親に捨てられた子どものようだった。
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