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K One Year Later 02

第二回『王不在』

著:宮沢龍生

 あれから一年経って――。

 宗像礼司がセプター4から姿を消してすでに二月近く経っていた。

 一部の幹部を除く隊員たちにとって、それは完全に寝耳に水かつ青天の霹靂な出来事だった。

 ある朝、呼集をかけられた隊員たちの前で宗像は普段と変わらぬ淡々とした口調でこう告げた。

「私はしばらくここを留守にします。以後、淡島くんが室長代理。伏見くんが室長代理補佐となります。諸君らには変わらず職務に務めて頂くことを期待します」

 あまりにも突然な内容にその場はしん、と静まり返った。

 宗像の左右に立っている淡島と伏見はそれぞれ困った顔と不機嫌そうな表情をしていた。やがて常識人たる日高暁が恐る恐る手を上げて尋ねた。

「それは、あの、休暇を取る、ということでしょうか?」

 宗像は良い質問ですね、とばかりに微笑み、

「ええ。ある意味でそうですね」

 隊員たちは顔を見合わせた。

 鋼のように頑丈な室長だが、今まで姪っ子の誕生会やら大学の同期会などの理由である程度、有休を消費したりしてきている。

 今更、こんなに改まって休養を宣言する意味はどこにあるのだろうか?

「それで室長はどれくらい休むんですか?」

 今度は割と落ち着いた態度で布施大輝が尋ねた。宗像は口元をほころばせたまま、

「そうですね。最低で一月以上。半年からもしかすると一年、ですかね」

 衝撃が一同の間を走り抜けた。どよどよとざわめきが起こる。

 宗像は静かに佇んだままだ。

「理由は!」

 強い声を発したのは道明寺アンディだった。前のめりに挙手し、

「理由はなんですか?! いくらなんでも長いですよ!」

 全員、一週間から長くて十日くらいの休養だと考えていた。現在、セプター4は戦力を増強するため元ストレインの人間などを登用して、職務に当たっている。

 石盤が消失したとは言え、彼らの責任が減じたわけでは一切ない。そんな中で組織の長がこれだけ長期間不在になるのはもはや尋常な事態ではあり得なかった。

 宗像は静かに答えた。

「枠を」

「え?」

 と、道明寺。宗像は言う。

「枠を外してこようと思っているのです」

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