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K One Year Later 04

 第四回、『ネコ。試験前。缶詰』

著:宮沢龍生


 あれから一年経って――。

 ネコは覚悟を決めていた。
 今日一日、どこにも遊びに行かず、ずっと勉強を続ける、と。
 葦中学園高校に編入して、一年。なんとか授業自体にはついてはいけるようになったが、やはり勉強には苦手意識があった。
 おまけにここ最近、シロやクロとピクニックで遠出をしたり、友達と鎮目町へ買い物に行ったり(そこで泥を操るストレインに酷い目に遭わされたりしたが)して、随分と遊んでしまった。
 そこで期末試験前、最後の日曜日、ネコは様々な誘惑や遊びの誘いを断って丸一日、家に籠もることにした。
 そのために必要な準備は前日から整えていたし、気合いも体調も十分だった。
 まず彼女は午前六時に早起きをした。
 いつもだったら休日は十時くらいまでベッドの上でゴロゴロしているネコだったが、今日は普段使っている目覚まし時計に加えて、タンマツのアラームもセットし眠い目をこすりこすり自分の部屋から起き出してきた。
 驚いたことにこんな早朝だというのにクロはとっくに諸々の家事を済ませ、ちょうど家を出るところだった。
「なんだ、ネコ。本当に起きてきたんだな」
 クロは軽く驚いたように言ってくる。それから優しい目つきになって、
「その意気やよし、だな。おやつ用として作ったおはぎが冷蔵庫に入っているからあとで食べてくれ。あとあまり根を詰めすぎるなよ」
 テキパキそう告げ、出ていった。臨時顧問として面倒を見ている剣道部の大会が近いのでクロも色々、忙しいのだった。
 ネコは行ってらっしゃい、と手を振り、改めてクロはエライヤツだ、と考えた。
 それからリビングに戻ってきてクロが用意してくれていた朝食を食べ始めた。
 シロが起きるのを待とうかと思ったが、早めになにかお腹に入れておきたかった。
 ネコは空腹だとモノが考えられなくなるタイプだった。
 白米、味噌汁、お漬物、鮭の切り身を平らげた後、シンクに食器を持って行って軽く洗う。それからお湯を沸かし、緑茶を入れ、ちゃぶ台に教科書やノート、それとネコの勉強には必須のアイテムであるタイマーをセットすると、
「さ、やるぞ!」
 腕まくりして取りかかった。

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