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K One Year Later 01

第一回『忙中閑あり』

著:宮沢龍生

 あれから一年経って――。

 夜刀神狗朗の起床はまだ夜が明ける前。長年の習慣で目覚まし時計など特に必要とせず、ごく自然と意識が覚醒する。

 そして布団を抜け出すと、同居人であるシロやネコを起こさぬよう共用スペースの明かりをつけることなく洗顔し、稽古着に着替え、愛用の木刀を片手に家を出た。

 三人が住んでいる学生寮を振り返ると朝靄に暗く沈んでいた。

 これがテスト期間中だと徹夜で必死の追い込みを行っている生徒たちの部屋の明かりがちらほらと灯っていることもある。

 そういう時、クロは心の中で、

(がんばれ)

 静かなエールを送り、朝の修練へと向かうのだ。

 学園島で暮らすようになって知ったのだが、ここは剣の修行にはうってつけの場所だった。

 ちょっとした森もあれば、静かな神社もあれば、海沿いの岩場もある。素振りをするにも、座禅を組むにも、早駆けするにももってこいだった。

 今朝、クロが選んだのは学生寮から少し離れた小さな空き地だった。

 そこで持参した木刀を振るい、静止し、また剣を振るう。そうやって己の中の微細な感覚を何度も、何度も確認し、修正していくのだ。

 最適な足の位置はどこか。

 最良の握りはどうか。

 最善の体捌きを飽くことなく追求し続ける。

 ほんのりと身体が汗ばみ、未明の光が空き地へ差し込んだ頃、クロはそっと瞳を閉じた。

(いる)

 修練中、研ぎ澄まされた感覚が木々の暗がりに紛れこちらへ接近してくる気配を捉えていた。

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